ザ・グレート・展開予測ショー

【夏企画SS】夏のお嬢さん!


投稿者名:臥蘭堂
投稿日時:(06/ 8/ 5)

 夏――時として臓腑を締め上げんばかりにまでなる暑さと引き換えに、輝く陽光が世界を照らし出すその季節は、少なくとも日本においては、おおむね喜ばしいものとして受け入れられている。
 夏は好かないと言う人でも、どこかしら心根が浮き立ち、何かわくわくとした、期待感にも似た感情が起こる。

 まして、心惹かれる異性を持つ若者であるならば、なおの事。

 だから、終業式の帰り道、氷室キヌや一文字魔理が始まったばかりの――正確には、これから始まる――夏休みに向けて、明るく予定を話し合っているのは、しごく当然の事だと言えた。むしろ、彼女ら二人から一歩引いた位置で、暗い表情を作る弓かおりの方が、この場では異端だと言えただろう。

「でな、アタシとしちゃーやっぱ水着はセパレートよか……って、オイ、お前いつまでそんなツラしてんだよ」
「あの、弓さん、元気出してください」
「元気ですわよ、私」

 元気だと言う割りには、いつものような態度が潜められているのが、二人には気になって仕方がない。その原因も、解ってはいるのだが。

「だからよー、伊達の旦那が朴念仁の唐変木だなんて事ぁ、とっくに折り込み済みな筈だろう? それともアレか? 横島さん並の反応が欲しいってか?」
「言ってませんでしょう、そんな事は?!」
「横島さんをたとえに出さないで欲しいんですけど……」

 弓かおりの悩みの原因は、ただ一つ――ボーイフレンド、と言うよりはもう一歩踏み込んで彼氏とでも呼べるだろう人物、伊達雪之丞の、奥手ぶりについてだった。

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GS美神 二次創作

夏のお嬢さん!
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 事は先週末、期末試験後の試験休み中に、彼女ら三人と、横島忠夫、タイガー寅吉、伊達雪之丞の三人、合計六人でのトリプルデートにまでさかのぼる。
 同世代と比べても、経済的に決して豊かとは言い切れぬ男三人が相手であるから、デートコース自体は決して豪勢なものではなかった。割引チケットを利用した映画鑑賞に、軽食、談笑――その程度である。
 そんな、他愛もない、あるいは年相応と言えるデートのさなか、伊達雪之丞は、始終かおりの神経を逆撫でし続けたのだ。

 その1。彼女なりにめかしこんだ私服姿について、何一つ感想を漏らさなかった。
 その2。映画館の暗闇の中、あの横島忠夫ですら起きていた中、一人船を漕いでいた。
 その3。横島やタイガーが、始終各々の相手に対し、不器用ながらも気遣いを見せていたのに対し、徹底して泰然自若、傍若無人な態度を貫いていた。

 果たして、本当に彼は自分の彼氏と呼べるのだろうか。そんな疑問をかおりが抱いたのも、無理はないだろう。

 氷室キヌを介して聞いた横島の証言によるならば「あのマザコン野郎が『ママ』って単語を使わないで女の子ほめたのは、弓さんに対してだけ」なのだそうだ。ちなみに、この直後「大体あのヤローに弓さんはもったいなさすぎなんだよなー、いっそ俺が!」などと叫びだし、即時事務所の女性陣によって血の海に沈められた点については、キヌも語らなかったのだが。

 ともあれ、そのような事を聞かされても、なおかおりの不安は募るばかりだった。
 嫌われている、とまでは言わない。だが、相手にされているかと言うと、自信がもてない。そんな状態だった。

 キヌや魔理と別れ、自宅への道をとぼとぼと彼女には珍しく沈んだ歩調で歩く姿にも、そうした心境が現れていた。
 もしかして、自分には女性としての魅力が少ないのではないだろうかと。

 だからなのだろう、彼女が、その老人の声に反応してしまったのは。



「さあさあさあ、遠からん者は音に聞け、近くば寄って目にも見よ。取り出だしたるこの鏡、そんじょそこらの鏡とはちいとばかり勝手が違う。これこそは真実を映し出すカオス式補正鏡じゃ!」

 何事かと振り向けば、暑いさなかに黒いマント姿と言う、見た目からすでに怪しげな風体の老人が、無表情な少女を傍らに、路面に風呂敷を広げ、おどろおどろしい装飾のついた手鏡を手に、口上を述べていた。

「このカオス式補正鏡を用いれば、たちまち化粧の技術が上達する事間違いなし! 何となればこの鏡、映った像を正確克明に映し出すばかりではない。何と! 映った像の中でゆがみが検知し、自動的にそのゆがみを強調してくれるのじゃ!」

 それは、はたして鏡の機能として必要だと言えるのだろうかと、疑問に思わぬでもなかった。

「つまり、この鏡を用いて化粧をし、その上で美しく仕上がるならば、普通に見ればより美しくなれるという仕掛け。さあ、このカオス式補正鏡が、何とたったの三千円!」

 手鏡一枚に三千円払うと言うのも、はたしてどんなものであろうか。そもそも、理屈は解らぬでもないが、はたして「ゆがみが強調された」己の顔を積極的に眺めたがる女が、この世にどれだけいると言うのか。
 そういうかおりの思いの通り、道行く女子高生や主婦達は、老人を避けるように小走りに駆けていくばかりだった。

「ドクター・カオス・お客さん・来ません」
「ぬぅ……どいつもこいつも、より美しくなろうと言う向上心は無いのか」
「ミスター・厄珍・それは・売れないと・おっしゃってまし・たが」

 たどたどしい発音で少女が口にした名前に、かおりは驚愕した。

 ドクター・カオス? まさか、あの『ドクター・カオス』だと言うの?

「ドクター・カオス・あそこに・お客さん・候補者・発見」
「む、行くぞマリア!」
「イエス・ドクター・カオス」

 が、そんなかおりの驚きをよそに、二人は風呂敷をかかえどたどたと近づいてきた。

「そこなお嬢さんさっきからこちらをうかがっていたようじゃがこのカオス式補正鏡に興味がおありかね? あるんじゃね? よーし決まった!」
「え? あ、えと、はい?」
「今ならこのカオス式補正鏡がなんと三千円の大特価じゃ! ささ、今すぐ代金を。さもないとワシはまた大家のバーさんにド突き倒されてしまう。この老人を助けると思って、さあ」
「あ、その、そうではなくてですね」
「……何じゃ、お前さんも冷やかしか。ええい世間の風の冷たい事よ」
「あの、もしかして、ドクター・カオスでいらっしゃいますの? あの『ヨーロッパの魔王』と言われた」
「あん?」

 いじけたようにきびすを返しかけた老人が、振り向いた。

−−−−−

「何じゃ、お前さん六女の生徒か」
「ええ、1年B組、弓かおりと申します」

 かおりと老人――すなわちドクター・カオスと、その最高傑作たる人造人間マリアは、近場にあった和風喫茶に来ていた。「ワシ、金は持っておらんぞ」と言うカオスに、かおりは茶代ぐらいならば自分がと言い、引き止めたのだ。
 店先に出された緋毛氈のかかった長椅子に腰を下ろし、緑茶をすするカオスに、かおりはオカルト史の教科書を鞄から取り出し、開いて見せた。

「お名前は、授業でもうかがっておりました、ほら、教科書にも」
「どれどれ……誰じゃこのヒゲまみれの変なジジィは」

 そこには、恐らく銅版画なのであろう、細密な描写で描かれた、いかにも魔法使いか何かのような姿の老人の肖像が載っていた。その下には「ドクター・カオス(948〜?)」と小さくキャプションがついていた。

「まあ、ルネサンス頃に作られた想像図でしょうから」
「その頃だって外見は若々しかったわい……ま、ええ」

 団子を頬張り、茶で流し込んで一息入れたカオスが言葉を継いだ。

「で、アレか。この『ヨーロッパの魔王』カオスの高説を聞きたいと言う訳かね」
「はい。日本にお出でとは聞いていましたが、まさかこうしてお目にかかれるだなんて思ってもおりませんでしたわ」
「ぬはははは。そうじゃろうそうじゃろう。何でも聞くがええぞ。今日は気分が良い」

 日本に来て以来、珍しく持ち上げられてかなり機嫌を良くしているらしかった。しかし。

「何じゃね、何も聞く事ぁないのか?」
「あ、はあ……」

 かおりは、いざとなると何を聞けば良いのか、迷ってしまっていた。と言うよりは、聞く事が何も無いのだ。
 かおりが錬金術や、たとえば魔鈴のような西洋の魔女術、魔術を使うのならば、まだ話題も見つかっただろう。しかし、かおりの得意とするのは、仏法を基礎とした術であり、今ひとつ接点が見つからないのだ。
 実際には、カオスの無駄に広範な知識体系の中には、仏法関連のものもあったのだが、そこに思い至れるかおりではなかった。
 結果――かおりは、迷い迷った挙句、はなはだ場違いとも言える悩みを漏らしてしまっていた。

「実は……私、今ボーイフレンドがおりまして」
「……はあ」

 軽くずっこけるカオスを他所に、かおりの告白が続いた。やがて――

「ふむん……つまり、相手がちいともその気になってくれんので、自信が持てんと。そーいう事か」
「まあ、そのような所です」
「あー、まあ何だ、色恋つーのはワシも専門ではないが、まあ良かろう。ワシを見込んで話してくれたんじゃ、考えてやろうではないか」
「え……ほ、本当ですか?!」
「おう、このカオスに二言はない。その代わり、上手く行ったらこのカオス式補正鏡、買ってくれ」
「ええ、手鏡だろうが姿見だろうが、買わさせていただきますわ!」

 因みに、この間脇に控えていたマリアの人工頭脳は、何故だか泥で出来た船に乗り大海へと漕ぎ出すカオスと弓の姿を仮想映像として構築させていたが、その事について、マリアは沈黙を守り続けていた。

−−−−−

「まあ、ワシが見るにだ。お前さん、女性としては中々美しいと言えるじゃろう。多少の趣味の差異はあっても、たいがいの男ならば、お前さんに目を惹かれるじゃろうな」
「そんな……それほどでもありますけれど」

 おだてるようなカオスの言葉に、かおりは次第に普段の調子を取り戻し始めていた。

「……ま、ええ。しかしだな、一つ大きな問題がある」
「問題、ですか?」
「うむ。確かにお前さん、容色に優れていると言えるじゃろう。しかし、今ひとつ堅すぎると言う感がぬぐえんのもまた事実じゃ」
「堅い、ですか」

 カオスは二杯目の茶をすすった。

「ざっと見じゃが、お前さんの全身のプロポーションは、その黄金率に当てはまる。黄金率と言うのは、知っておるかな?」
「え、ええ。勿論存じておりますわ。確か、人が最も美しいと感じるバランス、ですわよね」

 いささか誇らしげに言う弓を、しかし、カオスはふんと鼻で笑ってみせた。

「な、何がおかしいんですの?」
「おぼこ娘はこれじゃからのう……例えば、ミロのヴィーナス。アレも実は、全体のバランスが黄金率によって構成されておる」

 無言でうなずく弓。確か、美術の授業で聞いた覚えがあった。しかし、だからこそカオスがなぜ笑うのかが、弓には解らなかった。

「ミロのヴィーナスは、言わば美の象徴とも言うべきものではありません事? それと等しいのならば」
「だが、ミロのヴィーナスが男の劣情を催させると、お主は思うかね? ああ、横島の小僧は勘定外としてだ」
「うっ!」
「黄金率は、確かに美しいと人に思わせるものじゃ。しかし、それは言わば、無機的な美しさなのじゃよ。彫像や、絵画の構図などのな。つまり、それは芸術的美しさなのであって、女性性を感じさせる美とイコールではないのじゃよ」

 がーんと、まるでいかづちに撃たれたかのような衝撃がかおりの全身は走った。

「そっそんな……わ、私の美貌が……芸術品だなんて!」
「……落ち込んどるのか自慢しとるのか、どっちじゃね」
「なっ……ならば、私はどうすれば! ああっ自分の完璧さが今は無性に憎いですわ!」
「ほんっとーに美神令子に似とるなあ、お主……まあええ。さて、丁度美神令子の話題が出た所で……マリア」
「イエス・ドクター・カオス」

 カオスの言を受け、マリアがその双眸から光を発すると、中空に高さ30センチほどの立体映像が結ばれた。それは――

「これは、美神お姉様?」
「うむ。どうじゃね、同性のお主から見ても、女性性に溢れておると思うかね?」
「無論ですわ!」
「実際、彼女に劣情を抱く男は多い。その筆頭は無論横島の小僧だが、まあ今はそれは良い。問題は、じゃ」
「はい」
「お主、美神令子のプロポーションで何か気付かんか?」
「?」何か、と言われても、今ひとつ弓にはピンと来なかった。せいぜいが。「まあ、私より胸や腰が豊かですわねーとしか……」
「そこじゃ!」
「へ?」
「確かに、美神令子は豊かな肢体をしておる。胸も腰周りも大きく張り出し、反して腰はあくまで細い。しかして美神令子の肢体は、決して黄金率に添うものでは無いのじゃよ!」
「え?! で、でもこんなに美しいのに!」
「さっきも言うたじゃろう。黄金率は女性美と決してイコールではない。むしろ、黄金率を微妙に崩したぐらいが女性美を感じさせるのに最も適したバランスなのじゃよ」
「はー……さ、さすがは『ヨーロッパの魔王』と呼ばれたお方ですわ!」
「な、ならば私のそのバランスに!」
「うむ。しかし、それは難しい問題だと言う事ぐらい、お主とて若い女性ならば知っていよう?」
「あ……」

 言われる通りだった。望むままのプロポーションを手に入れる等という願いは、それこそ有史以来の全ての女性の願望に他ならないのだ。

「では一体どうすれば……」
「まあ、幸い今のお主は黄金率のプロポーションを持っておる。となれば、後はそれを微妙に矯正するのが当座の手じゃろうな。例えば……あー……少し小さめの水着姿で迫ってみるとか、じゃのう」
「なっなるほど!」

 その手があったか――正に、そんな思いだった。

「ありがとう御座います、ドクター・カオス! これで、これで私、再戦に臨めますわ!」
「うむ、ワシも影ながら健闘を祈っておるぞ。そして、勝利の暁には、是非ともカオス式補正鏡を購入してくれい!」
「お任せあれ! 見てなさい雪之丞! あなたは私の魅力の前にひれ伏すのよ!!」

 盛り上がる二人を他所に、立体映像の再生を終えたマリアは、遠巻きに見詰める人々に対し、おひねりを要求すべきかどうか、人工頭脳をフル回転させていた。

−−−−−

 かおりとカオスの邂逅から三日後――かおり達六女三人組と、横島、タイガー、そして雪之丞の三人は、そろって都内の大型プールへと来ていた。

「いやーやっぱり混んどりますノー」
「ま、そりゃ仕方あんめー。毎日暑いしなあ」
「ったく……これならもうちょい場末の市民プールとかで良かったんじゃねーのか?」

 男三人は先にプールサイドで場所をとり、女性陣を待っていた。こういう場合、タイガーの強面な外見は非常に役立っていた。

「しっかし遅ぇな、女共はよ」
「そう言うなって、女の子ってなーこう言う場合時間かかるもんだろうよ」
「雪之丞さんは相変わらずですノー」

 溜息まじりに言う雪之丞をなだめる横島とタイガーの視線が、ふとそれた。その先には。

「お待たせしましたー」
「悪ぃ悪ぃ、更衣室も混んでてさあ」

 キヌと魔理の二人が、各々水着姿で立っていた。キヌは薄いピンクのオフショルダーワンピース、魔理は黒い競泳タイプと、それぞれがそれぞれの魅力を引き出す出で立ちだった。

