ザ・グレート・展開予測ショー

【夏企画SS】メイド イン アキバ!


投稿者名:とおり
投稿日時:(06/ 8/29)

アキハバラ。
最近開発が急速に進んだこの街の駅周辺には大型家電店や複合オフィスビル、高層マンションが建ち並ぶ。
一昔前の、一見さんお断りのどちらかと言えば店も客も職人気質であった頃の闇市めいた独特のパワーは街から消え去り、今は新興の観光地として関東一円、果ては地球の裏側から、様々な人たちが訪れる。
休日には大通りは歩行者天国として解放され、路上パフォーマンスをする一団と警察とのいたちごっこが半ば風物詩と化していた。
そして、この街にはどちらかと言えば似合わない美神事務所一行も、今日この街に来ていた。
もちろん、それは仕事がらみであったのだが。

「ふん、負けてたまるもんですかっ」

美神が裏で右腕に力を込めて生クリームを絞り出す。
ショートケーキの上になみなみと盛られた生クリームが、皿からあふれ出す。
コンビニで売られている様な生クリーム満載のプリンでもあるまいし、普段ならここでおキヌや横島がフォローを入れるのだろうが、彼らにもそんな暇は無かった。
客の応対でてんてこ舞いだったからである。
隣の喫茶店「イケブクロ」と行われている「メイド3本勝負」にて、美神たちがメイドをつとめる喫茶店「ニホンバシ」も「イケブクロ」に負けず大入り満員だった。

「いらっしゃい、じゃなかった。おかえりなさいませー」

「ったく、なんであたしがこんな仕事しなきゃいけないのよ・・・」

「拙者のしっぽはつけ物ではござらんっ! 」

「お待たせしましたっ! えーと、3番のお客さん。どちらですかー」

美神の耳に、事務所のメンバーの声がひっきりなしに飛び込んでくる。
もはや除霊だなんだは関係なくなっている美神は立派なお仕着せの衣装を整え直し、ホールへと勇ましく足を進めた。










57度。
多種多様な共通性のない商品を雑多な商品陳列でもって客を楽しませ、その事で名を馳せている複合店は観光の目玉のひとつだ。
そこ外壁に取り付けられた温度計は、異常な温度を示している。
さすがにこれは故障かもしれないが、歩行者天国になっている大通りにはじりじり照りつける太陽の熱が道路を焼きビル風は熱風となり、とてもゆっくりと歩いてはいられない。
行き交う大勢の人たちは、足早に目的の店を見つけては冷房の中に飛び込んでいく。
また別の人たちは、コーヒーショップや喫茶店、もしくはハンバーガーショップなどで、買い物で熱くなった足を休めようと扉を開く。
客引きもさかんで、割引チケットを配布したり店頭でイベントを行ったりと、活気に溢れていた。
休日の秋葉原は、まさにかき入れ時である。
その中で目を引くのは、オールワークスかキッチンメイドか、はたまた侍女か子守か。
とにかく、街頭に立つには不自然なメイド服を着た女性たちが客引きをしている、いわゆる「メイド喫茶」もこの街の名物となりつつあった。
元々マニアックなこの街で、ある企業が冗談半分で始めたところ大当たり。
当初は1店舗であった店も、次々開店し今や数十店舗にもなる。
当然競争は激化し、淘汰される店も出始めた。
美神たちが仕事をしている喫茶店も、元はその中の一つであった。










事の始まりはこうである。
美神は以前、地方の洋館でメイド服着用を強制する主の霊を除霊したことがあったのだが、それがどうやってか今回の依頼主に伝わり、是非にとの申し出があったのだ。

