ザ・グレート・展開予測ショー

大気圏突入(2)


投稿者名:NEWTYPE[改]
投稿日時:(00/ 7/14)

「な・・・・なんなの、この悪寒・・・・!」
小竜姫は相手のMSから伝わってくる異様なプレッシャーに、全身を汗だくにしていた。
「くっ!!」
小竜姫は、その邪念を振り払うかのごとく無我夢中でトリガーを引いた。
「・・・・・・・!?」
だが、アシュタロスはそれを避けた。
アシュタロスの機体は、明らかに余裕を持っているように見えた。
横島にはそれが分かった。
「中尉っ!危険だっていってるだろ!」
「ふふ、これで終わりだ。」
アシュタロスは不敵に笑いながらトリガーを引こうとした。
「・・・・・・ん!?」
だが、メッソーラは小竜姫のディアスを掠めていった。
アシュタロスが横島のMK-Uを見たからだ。
「なんだ!?」
アシュタロスは不快感を感じて微かにうめいた。
「うっ・・・・・!」
横島もまた頭を横にふり、照準にメッソーラのテールノズルの光を捕らえて、小竜姫の前に出た。
「横島君!」
メッソーラに接触するMK-Uは、ライフルを連射した。
が、小竜姫の前に出たいという横島の意識が、MK-Uの動きを遅くしたらしい。
その分、メッソーラにかわされてしまう。
急速にターンするが、フライングアーマーの上のMK-Uは、その動きが横島が期待するほど軽くはなかった。
「くそ、鈍いな!・・・この装甲のせいだっ!」
「小竜姫中尉っ!横島君に従えっ!」
西条もアシュタロスの意思のプレッシャーを感じていた。
西条の十式が小竜姫機の後方につけようとするが、小竜姫機は飛び出してメッソーラに近寄ってしまう。
それをアシュタロスは見逃さなかった。
「んっ!」
バン!
一瞬、メッソーラはサーベルを持つMSタイプに変形して、小竜姫機の腕、マニュピレーターを斬ったのである。
「あぐっ!」
「だからっ!」
小竜姫は、悲鳴をあげている間に横島のその声を聞いていた。
その瞬間、横島は止まって見えたメッソーラに仕掛けた。
MK-Uのビームは、メッソーラの腕にあたる部分に弾けてスパークと粒子の光が爆発した。
と、メッソーラは何の迷いもみせずにその機体を弾けさせて、またもMAに変わっていきながら、その空域から脱出した。
「・・・・・・・!?」
横島は、その空域から瞬時に消えていった速さに唖然とした。
「横島君っ!戻れっ!高度がないぞっ!」
西条の声だ。
「りょ、了解・・・・!」
横島は左後方の十式に応じた。
「MK-Uという奴か・・・・」
アシュタロスはノーマルスーツを着ていない自分に気づきながらもうめいていた。
「ああいう敵がいるのか・・・・かつて言われていたニュータイプという話は、ウソではないようだ・・・・・」
アシュタロスは、後方にさがっていく地球の映像を見てから、ようやく白い歯を見せた。
「・・・・・重力の井戸に引き込まれるのはご免だな。木星だけでたくさんだ。あとは後続にまかせる・・・・なにより・・・・・あの敵は、また宇宙に戻ってくる・・・・・それからでも遅くない・・・・・」
アシュタロスは被弾した個所の損傷が軽微であるのを確認しつつエンジンを全開させた。
メッソーラの機体は、宇宙の黒の空間に溶け込んでいった。


メッソーラが戦闘空域から離脱しても事態は好転していなかった。
西条は、小竜姫の損傷したディアスに接触した。
「小竜姫中尉、横島君にかまうな!」
「は、はい!でもっ!」
西条は、十式で片腕からまだスパークを出す小竜姫のディアスを艦隊の方に押しやった。
小竜姫は狼狽した。
「自分はまだ降りられます!西条大尉っ!」
「駄目だっ!機体が損傷している。小竜姫中尉はアーギャマに帰投しろっ!」
西条は怒鳴った。
が,その苛立ちは小竜姫の勝手な言い草にではなく,今姿を消した敵に不快感をおぼえたからである。
「あれはピートでも令子ちゃ・・・・・メフィストでもない!!違うタイプの危険を感じる・・・・・」
それが西条の感触であった。
「うっ!?」
西条の十式に押し戻された形の小竜姫のディアスは、ICPOの艦隊の前方に出た。
その時、ICPO艦隊は、前方からメガ粒子砲のビームの斉射を受けた。
「なにっ!?」
西条もまた前方の地球の青い色と宇宙の黒い光景に目をやった。
そのやや上にあたる一点から,ビームが降りそそいでいた。
「別の敵か?」
西条は、この斉射がひどく不連続的で曖昧なものに感じられて、今接触した敵とは違うと分かった。
「まずいな・・・・・」
西条は、右前方に横島のMK-Uが、フライングアーマーにかじりつくようにして自分の前に出るのを見た。
「横島君の反応は早いな・・・・・良好だ!」
西条は後方を確認する。
艦から発進したMS隊が編隊を組み始めていたのだが、今の攻撃でまだ乱れたままだった。
それを整然とした編隊に組まなければならない時に、敵の第二波の攻撃が来たのである。
アーギャマのブリッジでも悲鳴が上がっていた。
「前方に敵編隊キャッチですねー!!」
「いいかげん目を開いて戦いなさいっ!」
美神の叱責に被さって、操舵手の怒声がブリッジに響いた。
「大気圏突入まであと4分!」
「敵にかまわないでっ!MS隊の編隊を集中させなさいっ!」
ヒャクメが艦内の各部に繋がるマイクに怒鳴った。
「主砲!見えてるんですかー!前に敵ですねー!弾幕張ってくださいよー!」
「MS隊は、艦隊の水平面より下へっ!」
アーギャマの前方の空域には、各艦艇のメガ粒子砲のビームが伸びていった。
西条の十式が、後方のMS隊に振り向いて、下にさがるように十式の手を振らせた。
その上をICPOの艦艇の艦砲射撃の斜線が波のように走っていった。
その斜線の向かう空域には、雪之丞とタイガーのマラッサと7機のザックが迫っていた。
アレクサンドリャーの艦隊から発進したMS隊である。
「前から接触できるとは、神に感謝しなければなっ!」
雪之丞は嬉しそうにコックピットで喚声をあげていた。

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa