ザ・グレート・展開予測ショー

結婚式のその後に


投稿者名:天馬
投稿日時:(06/ 7/26)

 彼女と彼の結婚式に、こんなにも冷静に、けれど心からの祝福を送れるとは思わなかった。
 結婚披露宴が終わり、二次会どころか三次会、四次会とハシゴしにいったいつもの面子。
 しかし、そんな彼らを尻目に僕は、一人だけ披露宴が終了の時点で帰宅した。
 別に一人になりたかった、というわけではなかった。
 ただ、静かに彼らを祝いたかった、というほうが正しいのかもしれない。

 自分の恋敵とも言える、いや今となってはすでに言えた、か。
 彼、横島忠夫。どうしてあんなにも彼のことを敵視していたのだろう?
 自分の想い人、美神令子。
 彼女をどうしてあんなにも愛していたのだろう?


 懐からタバコを取り出し、火をつける。
 肺に、紫煙が染み渡る感覚を確かに感じて。




 今日は、これをあけるか。彼と彼女に祝福を。




 台所に向かい、秘蔵のバーボンを取り出す。
 もしも彼女と一緒になれたらあけよう、そう思って買ったものだった。

 氷もいれず、水も入れず。
 ストレートのまま、グラスに注ぎ込む。
 琥珀色の液体は、見つめていると時間を忘れそうで、そのまま僕はそれに魅了された。



 彼に対する態度。あれはきっと、彼を試していたんだろうと、今なら素直に思える。
 愛する妹の為、大切な人のために、せめて僕が納得できるくらいにはなってもらいたい。
 同じ彼女を愛したものとして、彼女の兄として。

 彼女に対する思慕。それはきっと、純粋な愛。
 自分と一緒になれたら、彼女と添い遂げられたらと思いつつも、横島君との最初の会合ではあんなことまで豪語した。
 彼女が幸せなら、僕は喜んで身を引こう、と。


 つまりは、そういうことなんだ。
 純粋な愛と、純粋に悪友の為に。
 ただそれだけだったんだ。

 バーボンをちびりと一口。
 かなり強いアルコールで、僕の咽喉はヒリヒリする。

 紫煙が薄暗い部屋の中をハードボイルドに彩る。


 妹と、悪友か。







 「約束は守ったぞ、高嶋」



 一瞬脳裏に浮かんだのは令子ちゃんと横島君ではなく、何故か陰陽師姿の彼と、悪魔のように耳がとがった彼女だった。


 グラスに残ったバーボンを一気に流し込むと、けれどそれは綺麗に消え去った。

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