開発の進む秋葉原の一等地に立つビルの一階に破産した古風な喫茶店のオーナーの霊が居座っている、除霊をお願いできないか、と。

どういう訳か強力で除霊するにもやっかいなのに、特定の格好をしないと近づけもしない。
特定の格好とは、そう、メイド服である。
古風な喫茶店を営んでいたオーナーは、じり貧の経営を改善しようと思い切った決断をしてメイド喫茶を開店したものの「イケブクロ」にメイドさんを引き抜かれ、つまずいてしまった。
有力資本がバックについているらしい「イケブクロ」は時給も待遇もよく「ニホンバシ」にはそのまま女の子が集まらなかった。
ほどなくして「ニホンバシ」は閉店、開店の負債で破産して自殺。
「イケブクロ」の経営企業は跡地でもう一店舗開業しようとしたが、さすがに頭にきた元オーナーは幽霊となってまで、自身を追い込んだメイド喫茶でやり返してやりたいらしかった。
美神としては前回の件は記憶の彼方に葬り去りたい一件であり、またあのこっぱずかしい格好をするかと思うと、契約内容を見る前に頭が痛くなり、一旦は断った。
だが、どうにも他のゴーストスイーパーではうまくいかないらしく、泣き付かれた美神は当初の3倍の金額にて引き受けたのである。
厄珍から購入したメイド服はまだ廃棄してはいなかったため、前回除霊に参加したおキヌと横島の分もあった(横島は男性のスーツだったが)。
今回はシロとタマモの服を頼むだけで良かった。
一日仕事をし、「イケブクロ」と比較してもそれなりに高い金額を売り上げればオーナーの霊も満足するだろうと思われ、それくらいであれば・・・と臨んだのだが、始まってすぐに、美神のカンにさわる出来事が起きてしまった。










「あなたたちが除霊屋さん・・・。ふうん、あたしたちと売り上げ対決ですって?」

まだ昼には早い時間、太陽が少しずつ自身を主張し始めたくらいに、美神たちは店の前にいた。
イケブクロのチーフであろう、後ろにメイド4人を従えた長身の女性が立っている。
肉感的なラインがメイド服の上からでも分かる、少し厚い唇が魅力的だ。
チーフは美神たちに品定めの視線を送り、美神からおキヌ、シロタマモと、そして横島を見る。
すると。

「ずっと前から愛してましたっ!! 」

「わっ、わっ。ちょっとなあにっ?! 」

「「「「だあああああっっっつ」」」」

律儀にずっこける事務所の面子。
飛びついた横島に、いち早く美神は鉄拳制裁を食らわせ黙らせる。
あんたはそこでおとなしくしとれ、ビルとビルの隙間に血まみれのまま段ボールと一緒に押し込まれる。

「大丈夫なの、その子」

さすがに若干腰が引けているチーフだったが、美神は構わず続ける。

「それはどうでもいいけど。なあに、あんた。あたしたちになにか不満でも? 」

「いえ、別に。邪魔な悪霊を退治する為ですけど、あなたたちがアタシたちの相手になって? 」

「あら、どういう意味かしら? 」

にっこりとほほえみ返す美神。
さすがに事務所の面子には美神がいらだち始めたのが分かり、少しずつ後ずさりを始める。
が、この時点で既に火はついてしまっていた。

「まあ、あなただけならともかく。ずんどーな女子高生に、おこちゃまが二人。それでいて、アタシたちみたいなレーシングクイーンすらもつとまるチーム相手に、売り上げで勝てるのかしら? 」

いつのまにやら腰に手を当て斜め45度、ざっとポージングしているイケブクロチームがいた。

「ああ、美神さんに正面切って勝ち負けなんて言ったらっ」

おキヌの不安も余所に、二人の距離は顔と顔がごっつんこするくらいに縮まっていた。
ばちばちと、激しく視線を戦わせる二人。
そして出た言葉は、ある意味当然の言葉だった。

