ザ・グレート・展開予測ショー

【夏企画SS】みんみんぜみの鳴く頃に


投稿者名:逢川 桐至
投稿日時:(06/ 8/25)



 もう盆も明けて久しいと言うのに、ぎらぎらと輝く陽光がコレでもかと降り注ぐ。
 人払いのされた公園の中は、緑も多く風も吹き抜けている。 なのに、それでも暑さには変わらず包み込まれていた。
 セミの鳴く声が五月蠅い。 遠くから響く程度なら清涼感もあろうが、近くでの大合唱は暑さをいや増すだけだ。

 そんな陽炎が緩やかに立ち上る中、片や熱心に片や気怠げに、地に這いつくばる少女が二人。
 そして、その傍には彼女たちを見守る男が二人。

「なぁ?」

「なんだね?」

 いやいやそうなバンダナの青年の問い掛けに、これまた嫌そうに長髪の青年が聞き返す。

「こんな暑い時じゃなきゃまずかったんか?」

「イヤなら、君は帰ってくれても構わないんだよ」

 男たちは互いに一瞬視線を合わせた後、即座にふいっとそっぽを向いて舌打ちをした。





 みんみんぜみの鳴く頃に





 タマモたちがこんなところで暑さに耐えて這いつくばっているのは、当然ながら仕事で……いつもの様にオカGからの依頼を受けて、の事だった。
 美神が居ないのはサボっているから。 …ではなく、横島たちに任せられない書類作業をおキヌと共に処理している為である。

 ついでに言うと、横島がこの場に居るのは、彼だけやる事が無かったと言う事が大きい。

 何せ、タマモもシロも、もう何度目かになり、こう言った臭跡調査くらいなら監督者など必要としないくらいには慣れていた。
 かと言って事務所でのほほ〜んとされて居ても、美神のストレスが増すだけで役に立たない。 その為、少々理不尽な所長命令を受けて、横島はここに居たりするのだ。
 この暑さの中、自身やれる事が無いと判っているだけに、彼は少し苛立っていた。

 苛立つと言う点では、西条も少なからずそうである。

 本来なら、ある程度慣れてきたこの作業に、彼ほどの地位がある者が直に関る必要は無いのだ。
 彼の私的コネクションでの民間GSへの依頼では有るが、部下を交えての作業も繰り返しタマモたちと彼らとの意思疎通は既に計られているのだから。

 なのに西条がこの場に居なければならなくなったのは、偏に横島故だった。

 何を仕出かすか判らない所が有り、なのにその持つ霊能の為に制する事が出来そうなオカG職員は、僅かに西条と美智恵のたった二人。 職員の数が少ないと言うのもあるが、それ以前に横島の異能が異常過ぎるのだ。
 ともあれ そんな訳で、作業に必要のない人員の為に、仕事を抱え込んで忙しいのに出張って来ているのだから、西条が苛立つのは無理の無い事だった。

「なんつーか…」

 ちらりと近い所に居るタマモにやった目を、さっと逸らして横島が呟く。

「なんだね?」

「ガキとは言え、這いつくばってる女の子を眺めてる野郎共って図式はどーよ?」

 刺々しい言葉に、思わず本音を洩らす。
 何せタマモの今を例にとると、高く上げる事になったお尻を彼らに向けていたりしていて、もう少し育っていればと内心で横島に血涙を流させているような状況だ。

 途端に、西条も空へと顔を向けて苦々しく顔を顰めた。

「ナニを言い出すかと思えば…」

 気の抜けた呟きは、しかし指摘されればそうだと頷ける所が有るからだ。
 仕事はスマートにこなすものと任じている事もあり、今の絵面は周囲に一般人が居ないとは言え、あまり良いものだとは彼とて思っていなかった。
 それもこれも横島の所為と、西条はギンっと彼を睨みつけた。

