ザ・グレート・展開予測ショー

戦塵 −The road of ルシオラ−


投稿者名:Nor
投稿日時:(97/12/ 2)

#小説風にまとめてみました。
#まあ、一種の決着ではないかと・・・ルシオラにとって。長いですが、出来れば終わ
りま読んでいただければ・・・そこが本題だったりするので(^^;)。
「ルシオラ様」
 参謀の声にルシオラは意識を現実に戻された。
「最終準備、ととのいましてござる」
 眼前の風景を改めて見上げる。真魔宮。魔族軍正統派の最大、そして最後の拠点。
 しかし、その周辺は多数の軍に取り囲まれている。ルシオラの配下・・・魔族軍新秩
序派の諸軍だ。
「壮観なものですな! 全軍の6割がこの攻略作戦に参加しております。あとは、ルシ
オラ様の号令一つで・・・」
「ええ・・・」
 風が、吹いてきた。肌を差すような痛み。霊体ゲノムの監視ウイルスの除去、そのた
めの身体再構築の施術を行なったのが神族だったことの副作用だ。ここまでの深層魔界
になると、さすがにその影響も大きい。
 ルシオラはもう一度今までの道のりを思い返した。
 一年。あの日から、すでに一年が経っている。
 アシュタロス打倒に伴う魔界の混乱。魔界に戻ったとき、神界調和・新秩序構築を基
本とするルシオラの下に集った勢力は僅かに穏健派の3割及び旧アシュタロス派の残党。
そして、根気よく続けた神界との交渉の末、魔界の一部割譲と引き換えに手に入れた上
級神兵50(ただし、神兵たちには既にルシオラ自身が洗脳を施し、忠実なの配下とし
ていた)、それらがルシオラの持つ全勢力だった。神界も、ルシオラの行動が成功する
ものとは考えていなかった。多少の混乱の種になれば、その程度にしか受け取っていな
かったのである。
 だが、事態は思わぬ方向へ進んだ。魔界では暫くの間、総力戦という事態を体験して
いなかった。ルシオラの手元の軍は、殆ど全てが実践経験豊富なキャリア。段々と、
その勢力を拡大し、ついに今日に漕ぎ着けた。その背景にはルシオラ自身の、あの戦い
のさなか命をおとしたベスパ・パビリオの力すら取り込みさらに強化された圧倒的な魔
力の存在も勿論あった。
 そうだ。あの戦いこそ、ルシオラの決意、その始まりだった。限定された結界空間。
そのなかで復活したアシュタロス。そしてルシオラ達。それと戦う神人魔連合の精鋭。
凄惨を極めた戦いのなかで、最後の、勝敗の最後の帰趨を決めたのは、あの男だったの
だ。
 ヨコシマ。
 彼は、約束を守った。ルシオラは自由になった。アシュタロスは、倒されたのだ。だ
が、もう一つの約束は守られなかった。
 心の迷いを見せたルシオラを消そうとしたアシュタロス。それを見て、ヨコシマは、
捨身でそれに飛込み・・・。
 そうだ。ヨコシマは、死んだ。アシュタロスと相討ちとなって、死んだ。
 ルシオラの、目の前で。
 人間たちにも、彼の存在は非常に大きかったようだった。彼らには、死者を弔う儀式
を行なう習性がある。それを、ルシオラは密かに覗いた。あの戦いが終わってから大分
立っての経ってのことだ。悲しみがその場を支配していた。

 でも、わたしだって、同じだ・・・。

 その日が、始まりだった。そして、隠された動機の出発点でもある。
 ルシオラはこの戦いを真魔宮攻略、すなわち全魔界統一で止めるつもりは無かった。
ヨコシマが命を落としたあの戦い。あの様な戦いはもうあってはならない。戦いが無
ければ、世界が滅ぶという、神族・魔族の最高指導者達の言葉。それこそが、間違って
いる。彼らが自分たちを戦わせるのは、それが自分たちのエネルギーとなるからだ。ア
シュタロスの仕掛けたあの戦いですら、彼らが仕組んだものだった。アシュタロスのラ
イブラリから、ルシオラはそれらの事実を掴んでいた。彼らに戦いを挑む。勿論その前
には、神界攻略も行わねばならないだろうが。そして、この世界全体を、支配から脱却
させ、単一の独立体・永久機関として成立させる。それこそが最終目標だった。

 しかし、その段階までルシオラは戦いの指揮をとるつもりはない。
 ルシオラの戦いには、もう一つの意味があった。誰にも明せない、それこそが本当の
動機かもしれない、その意味。
 真魔宮には、魔界の多数の宝物が納められる至宝殿が存在する。そのなかに、ルシオ
ラのもう一つの目的とする物がある。
 反魂玉だ。千年に一度生み出される、最高級の宝物。一つの魂を、蘇らせる。それが、
その力。
 ヨコシマを、取り戻す。生き返らせるのだ。魔族として。

 お前がいなくなってから・・・長かったんだよ・・・本当に・・・。

 こんどこそ、こんどこそ一緒だ・・・。

 ルシオラは右手を大きく上げた。この手を振り下げた時、攻撃は始まる。そして、
そして・・・。
 彼に戻ってきてもらう。そして、彼は新たな王として、私たちを導く。
 わがまま。ただのわがままなのはわかっている。ただ、どうしても譲る事の出来ない、
わがままなのだ。

『たいした女だよ。あんたは』
『ポチに、会えるんだね?』
 ベスパ・パビリオが囁くのが聞こえたような気がした。

 ええ。もうすぐ。もうすぐなのよ。ありがとう。

 その時こそ、ルシオラがただの少女に、愛しい人を夢見る一人の少女に帰る瞬間なの
である。

 かの少女に、幸の多からんことを。




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