「あ……あの、横島さん、どうですか、この水着」
「え、あ、う……うん、似合ってる、よ」
「な、何だよタイガー、そんな顔して」
「ま、ま、ま、ま、魔理、しゃん……」

 二組が二組とも、初々しいと言うか、馬鹿馬鹿しいと言うかな会話をする中、雪之丞がぼそっと呟いた。

「どーでも良いけどよ、弓のヤツはどうしたんだよ」
「あ、弓さん更衣室ではぐれちゃったんですよ」
「肝心な所でドン臭いよなあ、アイツ」
「はぐれたぁ? ったく何やってやがん……?」

 言いかけて、周囲のざわめきが統一されていくのを感じ、雪之丞は異常を感じ取った。

「な、何ですか一体?」
「おい、アッチ!」

 キヌと横島の指す方を見れば、そこはまるで、神託を受けた者の前に大海が開くがごとく、人垣が左右に分かれて行く様子があり、その中心には――弓かおりがいた。

「お待たせしましたわね、皆さん」
「弓……さん、その格好は……?」
「お前……そりゃあ幾ら何でも」
「な、何事ですジャー」
「ぬお! こりゃまたこれで……って、イタイイタイイタイイタイ!」

 各人各様、驚愕の表情を作る中、横島だけは普段どおりとも言える反応を示し、キヌに腕をつねられていた。
 しかして、その弓の姿とは。

 ドクター・カオスをして黄金率と言わしめたその肢体を包むのは、紺色でどこかざらついた光沢の生地で、一種競泳水着を想起させるものだった。だが、その形はあくまでも野暮ったさを残し、それでいて何故か郷愁にも似た思いを抱かせるに足るだけの何かが秘められてもいた。

 詰まる所、ぶっっちゃけて言うならば――学校指定の女子用水着、すなわち、スクール水着そのものであったのだ。しかも、古いタイプ、いわゆる所の旧スクであった。

「ほーっほっほっほ、いかがですか、雪之丞! この私の姿!」

 おそらく、中学時代にでも着ていたものを引っ張り出して来たのであろう、誇らしげにそらす胸元には、「3−C 弓」と書かれた白い布が縫い付けられていた。しかし、何より問題なのは、そのサイズだった。明らかに、小さすぎるのだ。
 胸の辺りなどは到底成長したかおりの肢体を収めきれず、色々危機的状況を来たしかけていた。

 そして、その姿に対して雪之丞が返した反応は。

「いや……えーと……何だよホレ……罰ゲーム?」
「何ですってー!」
「他にどう反応しろってんだそんなアホな格好ーっ!」

−−−−−

「成る程のぅ……で、結局うやむやの内にデートはご破算と言う訳か」
「はい……」

 プールでの惨劇から更に数日後、かおりはまたも路上で出会ったカオスと共に、和風喫茶へと来ていた。

「申し訳御座いません。折角教えをいただいておきながらこの無様、どうぞかおりを御笑い下さい」
「何の、それはお主の問題ではあるまいて。しかし……ふうむ、中々に手ごわいようじゃの、相手の男」
「はい。あれだけ注目を集めていた私に向かって『罰ゲーム』だなどと返してくるとは、よもや思いませんでしたわ」
「して、どうするかね。もう諦めるか?」
「まさか! 今回の敗因、まだまだ私が生ぬるかったと言う事! 次こそは必ずや!」
「うむ! その意気や良し。ワシも協力を惜しまぬぞ、少女よ!」
「はい、ドクター・カオス、いいえ、カオス先生!」

 またも周囲の耳目を集める二人を他所に、マリアの人工頭脳は氷山めがけてまっしぐらに進む巨大客船と、その舳先に立つかおりとカオスの姿を映し出していた。


 なお、それよりしばらくの間、雪之丞とのデートの場にナース服にミニスカポリス、修道女姿など様々な制服を着て現れる弓かおりの姿があったとも言うが、定かではない。

――了――

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