ザ・グレート・展開予測ショー

忘れ去られた文珠使い (2) 16年後の師走のある一日


投稿者名:hiy-Leo
投稿日時:(06/ 8/14)

 十二月、年の暮れが近づく頃横島は、旧友からの呼び出しで上京したつい
でに伊達雪之丞の元を訪れていた。

 「いきなり訪ねて来て悪かったな雪之丞」
 「気にするなって横島、本当に久し振りだな何時振りぐらいだ?」
 「そうだな、確か七月頃おまえが和秋を連れて昔みたいに俺の所にメシを
たかりに来た時以来じゃないか?」
 「そうだっけか?」
 「前から思ってたんだが、如何して俺の処にメシをたかりに来るんだ?、
来るなとわ言わんが、おまえの方が金稼いでると思うんだが」
 「うっ、それわだな・・・」

 雪之丞は、部屋の周辺に誰も居ないのを確認すると横島の問いに答え出し
た。

 「かぁ、かおりのヤツが全然小遣いくれねえんだよ、アイツ結婚してから
急にガメツクなりやがって、昔はあんなに可愛かったのによぉ」
 「ア・ナ・タ!、誰がガメツクて可愛げの無い女ですって」
 「へっ?・・・」

 雪之丞は、背後から聞こえたその声に、汗をダラダラと流しながら恐る恐
る振り返った。
 そこには、雪之丞の妻かおりが鬼の如き形相で部屋の入り口に立っていた

 かおりに着いて来たであろう子供達が、かおりの表情を見て部屋の入り口
でガタガタと震えていた。
 横島は、またかと溜息を吐きながら立ち上がり部屋の入り口でガタガタと
震えている子供達を連れて部屋を出ようとした。
 雪之丞は、認めないが伊達家最強はかおりだと、横島は確信していた。

 「かおり俺は、愛してるぞ」
 「他に言う事は、御座いませんの?」
 「よぉ、横島助けてくれ」
 「あのよう雪之丞」
 「何だよ早く助けてくれよ?」
 「夫婦中が良いのは良い事なんだが、子供達の前では余り過激なスキンシ
ップはしない方がいいと思うぞ雪之丞」

 横島は、雪之丞から視線を外すとかおりの方を見た。

 「俺が子供達の面倒は見とくから、好きなだけ二人で愛の語らいをしてく
れかおりさん」
 「ありがとう御座います横島さん、子供達の事お願いしますね」

 そう言ってかおりは、晴れやかな笑顔で横島に頭を下げた後再び鬼の如き
形相で雪之丞と向かい合った。

 「雪之丞、じっくりと話合ましょう」
 「じゃあ頑張れよ雪之丞」

 横島は、そう言い残すと自分のコートを持って部屋の戸を閉めた。
 それが合図であったかの様に部屋の中からは、雪之丞のかおりに対する許
しを請う声と横島えの”裏切り者”等と叫ぶ声が聞こえて来た。

 「これから如何する?」

 横島は、雪之丞の二人子供に問いかけた。
 二人は、顔を見合わせて話しあい始めた。

 伊達雪之丞と弓かおりは、結婚してから十数年経つがその結婚までの道の
りは、けして平坦なものでわなかった。
 様々な障害が有ったが、その最たるものは雪之丞が弓家に婿入りするかど
うかとゆう問題だった。
 雪之丞自信は、伊達だろうと弓だろうとどちらでも良いと考えていた。
 しかし、かおりはホレタ男の姓を名乗りたいと強く主張したため、かおり
は結婚の条件に雪之丞の婿入りさせ、かおりに自分の後を継がせようと考え
ていた父親と対立する事になった。
 この親子は、どちらも自分の主張を曲げようともせず、周りの友人知人を
巻き込んでの大騒動にまで発展してしまった。
 最終的には、かおり主導のカケオチの寸前の処でかおりの父親が渋々折れ
、晴れてかおりは、伊達かおりになった。
 そしてかおりの父親は、現在雪之丞とかおりの間に生まれた二人の孫の誰
かが継いでくれればいいと考えるようになっていた。

 長男 伊達和秋(だてかずあき)十歳

 長女 伊達実夏(だてみか)  八歳

 考えが纏まったのか和秋が、横島に話しかけた。

 「横島のおじさん、俺腹減った」
 「私もお腹が空きました」
 「じゃあ何か食いに行くか」
 
 横島は、二人の答えを聞きながら、自分の財布の中身を確認した。

 (こいつら雪之丞の子供だからベラボウニ食うもんな、下手な処に連れて
ったら一気に破産してしまうし)

 「なぁ、タイガーの店で良いか?」
 「いいぜ、美味いしなんたってあそこならおじさんの財布でも腹イッパイ
食えるから」
 「そうですねお兄様、あまり高い所に行くと横島さんが年を越せなくなっ
てしまいますし」

 (雪之丞達は一体子供にどんな教育してるんだ、金が無いのは確かだけど


 「じゃあ行くぞ、確りついて来いよ」

 横島は、携帯を取り出し歩きながら何処かえメールを出していた。

 タイガー寅吉も横島と同じく若くしてGSの世界から引退していた。
 タイガーは、GSライセンスを取得後ある除霊中に負った頭の大怪我の後
遺症により精神感応力を失ってしまいGSとして引退を余儀無くされてしま
った。
 さらに、数年間に渡る辛いリハビリを余儀無くされてしまった。
 しかし、タイガーはその辛いリハビリに耐え抜き、失われた精神感応力に
変わり常人より発達した味覚を手に入れていた。
 人間は、五感の一つを失った場合残った他の感覚が発達して、失った感覚
を補うと言われている。
 タイガーは、元々精神感応力と言う六つ目の感覚を持って居た為、残った
他の感覚がそれぞれ失われた感覚を補う形で発達するのだが。
 タイガーの場合は、味覚が特出して発達していた。
 タイガーは、第二の人生としてその常人より発達した味覚を利用して料理
人なる為に必死に修行を始めた。
 数年前、辛いリハビリを懸命に支えてくれた長年の恋人の一文字魔理と結
婚し。
 更に二年前、十年にも及ぶ料理人としての修行の成果を試すため、かつて
の師小笠原エミに借金をして魔理と二人で小さな食堂を開いた。
 開店当初こそタイガーの容姿のせいで知人以外店に客は来なかったが、次
第に口コミで”店主の見た目は怖いが安くて美味い食堂”として噂が広まり
、今では学生や一人暮らしの若者を中心に繁盛していた。

 雪之丞の自宅から大通りに出て十数分程歩くと”張子の虎”と書かれた看
板が見えてきた。
 店の扉には”準備中”の札が下がっていた、昼の営業時間にはまだ早かっ
たが、横島は構わずドアを開けて店の中に入った。

 「スイマセン、まだ準備中なんですけど?」
 「魔理さん久し振り、タイガーには連絡して有るんだけど」
 「えっ、横島さん?、それにかおりの処の」

 子供達は、魔理に頭を下げて挨拶した。
 魔理が、突然現れた横島達を見て驚いていると、店の奥から魔理を呼ぶ声
が聞こえて来た。

 「魔理サーン、横島サン達が来たんですかのー?」

 そう言いながらタイガーが店の奥から顔を出した。

 「よおタイガー、久し振りだな」
 「そうですのー、横島サン」

 横島は、コートを脱ぎ雪之丞の子供達に席に座るように促した。
 子供達は、店の一番奥の四人掛けのテーブルに腰を下ろしメニューを見て
いた。
 横島は、カウンターの一番奥の席に着いた。

 「お前ら腹減ってるんだろ?、好きな物頼んで良いぞ」
 「魔理サン、お願いしますケン」
 「おう、解ったよ」

 そう言うと魔理は、水を入れたコップを2つ持って子供達の方に持ってっ
た。

 「横島サンは、ナンにしますかのー」
 「俺は、今日のお勧めで」
 「わかりましたケン」
 「タイガー、こっちもお願い」
 「良いですよ、魔理サン」

 魔理は、流れる様に注文をタイガーに伝えていった。
 タイガーは、魔理から注文を聞き終わると慣れた手つきで料理を作り始め
た。

 「それにしても横島さん本当に久し振りだよね」
 「こっちに来たのも、この店の開店の時以来だからな」
 「かおり達の事はあの子達から聞いたけど、横島さんは仕事か何かでこっ
ちに来たの?」
 「あぁ、鬼道に呼ばれたんだよ」
 「キドウ?・・・鬼道って六道の鬼道先生の事?、今は確か六道グループ
の霊能関係の総責任者になってるんだよね?」
 「そう、そいつ」

