ザ・グレート・展開予測ショー

雪乃丞


投稿者名:斉貴
投稿日時:(06/ 7/25)




 スポットライトが照らす。

 俺と、奴を。

 俺は高揚する意識の中、ただ奴だけを見た。

 視界を奴だけに狭め、他の情報を排除していく。

 この瞬間、この時だけは永遠だ。

 自然と口元が笑みに歪む。

 これから始まる楽しき一時に体が打ち震える。

 思えば、そう思えばいつもこれを求めていた。

 力が欲しかった。

 何ものにも侵されぬ力、自分にさえ侵されぬ力。

 そんな力を俺は求めていた。

 別に力の先に何かを求めていたわけではない。

 ただ、無力を悔やむ生き方だけはしたくなかった。

 そう、無力にだけはなりたくない。

 自分が何も出来ない非力さを呪うのもいやだ。無力感に苛まれるなどそれこそお断りだった。

 後悔だけはしたくなかった。

 だから求めたのだ、力を。

 何故そこまで力を求めたか、その理由はママにあった。

 ママは美しく、強い人だった。

 誰よりも俺を愛し、誰よりも俺を見ていてくれた。

 そんなママだからこそ憧れたんだ。

 そんなママだからこそ守りたいと思ったんだ。

 強くなると誓ったんだ。


 ・・・笑ってしまう。


 そんなこと、俺はいつ思ったのだろう?

 俺はママのことなど何も知らない。顔も、趣向も、性格も。

 当たり前だ。ママは俺が物心着く前に死んだと聞かされた。

 なら俺の知るこのママは何だというのだろうか。

 俺の妄想の産物か、はたまた幻想の類か。

 明らかにおかしい矛盾。

 けど、もうどうでもいいことだった。

 確かに求めるきっかけはママだったかもしれない。

 守りたいと思ったのはママだけだったかもしれない。

 だが、俺が強くなると誓ったのは、間違いなく俺自身なんだ。

 何時したのかも分からない誓い。

 だけど、それでもいい。自分に残った唯一のものに全てを懸けてみるのもいい。

 もう守るものは無い。だったら、残るは一つ。

 ただ、攻めるのみ。

 ひたすらに、真っ直ぐに、愚直に、ただ攻める。

 拙い信念だと笑われてもいい。

 だがこれは、これだけは俺を裏切らない。

 この先に何があるかは分からない。

 それでも俺は進んでいきたい。

 だから――

「貴様はどことなく俺に似ている!行くぜっ!!楽しませてくれよっ!!」

「そーゆー、病んだ心を持っとるのはお前だけじゃっ!一緒にすなあっ!!」

 突き進んでやる――!


 

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