ザ・グレート・展開予測ショー

【夏企画SS】日本の夏・紳士の夏


投稿者名:おやぢ
投稿日時:(06/ 8/ 1)

英国の夏というものは、案外と過ごしやすい。緯度でいうと東北から北海道と変わりないくらいに位置している。
だからといって冬の季節に、あそこまで裄が積もるという事はない。極一部を除いては、一年を通して比較的穏やかな土地柄である。



対して僕が今いる国、日本。
世界的には珍しい四季というものがあり、各季節により自然の山々は色々な顔を魅せる。雅という言葉はまさにこのために作られたのではないかと思える程だ。

しかしそれは自然豊かな地方の話であり、地面をすべてアスファルトで固められ、コンクリートのビルの森に囲まれた大都会東京では雅な事は起こりえる事もなく、夏の自然現象といえば『ヒートアイランド現象』という人によって歪められたものしか起こってくれない。

この『ヒートアイランド現象』、自他共に認める英国紳士の僕としては迷惑この上ない。
ただでさえ気候の違う、英国と日本。王室御用達の物しか身に纏わない僕としては、東京のこの暑さにはほとほと辟易としてしまう。








【夏企画SS】日本の夏・紳士の夏







ICPOオカルトGメン日本支部。僕が現在勤めている場所である。
その名の通り、国際警察機構に属したものであり、それは同時に地球規模の問題に対しても敏感である。
現代の世界が抱える問題の一つ“地球の温暖化”があり、それは我々国際的な人間だけに当てはまる事だけではない。
身近な所から……つまりは省エネだ。

事務所の冷房は控え目に。

とりあえず日本の官公庁を見習いそれに従っているが、先ほども述べたように僕は英国紳士だ。
日本の気候に合わせた物など英国には存在しない。かなり辛いものがあるが、紳士たる僕はそれでも姿勢を乱す事はしない。

なぜならば、それがジェントルマンというものなのだから!




「あのね、西条君」

毅然たる態度の僕に向かい、美神美智恵先生が声をかけた。
なぜだかその額には汗が滲んでいる。まぁ暑いから仕方のない事だろう。

「なんですか、先生」

「周り見てみなさい。分からない?」

先生にそういわれて周りを見渡すと、職員が皆同じ顔で僕の方を見ている。
皆の顔には悲哀というか苦渋というか、かなり複雑なものが見受けられた。

「職員は制服の夏服があって、管理官のあなたにそれがないからクールビズを勧めたのは確かに私よ」

先生の顔がかなり困ったものになっている。
そう今現在、僕は官公庁と同様にクールビズを行っていた。
しかし、それのどこに不満があるのだろうか。

はっ!そうか。英国紳士たる僕が、日本の夏の気温に合わせて英国ではなくイタリア風にしたのがいけなかったのか。アルマーニのスタンドカラーシャツはあまりにも俗物過ぎて、紳士の僕には不似合いだったのですね。
今流行のチョイ悪親父なんてやはり僕には無理だったのか。

「チョイ悪オヤジでもなんでもいいんだけど……」

先生は大きく深い溜息をついた。


































「頭までクールビズにするのはどうかと思うの。ズリ落ちてるわよ……ヅラが」


事務所内の気温が2度ほど下がった気がした。
これで今日は過ごし易くなっただろう、皆感謝してくれ。
だから蔑んだ同情の目を向けるのはやめてくれないか……お願いだから。





           〜END〜

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