「あたしに勝負を挑む気? いい度胸してんじゃないっ」

「泣いて謝るのはどっちかしらねっ」

売り言葉に買い言葉がどんどんと加速していく。
遠巻きに見つめるおキヌたちにも見えるように、イケブクロのチーフは指を3本突き出した。

「いいわ、ここはアキハバラの作法に則って、メイド3本勝負をやろうじゃない」

「3本勝負? 」

「ただ売り上げで勝負しても面白くないからね。衣装、接客、そしてお料理。この3つで、お客様に採点してもらうのよっ」

「はん、後でほえ面かかない事ねっ」

こうして抗議の声を上げる暇もなく、勝負の段取りまで決まってしまう。
たまらないとばかりに、おキヌが口を開こうとしたとき。

「あの、美神さんっ。ちょっと」

いつものごとく、何事も無かったかのように復活した横島が、美神の服の裾をひっぱり、引き寄せる。

「なによ」

「美神さん、そうは言ってもあのチームに勝つ方法ってあるんですか? 」

チーフの他に、ほどよく落ち着いた品の良い細身の長髪の人、目元がすっきりとして顔立ちの整ったやや遊び人風の人、中性中肉だが愛嬌が全身から溢れている人、そして活発さを象徴するようなベリーショートが愛らしい人、それぞれ魅力的であった。

「はん、任せておきなさい。前回の除霊から進歩の無いあたしだと思うの? 」

「そうですか、ならいいんですけど」

やけに自信たっぷりな美神の言葉に、横島は納得するしか無かった。










「な、なによこれっ! 」

午後3時を過ぎ暑さも峠を過ぎて来た頃、客の入りも落ち着いたイケブクロのチーフがニホンバシを偵察に来た。
炎天下にもかかわらず長蛇の列をなすニホンバシを、驚きとともにのぞき込む。

「ふん、あんたの為に着てるんじゃないのよっ! 」

きれいだと褒めた客の尻に、がすんと美神の蹴りが入る。
シルクレースの網タイツをはいた肉感的な足がのぞく。
ミニスカートの中身が見えてしまうほどではないが、それだけでも客たちの目を奪うには十分であった。
黒一色のドレスとエプロン、キャップだけならともかくも、強調された胸元と詰められたスカートなどは美神の魅力を十二分に引き出していた。
それだけではない。
おキヌは、普段からの制服の様なものだった巫女服を着込み、白小袖と朱袴が黒髪と相まって清楚かつ可憐な雰囲気を引き立たせていた。
シロは動きやすい方がよろしかろうと、厄珍がどこから調達してきたのかわからないが、ファミレスの走りである●○ナミラーズで着るピンクのエプロンシャツを着込んでいた。
銀の長髪がピンクに栄え、ミニスカートから飛び出た尻尾が愛らしさを振りまく。
ナインテールのタマモもこれまた、メイド服は着ていなかった。
彼女は大人に化け、その上でチャイナ服の様なものを着ていた。
スリットが大胆に入った黒の服で、ボディラインがはっきりと出るタイプの物で、上には赤いベストをはおっていた。
スリットの部分はアクセサリをつないで留め金の様にし、それがアクセントとなっていた。
また、美神の指示でそれぞれの性格に基づいて応対の仕方が異なり、それがエンターテイメント性を重視するこの種の店として、魅力を増していた。
涼を取りに来ている客にも、様々な人たちがいる。
単身買い物に来た若い男性のグループ、観光気分でぷらりと来たカップル、何十年も前からの通いだろう中年の男性、大型店の帰りだろう親子連れ、仲良く手をつなぐ女友達、はたまた六本木にでもいた方がよほど似合う色黒の青年など。
道行く人が噂する店を一目見てみようと、わんやわんやと客が押しかける事になってしまったのだ。

「なっ?! 汚いじゃない、メイド服着てないなんてっ」

「あら、どうされたのかしら。メイド服は私が着ておりますわよっ」

おほほ、と高らかに笑い声を美神が上げる。
そう、3本勝負とはいえ、細かいルールを取り決めた訳では無かった。
解釈の余地を残した時点で、美神がこういった反則技に出るのは必然と言えた。

「ぐぬぬぬぬ・・・」

ジタンダを踏んで悔しがるチーフに、事務所スタッフの対応が追い打ちをかける。

「きゃ、申し訳ございません、お客様」

テーブルにグラスを運ぶ際に、うっかりして傾けこぼした(振りをして)コーヒーが客にかかる。
それを拭おうと膝を折り、上目遣いに客の目を見て、ゆっくりとタオルを当てるおキヌ。

