GSとして(終)
投稿者名:桜華
投稿日時:(00/ 7/12)
決勝戦は一方的であった。
蛍は、攻撃も、反撃も、防御すらも満足に出来ないでいた。
霊波が練れない。隙だらけに構成された霊気など、決勝戦まで勝ちあがった強敵に通用するはずもなかった。
このままでは、勝ち目はない。
だが、そんなことは、蛍にはどうでもよかった。
『結局、パパは来てくれなかった。
パパは、約束を守ってはくれなかった。
酷い。酷いよ、パパ』
心にあるのは、悲しみと絶望。その二つだけ。
試合のことなど、どうでもよかった。
「ついにコーナーに追い詰められました、蛍選手。このまま終わってしまうのでしょうか!?」
マイクを通して、実況者の声が響く。
『パパのバカ』
目の前にせまり来る相手をその視界に収めつつも、考えるのは、父のことだった。
相手の持つ神通根が、蛍の頭上から振り下ろされる。
その時だった。
「蛍ーーーーーーーー!!」
「!!」
声が、響いた。
はじかれたように、紙一重で、蛍は神通根をかわした。
相手から距離を取り、声のした方向に目をやる。
求めていた姿が、そこにはあった。
「パパ……」
紛れもなく、それは父だった。見間違うはずがない。
肩で息をしている。走ってきたのだろうか。
顔色が悪い。疲れているのだろうか。
何があったのかはわからない。だが、どれだけ急いで来てくれたのかはわかる。
『来てくれた! パパは来てくれたんだ!』
蛍の霊波が練り上げられ、構築されていく。先程までの隙だらけで脆い霊波とはちがう、強大で力強い霊波だった。
『パパがいてくれる。パパが見てくれてる』
不安なものは何もない。父が来てくれたのだから。
恐怖も消えた。父がそこで見てくれているのだから。
そして。
父が側にいてくれるのなら、彼女はそれだけで強くなれる。
勝負は、この時点で決したと言ってよかった。
夕陽に照らされた道を、一組の男女が歩いていた。
まだあどけなさの残る少女と、壮年の男だ。親子のようだが、カップルなのではないかと思うほどに、二人は仲睦まじかった。
「ねえ、パパ」
少女が、男に話しかける。
「どうして、決勝戦まで来てくれなかったの?」
「どうしても外せない仕事があってな。それが思ったより手間取っちまって。すまなかった」
苦笑いして答える男の腕に、少女は抱きついた。
「ぜ〜んぜんすまなくなんかないよ。だって、来てくれたんだもの。優勝できたのは、パパのおかげだもん」
「それは、おまえの実力だ」
「ううん。パパが来てくれなかったら、きっと負けてたよ」
「そんなことはない」
「そんなことある」
ふと、言い合いを止め、少女は、夕陽に目をやった。
「わあ、綺麗な夕陽」
目の前に広がる紅い太陽を見て、少女は言った。
「私ね、パパ、夕陽大好きなの。昼と夜の、一瞬の隙間。短い間しか見れないから、よけい綺麗に見える」
「ああ……そうだな」
「でもね、でもね」
顔を男の腕から離し、少女は男を見上げた。
「パパの方が、もっと大好き」
一瞬、呆けたような顔をしたあと、男は、少女に笑いかけた。
「俺も、おまえが大好きだよ。蛍」
そう言って、男は少女の額にキスをした。
「さあ、帰ろう。ママの料理が冷めちまう」
「うん!」
一つの道を、一組の親子が、手を組み合って歩んでいた。決して離れない、決して離さないとするように。
夕陽は、そんな二人を照らし出す。
再び出会った二人を、祝福するかのように。
やさしく。
あたたかく。
二人の行く道とともに、紅く、紅く染め上げていた。
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長いいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!
これだけで前編と中編を合わせた長さではないでしょうか。とにかく長い。長すぎる。あまりに長すぎて送信エラー。結局前後編でも前中後編でもなく、四つに分割してしまいました。中篇を書き上げた時点では、こんなに長くなるなんて夢にも思っていませんでした。結構削ったんですけどね。
まあ、何はともあれ、なんとか終える事が出来ました。
最後を書き上げて、ふと思いました。これは、蛍の物語なのか。はたまた、横島の物語なのか。
後編を見るかぎりでは、もろ横島主体って感じですよね。どちらを主役にしたくて書いたのかは、結果を見れば、横島でしょう。文珠の五芒星や翼も、かねてより書きたかったことですし。複数同時に使って範囲を広げるのなら、威力を増す事も出来るのではないかと、ずっと思ってましたから。
皆さんはどうでしょうか。
しかし、疲れました。前編から数えれば、かれこれ十時間。中編からはぶっ通しで六時間パソコンの前にいるんですから。(今日、休みなんですよ。試験後の)
これ以上長くするのもどうかと思うので、ここら辺で失礼致します。
桜華でした。
今までの
コメント:
- お疲れさまでした。
後編の冒頭で、一瞬「ベルセルク」っぽくなってビックリしましたが。
次回作も期待してます。(←ぷれっしゃ?(笑)) (kassy)
- このシリーズ、「創作文集」でまとめて読みたいです。 (マルペ)
- うんうん、やっぱり夕焼けを見るシーンを入れてきましたね。
私も、漫画でもジーンときてました。
そうです・・・・夕焼けを見てればテストなんて
なんとちっぽけに見えてくることか・・・(←それはない(笑))
今度はルシオラ以外の話を読んでみたいです。
お疲れ様でした。 (NEWTYPE[改])
- 「文章の長さ」に関しては気になさらくても良かったのではないかと思います。
削られていない「完全版」の方も読んでみたいです(しつこい)。 (Iholi)
- 長さなんて気にせずにどんどん書いてほしいですー。
ここに、もう長いなんてもんじゃねーレベルに突入中の小娘がおりますし・・・(苦笑) (馬酔木)
- ご馳走様でした。
本当にぐっとくる話で、徹底的に痛かっただけに、最後のハッピーエンドが、とても価値のある大切な宝物のようです。
最後の蛍の言葉は、もう、なんというか、親ばか万歳路線には堪らない所ですね(笑
本当に素敵なお話でした。
これからもご活躍期待しています。
つーか、帰ってきた桜華さんにばんざーい(笑<2001/01/23現在 (四季)
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