 鬼道政樹は、十年前六道冥子と結婚し六道家に婿入りしていた。
 結婚相手である六道冥子は、鬼道と結婚する数年間から母親に代わり六道
女学院の理事長職に付いていた。
 しかし、元々何でも他人任せで自分からは何もしようとはしない性格の冥
子は、婚約者ではあったが一介教師でしか無かった鬼道に理事長の仕事を全
て丸投げしていた為、一介教師でしか無いはずの鬼道が冥子の代わりに、何
年もの間六道女学院の一切合財を仕切っていた。
 冥子との結婚後は、正式に六道女学院の理事長職に付いていた。
 さらに六道グループの会長である冥子の母親の意向で、六道グループの霊
能関係の総責任者にさせられてしまっていた。

 「今年になって冥子ちゃんに子供が出来たの知ってる?」
 「知ってる、それで?」
 「六道グループ会長で六道家の現当主である冥子ちゃんの母親が、六道家
の次期当主候補から冥子ちゃんを外して、冥子ちゃんの子供を次期当主候補
にしたんだってさ」
 「さらに、六道グループの会長を辞めて自分が教育係になるって言い出し
てるらしいし、冥子ちゃんの時は人任せだったらしいから」
 「それって、六道グループの会長が代わるって事じゃないか、誰が・・・

 「魔理サン、魔理サン」

 魔理は、面白い話を途中で遮られて気分が悪いのか、タイガーを睨みつけ
た。

 「何だよタイガー、今良いところなのに」
 「料理が出来たから持って行ってほしんですケエノ」

 魔理は、振り返り料理が来るのを待っている子供達の顔を見た。

 「解ったよ、横島さん一寸待っててくれよ」
 「あいつ等に早く持って行ってやってくれよ」

 魔理は、出来上がった十数人前の料理を何回かに分けて運んで行った。
 それを見た横島は、もう一度財布の中を確認した。

 「横島サンには、今日のお勧めの鰤の照り焼き定食ジャー」
 「おっ、美味そうじゃないか」
 「冷めない内に早く食べてくだんサイ」
 「そうだな、それじゃ頂くとするか」
 「一寸待ったぁ!」

 横島が料理に手をつけようと箸に手を伸ばした時、料理を運び終えた魔理
が戻ってきた。

 「それで、誰が次の六道グループの会長になるの」
 「鬼道」
 「鬼道先生、大出世じゃないかいくら婿養子だからって凄いじゃん」
 「そうだよな、鬼道の父親の六道への逆恨み的復讐の道具として育てられ
て、その父親にもアッサリ棄てられたたんだよな」
 「今考えてみると、アイツって俺より不幸だったのかも・・・」

 横島は、鬼道との出会いを思い出しながら目頭をおさえた。

 「処で、何で横島さんが鬼道先生に呼ばれたの?」
 「霊能科担当の教員の一人が三月に寿退職するらしいんだ、それで後任の
人間を六道OGや六道系列の事務所の人間から探したらしいんだけど、適任
者が見つから無かったらしんだ、それで仕方が無いから六道の外部の人間の
候補者リストを作る事にしたんだって、その出来上がった候補者リストのト
ップに俺の名前が載ってたんだてさ、それで鬼道のヤツが俺に六道女学院で
霊能科担当の教員として働いて欲しいっ言って来たんだよ」

 ”ガシャン”

 タイガーは、横島と魔理の話を聞きながら下拵えをしていたが、横島の予
想もし無かった発言を聞いて包丁を落とした。

 「タイガー如何したの包丁何か落として危ないじゃないか」
 「よっ、横島サン、今の話本当なんですかノー」

 タイガーは、今にも横島につかみ掛からんばかりの勢いで横島に詰め寄っ
た。

 「タイガー一体如何したんだよ?」
 「魔理サンは黙っとてください、横島サンの体は・・・」
 「大丈夫だって、今回は鬼道の話を詳しく聞きに来ただけだし」
 「そうなんですか、横島サン」
 「ああ、電話で済ませられる話じゃ無かったし、それに条件聞いたらかな
り良いんだよ」

 タイガーは、無言で横島の話を聞いていた。

 「あいつも俺の事情は十分知ってるから無理にとは言わなかったし、正式
な返事は妙神山から戻って来てからって事になってるから、それにこの二・
三年結構調子良いから、タイガー心配するな無理はしないからさ」
 「すいませんノー、魔理サン、横島サン取り乱してしまって」
 「気にすんなって、あんたがあんなに取り乱すなんてよっぽどの事なんだ
ろ?」
 「俺の事もいいから、おあまり興奮するなよ子供達が驚いてるから」

 タイガーは、横島に言われて雪之丞の子供達の方を見た。

 「騒がせてすいませんノー、今デザート持って行きますケン」

 タイガーは、そう言って冷蔵庫からデザートを取り出し子供達の処へ持っ
ていった。

 「なぁ横島さん、タイガーがあんに取り乱した理由て何なんだよ?」
 「俺がGSを辞めた原因が関係してるんだよ、だからタイガーを責めない
でやってくれよ」
 「うん、解った」

 横島は、少し冷めた料理に手をつけ始めた。
 暫く店の中には、子供達の声とタイガーの下拵えをする音しか聞えなかっ
た。

 ”ガラガラ”

 「魔理何か有ったの?、開店時間とっくに過ぎてるのに札がまだ”準備中
”になってるよ」
 「ゴメン、もうそんな時間だった?」

 店内の静寂を破る様に一人の金髪の変わった髪形の美女が店内に入って来
た。

 「タイガー、きつねうどんと稲荷寿司ね、後札”営業中”にして置いたか
ら」
 「すいませノー、タマモサン」

 そう言い終わるとタマモは、入り口に一番近いカウンターの席に座ると鼻
をヒクヒクさせた。

 「普段嗅が無いんだけど、知ってる匂いがする」

 タマモは、店の中を見渡してカウンターの一番奥の席を見た時、目を白黒
させながら声を出した。

 「横島何してるの!」
 「タマモ、久し振りだな見て解らないか?、メシ食ってんだよ」
 「そうゆう事じゃ無くて、如何してここにあんたが居るのよ」

 タマモは、横島の隣の席に座りなおした。

 「あいつ等が腹減ったて言うから連れてきたんだよ」

 横島は、雪之丞の子供達が座るテーブルを指差した。

 「アレって雪之丞の処の和秋と実夏じゃない」
 「そうだな」
 「タマモサン、きつねうどんと稲荷寿司ですジャー」

 タマモは、自分の前に出されたきつねうどんを見て生唾を飲み込んだ、そ
して横島ときつねうどんを交互に見ながら唸っていた。

 「タマモ、先に食べた方が良いと思うぞちゃんと待っててやるから」
 「ウゥー、あんたの話はこれを食べてからよちゃんと待ってなさいよ」

 タマモは、美智恵とひのめの三人で元美神除霊事務所の屋敷に住んでいた

 ひのめが物心がつき始めた頃からパイロキネシスのコントロールの仕方を
教えていた。
 ひのめが成長し手が掛からなくなって来た頃から、美智恵は海外にいる夫
である公彦のもとに頻繁に行っている為、美智恵の家で殆どひのめと二人で
暮らしている。
 現在のタマモは、休日にひのめの修行に付き合う以外は、知り合いのGS
の助っ人をして日銭を稼ぐか。
 臨時職員として登録しているオカルトGメンの要請で捜査協力するぐらい
で、何も無い時は朝ひのめと一緒に家を出て、朝一でGメンのオフィスに顔
を出しその後昼近くまで街中でブラブラし昼頃タイガーの店に顔を出し、き
つねうどんと稲荷寿司を食べた後また街中をブラブラし夕方になると家に帰
るという暮らしをおくっている。
 時々ふらっと出かけて数日帰って来ない事もある。
 金毛白面九尾の妖狐としての力を完全に取り戻し数年経つが、その力を未
だに有効利用しようとはしてい無かった。

 タマモは、うどんのツユを全て飲み干し丼を置くと横島を見据えた。

 「横島、如何してここに居るの」
 「仕事の関係で一寸な、もしかしたら春からこっちで仕事するかも知れな
いから、その時はヨロシク」
 「へぇ、そうなんだ」
 「タマモ、おまえの方は如何なんだよ?」
 「やる事無くて暇ねぇ、ひのめは美智恵と令子と一緒に海外旅行中だし、
シロは未だに人狼の隠れ里に軟禁状態だしだし、おキヌちゃんは世界中飛び
廻ってて何処にいるかわからないし・・・・・・」

 横島は、タマモの口からかつての同僚達の名前を聞く度に何時もて懐かし
い様な、寂しい気分になっていた。
 タマモ以外の美神除霊事務所のメンバーとはこの十数年の間にほとんどと
は音信不通になっていた。
 タマモとは、タマモが”大阪のうどんが食べたくなった”と言ってふらっ
と大阪にやって来た時に何度か会っていた。