「ここ、禁煙だから」

コーヒーを持ってきた手をツバメ返しに、さっと口から二本指でたばこをつまみ、ポケット灰皿に入れる。
長いまつげと切れ長の瞳でもって冷静に見据え、不敵に笑う。
スリットから(ワザと)なまめかしい太ももをのぞかせ、客を釘付けにし自然と黙らせてしまうタマモ。

「走っては危ないでござ・・・うわ、こらっ。尻尾はおもちゃじゃないでござるっ」

忙しく応対し、店の中を飛び回り、ぱたぱたと何度もはためく尻尾。
(わざと大げさに)振り振りと揺れるスカート、かわいらしい制服に我慢できなくなった子供が後ろを追いかけて走り回り、飛びつくのをいさめるシロ。
もちろん、大人の客もその光景にほほえんでいる。

「ほら、早くすわんなさいよ」

特に何をした訳でなく、そつなく仕事をこなす美神。
だが、必要以上に(計算した)ツンツンとした口調が受け、かつ強調された胸元や腰など女性の魔力でカップルに諍いを起させる美神。

「誰も手伝いにこんのかー」

調理場で働く横島は・・・忙しかった。

「ああっ、こんなにもたくさんのお客がっ。目が回る程忙しいなんて、どのくらいぶりだろうっ!! 」

そしてこのメンツの中でただ一人、爛々と目を輝かせて働く、現幽霊の元オーナー。
果てる事のない客の列は、彼に張りと生き甲斐を与えているようでもあった。










美神の指示はこうだった。

「いいこと、あんたたち。こういう類の店は、インパクト第一。ちょっとのぞいて客が興味を持てば、それだけで入るものよ。だから」

「「「「だから? 」」」」

「厄珍に言って持ってこさせるから、おキヌちゃん、タマモ、シロには別の服着て貰うわ。地味なメイド服じゃあ、目立たないものねっ」

「反則になりませんか? 」

「バカねーあんた、衣装とは言ってたけど、メイド服を全員が着なきゃならないなんて、誰も言ってないでしょ? まあ、そこのオーナー幽霊が絡むから、あたしは着るけど。メイドの事はたぶん私が一番詳しいしね」

何でですか、と聞こうと思ったが横島の感はそのことに危険を告げていた。
おキヌは含み笑いをしているようにも見えた。

「それでね、応対にも差をつけるわ。今流行の言葉遣いがあってね、それも後で教えるわ。料理に関しては、仕込みをしておけば横島君でも出来るわ。紅茶の入れ方とか、それほど複雑でもないしね」

「さすが美神殿でござるなあ・・・」

「勝負事に関しては、人100倍燃えるからなあ・・・」

「なにをこそこそしてんのよ、ほら耳を貸しなさい」

もはやオーナー幽霊など蚊帳の外に、どんどんと話は進んでいった。
当然、勝負の結果は見えていたと言って良い。










「いってらっしゃいませ、ご主人様ー」

最後の客を、送り出す。
その瞬間、全員がへろへろと床に座り込む。

「お、お疲れ様・・・」

午後7時。
他の街よりも早い夜を迎える秋葉原は、店じまいをする店舗が目立つ。
美神たちの喫茶店もまた、とりあえずシャッターを下ろし、店じまいと相成った。
腕はがくがく、腰は痛い、足は張って棒のよう。

「繁盛する店って、恐ろしいんですね・・・」

家事には一番精通しているはずのおキヌですら、体力を使い果たしてぐったりとテーブルにふさぎ込み、シロやタマモは人間形態を維持するのもおっくうなのか、狐や狼の姿に戻り床でぐでんと腹ばいになっている。