「しかし…」

「まだ何か言いたい事があるのかい?」

「いや、な…」

 ちょっと言い淀んで、横島は言葉を続けた。

「前から思ってたんだが…
 あいつらの格好、おまえの趣味か?」

 思わずズルっと倒けそうになる身体を、西条は如何にか踏み留めた。

 Yシャツにベスト、ミニスカートと言うオカGの女性用の夏服の取り合わせは、季節を思えば判らなくもない。 が、四つん這いになる事を考えると、確かにその夏冬共通のスカート丈の短さは犯罪的ですらあるのだ。

 実際、こちらと反対の方を向き続けているタマモなぞ、ストッキングに包まれたスカートの奥が、ちらりちらりと見え隠れしていたりする。 顔を地面に寄せながらなだけに、どうしても下半身を上げるカタチになる訳で、仕方ないと言えば仕方ないのだが。
 しかもその格好でじりじりと前進したりする為、ゆらゆらとその小さなお尻を振っていたりするのだから、見た目の問題はけして小さくない。

 今のところ、例の呪文を繰り返しながら視線を逸らす事に辛くも成功していたが、逆に横島をそこまで追い込む程のインパクトがあるとも言えるのだ。

「くぅ…
 アレが、アレがガキでさえなければ…」

 思わずそう呟いてしまうくらいの。
 もう少しでも彼女の見掛けが年上だったら、自制出来ずに間違いなく飛び付いていただろう。 中学生程度にしか見えない現状ですら、充分に扇情的なのだから。

「こんな状況を判って演出するなんて、なんてぇスケベなんだ、このスケコマシっ!」

「き、君ねぇ、僕を一体なんだと」

 さすがに、許容し難い発言に西条の顔色も変わる。
 だが、横島は追い打ちをかけようと更に言葉を紡いだ。

「趣味だけで仕事をしてる変態性道楽公務員」

「くっ… 言ってくれるね、この犯罪的変態アルバイター」

 一瞬の沈黙。

「ふっ。 言うじゃねぇか、今ここで決着付けてやったっていいんだぜ」

「ははは… それはこっちのセリフだよ、横島クン」

 互いに目が全然笑っていない笑顔で、互いのの隙を窺いながら笑い合う。

 そんな様子すらも、傍目には色々とアレなモノにしか見えまい。
 彼らは、人払いをしている現状を感謝すべきだった。 変質者と言われても、一概には否定し難い状態なのだから。

 ・

 ・

 ・

 互いに辿っていた臭跡に引き寄せられて、ゴツンと頭をぶつけあう。

 が、もう慣れたもので、どちらからも文句は出ない。

「先生たちは何をやっているのでござろうなぁ?」

 衝突する事で途切れた集中に、ふと横目で見やれば、横島と西条はど突き合いに突入していた。

「さぁ?
 そんな事より、暑くて堪んないから、さっさと終わりにするわよ」

「む… まぁ、そうでござるな」

 それぞれが追っていた跡が合流した事で、先が遠くないと知れた。
 二人は頷き合うと、再び追跡へと意識を戻す。

 そんな珍しくまともに仕事に取り組む二人を他所に、横島と西条は華麗なクロスカウンターでの見事なダブルKOを演じていた。

 ミーン、ミンミン…と鳴き声が降り注ぐ。
 厳しい残暑の中、それもまた彼らのありふれた日常の1シーンだった。





 【おわれ】



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……ぽすとすくりぷつ……

 制服、と聞いて、まず思い付いたのが、『白き狼と白き狐!!』でのオカGのソレでした。
 しかしその後、どう言うシーンを描いて欲しいかを考えてたら、思い浮かんだのが這いつくばる姿… orz ダメじゃん、私(泣)
 残暑のとろけそうな暑さの中、ソレが頭から離れなかった為、そんなこんなでこげな内容の無いよーな代物に(爆) ついでに言うと、タイトルには何の意味も無い。

 真面目にお話を書いてる人たちの中にコレってどーよ、と思ったりもしたのだけど、まぁいいやね いいやね(^^;


 19は、そう遠くない内に(__)

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