 犬塚シロは、当初タマモに対抗する為に修行の名目で人狼の隠れ里から出
る許可をもらい令子の処に厄介になったが、シロとタマモが反発しあってい
たの最初の頃だけで憎まれ口の言い合い等はしていたが、次第に互い相手の
事を親友の様に思い始めていた。
 その為シロは、タマモに対抗する為に修行の名目で隠れ里から出る許可を
もらった事を忘れてしまっていた。
 令子の仕事の手伝いはしていたが、次第に人間の文化にハマッテいき修行
を全くせずに遊び惚けている事を人狼族の長老に知られ、隠れ里に強制的に
連れ帰られてから隠れ里の中に軟禁されて既に十数年経っていた。
 それ以来タマモは、年に数回シロを訪ねて隠れ里に訪れている。

 氷室キヌは、六道女学院を卒業後、西条や魔鈴の通っていたイギリスの大
学に留学した。
 GSライセンスは、六道在学中にネクロマンサーという事で特例で試験を
受けずに発行されていた。
 元々ネクロマンサーという希少な特殊能力を持っていた為、大学在学中か
らオカルトGメン本部から度々捜査協力を頼まれていた。
 大学卒業後は、オカルトGメンに入り本部附きの特殊な部署に籍を置く事
になった。
 その部署は、元々希少な特殊能力者が所属する部署の為ピートことピエト
ロ=ド=ブラドーも所属していた。
 ピートは、日本の高校を卒業後に入りその高い能力を買われ今の部署に所
属する事になった。
 ピートとは、元々面識がある上におキヌが大学在学中に捜査協力をしてい
た時も、おキヌのサポートとしてピートが就いていたため、おキヌがGメン
に入った後も必然的にピートとコンビを組ことになった。
 そして、事件解決の為に二人で世界中を飛び廻っている。

 美神令子は、おキヌが留学後事務所として使っていた屋敷の名義を母親の
美知恵に代え。
 令子自信は、仕事の活動の拠点を税金の高い日本から海外に移していた。
 海外でも令子の活躍は、衰える事は無かった。

 「そろそろ出るか」
 「そうね」

 店の中には、ぽつぽつと客が増えてきていた。
 横島は、左手にコートを持つと、右手で自分の分の伝票とタマモの分の伝
票をつかんで席を立った。

 「横島それ私の分の伝票よ」
 「今日は、俺のオゴリだ」
 「そっ、ありがとう横島」

 横島は、雪之丞の子供達が座っているテーブル近づいていった。

 「二人供、腹いっぱいになったか?」
 「オウ!、満足したぞおじさん」
 「私、も満足しました」
 「じゃあ帰るか?、そろそろかおりさんの説教も終わってる頃だろうし」

 横島がそう言うと、二人供席を立ち入り口の方に歩き出した。
 横島は、テーブルの上に残された伝票をつかむとレジに向かった。

 「魔理さん、レジの方お願いしますジャー」

 タイガーが料理を作りながら叫んだ。

 「一寸待って、今行くから」
 「逃げないから慌てなくて良いよ」

 横島がそう言ってる内に魔理がやって来た。
 すると横島は、三枚の伝票を差し出した。
 魔理は、レジに一枚づつ値段を打ち込んでいった。

 「合計1万1530円に為ります」
 「はぁ、あいつ等良く食ったな」

 横島は、内心ホッとしながら代金を払った。

 「タイガー、魔理さんご馳走様また来るからな」
 「横島サンまた来てくあんサイ」
 「横島さんまってるよ」
 「あぁ、またな」
 「「有り難う御座いました」」

 横島は、タイガーと魔理に見送られて店を出た。
 コートを着ながら店の外に出ると、タマモが雪之丞の子供達と横島の事を
待っていた。

 「よし、戻るとするか二人供」
 「「ハイ!」」
 「タマモは如何する?」
 「そうねぇ」

 タマモが考えていると。

 「タマモおねーえさま、一緒に家え来ませんか?」
 「そうだよ家に来なよ、タマモのねえちゃん」 

 タマモは、二人の顔を見た。

 「そうね、どうせ暇だし一緒に行きましょうか」
 「さすがタマモのねえちゃんだ話しがわかるな」
 「でわ早速参りましょう、おねーえさま」

 そうこうしてる内にタマモは、二人に引き摺られて行ってしまった。

 「横島何見てるのよ、助けなさいよ」
 「横島のおじさん早くしないと置いてくぞ」
 「解ったから待てよ」

 そんなやり取りの後、横島は雪之丞の二人の子供とタマモを連れて雪之丞
宅に向った。
 子供達が先行し、横島とタマモがその少し後ろを並んで歩く形に為ってい
た。
 その途中タマモとすれ違う人々は、男女問わずタマモの事を羨望の眼差し
で見ていた。
 そのタマモの横を歩く横島には、嫉妬の念が送られ続けられていた。