「おまえら、女の子がそんな格好してんじゃねえ・・・」

革靴もタイも投げ出して、つなげた椅子の上で横になった横島がつぶやく。
いつもの元気はどこへやら、腕を投げ出している。

「あんた、これで満足した・・・? あれ、あいつはどこ行ったの」

「あー、オーナーですか? そう言えば、しばらく声を聞いてないような・・・」

美神と横島がオーナーはどこかときょろきょろしていると、タマモがぽそっと言った。

「あいつなら、とっくに成仏したわよ」

「あーそー、とっくにねー。」

「だから急がしかったんかー。そうかー」

安心した、とばかりに大きく息を吐く二人。

「ちょっと待ちなさいよ、それ何でもっと早く言わなかったのよっ? 」

小さい狐タマモの体をがっしりとつかむ美神。
それでもツンとすましたタマモに、美神はゆっくりと言葉を発する。

「お客がいっぱいだったし・・・。その、美神さんもなにか鼻歌歌って楽しそうだったし・・・言いそびれちゃって。ごめん」

「・・・ん、もー。気づいたんなら、早く言いなさいよねっ」

楽しそうだった、という部分を美神はさらっと流してしまおうとするが、横島たちは聞き逃さなかった。
おキヌが思い出した様に言う。

「そう言えば、一昨日部屋でキャップの位置変えたりエプロンの長さ調節したりしてたから、楽しみにしてたんじゃあ・・・」

「美神さん・・・」

おキヌは、美神が自分より華美な衣装をこっそり用意していた事も思い出す。
なんのかんの言いつつ、美神も女性である。

「つまりなにか、おキヌちゃん。俺たちは、美神さんの趣味に一日つきあわされた、と」

「そういう事でござるな・・・」

ひそひそと後ろでささやき会う皆に、美神の背中には冷や汗が落ちる。
つい力を込めて握ったタマモは、既にぐったりとしている。

「写真取られるのも、実はまんざらじゃなかったんじゃあ・・・」

「そう言えば、わざとかっぷるの席にばかり給仕していたように思えるでござるよ」

ぱたん。
タマモが床に落ちる。
手をゆっくりと下ろした美神は、ぎこちなく後ろを振り返って言う。

「あ、アンタたち? なにへたり込んでるのよ。イケブクロの奴らの泣きっ面を拝みに行かなきゃならないんだから、ほら、横島君呼んで来なさいよっ。シロ、タマモ、おキヌちゃん、おなか空いてない? 上野に美味しいウナギ屋さんがあるのよねー。ほらほら、のども渇いたでしょ、はい、お冷や」

「ごまかしているでござるな・・・」

「そうよねえ・・・」

じと、と2人が美神を見つめる。
あはは、と後ろを振り向いたとき、隣に出向いた横島が帰ってきた。

「っく、負けたわっ。煮るなり焼くなり、なんとでもすればいいわ・・・」

集計するまでも無く、見えている結果に、店に入るなり、うなだれた様子で膝をつくイケブクロのチーフ。
美神はそんな彼女の肩に、やさしく手を置いた。

「ふ・・・。そんなお仕置きなんてしないわ。あなたも分かっているでしょう、これは不幸な人を除霊する為の手段に過ぎなかったって」

「そんな・・・。アタシの事を許してくれるって言うの? 」

「思いやりと気配り。それがメイドでしょう? 」

暖かい美神の笑顔に、チーフは胸に飛び込んで泣きむせぶ。
事務所の面子は呆れて力なくただ見ているばかりであったが、横島がふと鞄の中に入れた除霊契約書を開いた。

「あ、これか」

書面に記載してあった条件。
そこには『一日で除霊が完了した場合、更に倍額のお金を支払う』と明記してあった。
だが、横島は何も言わず、ただ二人の抱擁を見つめていた。
なにか言おう物なら、それこそはけ口代わりにぼこぼこにされるに違いなかったからだ。

「美神さんは美神さん、という事かなあ・・・」

そしてそれからしばらく、夏が終わるまで美神は色々と皆に優しかったという。










時間は少しだけ、過ぎて。

「最初はグー。じゃんけんぽんっ」

「ワタシの勝ちあるっ」

「勝負はまだまだ、3回で決着じゃあっ」

「かかってくるよろしっ」

厄珍堂の地下、秘密の小部屋で美神たちが一日着たメイド服その他を巡って、熱い漢たちの戦いが繰り広げられていたと言う。









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