 「タマモもう少し離れて歩いてくれないか?」
 「如何してよ?」
 「何時も言ってるだろ、おまえと一緒に歩いてると俺は生きた心地がしな
いんだよ」
 「何よ私と一緒に歩けて嬉しく無いって言うの」
 「嬉、嬉しく無い訳が無いだろこんな美人なねーちゃんと一緒に歩けて。
しかし、しかしだ俺も大人になって周りの視線が気に為る様に為ったんだよ
、何時までも煩悩全開少年のままではいられないんだー」
 「仕方が無いわね横島がそう言うんじゃ」

 そう言ってタマモは、先を歩いていた和秋と実夏によって行った。

 「あれ?、あれ?」

 横島は、タマモの後ろ姿を見送りながら声を上げた。

 「如何してだー、こうゆう時は”細かい事は気にし無いの”とか言って腕
を絡めて来るんじゃないのかー?」

 横島は、頭を抱えて転げ回らんばかりに騒いでいた。

 「おじさん如何したんだ?」
 「頭に質の悪いウイルスでも入ったのかしら?」
 「大丈夫よ発作みたいなモノだから放って置けばその内元に戻るから、気
にし無いで先に行きましょう」

 タマモは、そう言って二人の手を引いて足早に横島から離れていった。

 その後、タマモ達に放置された横島は、警察に職務質問される前に正気に
戻り無事に雪之丞の家に辿り着くことが出来た。

 「おまえ、まともに為ったかと思えば偶に昔の横島に戻る時が有るよなあ

 「うるさい、俺だって好きでやってる訳じゃ無いんだぞ、前に老師に相談
した時に言われたよ」
 「老師て妙神山の猿か?」
 「ああ、俺は元々人より煩悩の量がデカイらしいんだ、人として成長して
まともに為っても偶にガス抜きし無いと煩悩が爆発するって」
 「お前も色々と大変なんだな」

 その後、横島と雪之丞はタマモとかおりをまじえて、横島の上京の理由や
互いの最近の仕事の話などを話題に時間を忘れて盛り上がっていた。
 途中で雪之丞が夕食に寿司の出前を取った、タマモには稲荷寿司を取った


 「おっ、もうこんな時間か、横島今日如何する泊まっていくか?」

 雪之丞が時計を見ると既に八時を過ぎていた。

 「いい、これから行く処あるし」
 「こんな時間に何処に行くんだ?」
 「妙神山」
 「妙神山に行くのか?」

 妙神山と聞いて雪之丞が目を輝かせていた。

 「アナタ駄目よ、明日は朝から大口の仕事が入ってるんだから」
 「くっ」
 「それも二人がかりでも難しいかもしれないのよ」
 「だったら私助っ人しようか?、どうせ暇だし」

 タマモの発言に雪之丞が飛びついた。

 「本当かタマモ?、仕事はかおりとタマモに任せて俺は横島と妙神山に・
・・」
 「駄目よ」

 かおりは、雪之丞が喋り終わる前に雪之丞の考えを斬って棄てた。

 「如何してだ?、タマモが助っ人してくれるって言ってるんだ俺が居なく
たって良いじゃないか」
 「タマモさんが助っ人を引き受けてくれるのなら頼みます、タマモさん宜
しいのですか?」
 「私は良いわよ、どうせ暇だし」
 「タマモも良いって言ってるんだ、俺が居なくても・・・」
 「駄目よ、タマモさんお願いします、明日の仕事は時間指定など条件が厳
しい上に違約金もかなりの高額なんです万全の体制で行きます、良いですわ
ね雪之丞」

 かおりは、怒気を帯びた冷たい目で雪之丞を睨みつけた。

 「ちっ!、解ったよ」

 雪之丞は、まだ納得いかないのかすねた様な態度を取っているが、内心で
はかおりの冷たいめに恐怖していた。
 横島とタマモもかおりに脅えていた、そして伊達家最強はやはりかおりで
あると再認識していた。

 「タマモさん明日の仕事に付いて説明します付いて来て下さい、それから
明日は早朝からなので今日は家に泊まっていって下さい」
 「はぁ、はいぃ!」

 タマモは、直立不動のまま返事を返し、助けを求める様な目で横島を見な
がらかおりの後に付いて行った。

 「雪之丞、俺そろそろ行くから皆にヨロシク」

 横島は、そう言い残すと鞄とコートを持つと足早に雪之丞の家後にし、東
京駅に向った。



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