ザ・グレート・展開予測ショー

大気圏突入(1)


投稿者名:NEWTYPE[改]
投稿日時:(00/ 7/10)

ピーッ!ピーッ!
「横島君、そろそろ降下作戦が始まります。至急デッキに上がってきなさい!」
部屋のスピーカーから、美神の歯切れのよい声が響いてくる。
「・・・おキヌちゃん・・・・俺が宇宙に戻ってきたらもう一度勝負だっ!」
「ふふ、楽しみにしてます。」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・しばらくお別れだな・・・・」
「・・・・そうですね・・・・」
二人は無言のまま軽く抱き合った。
おキヌも泣くことはしなかった。また横島に会えることを確信していたから・・・・。
「そんじゃ行ってくる!」
「気をつけて・・・・・」
おキヌは、横島の後姿を見送りながら両手を胸に当てた。
「横島さん・・・・・私、待ってますから・・・・・」


艦隊が地球の低軌道上に入った時、アーギャマ以下の艦隊は縦一文字に展開して、MS隊の発進隊形に入った。
「軌道固定!相互の艦隊位置固定っ!」
美神の号令が、アーギャマのブリッジに響いた。
「各艦、MS発射軸固定っ!」
メインモニターにカウントダウンの表示が始まっていた。
「発進、用意っ!全周囲、索敵おこたるなっ!」
「了解っ!」
「MS隊!順次発進!」
ICPOの艦隊から、MSの発進が開始された。
「西条大尉!健闘を祈ります!」
アーギャマのブリッジのパイロット用のモニターに映る西条に、見神は万感を込めて言った。
「了解!艦長!」
「・・・・・頼みます、大尉。」
アーギャマのカタパルトデッキの上の十式から、西条は各機に呼び掛けた。
その呼び掛けに応えて、十式のコックピットのモニターがマルチになって横島、小竜姫、シロ、タマモの映像が映り、
「MK-U、発進よし!」
「ディアス、発進よし!」
「発進!」
西条の短い言葉の後、西条の十式が射出され、反対のカタパルトデッキからは、小竜姫のディアスが射出された。
西条の出た後のカタパルトデッキにはMK-Uが引き出されて、さらに反対側ではタマモのディアスが発進していった。
そのようにして、各艦艇からも整然とMS隊が発進してゆく。
そのMS隊は、ジェムとノモ(どっちもザコ)が主体で、それに西条の十式、小竜姫以下、タマモ、シロのディアス、横島のMK-Uと続いた。
発進するMSの数は、八十余機。
その光景は壮観であった。
このMS隊で、ジブローが制圧できないとは誰も思いつきはしない。


そのMS隊を発進させている艦隊の背後の空域の星の見えない空間から、流星のように飛び込んでくる一機のMSがあった。
その姿は、よく見るとMSとは言いがたかった。
MA(モビルアーマー:MSが変形した状態の総称(少し違うけど))と言った方が正しい奇妙なマシーンである。
それが、一直線にICPOの艦隊に向かっていた。
そのマシーンの暗いコックピットに座るのは、アシュタロスである。
長い髪、多少はそげた頬・・・・」
なによりも、やや吊り上って見える瞳の奥に、怪しい光を宿す若者である。
「ジブローを攻めるか・・・・わからん話ではないが・・・・そうはさせん!」
ドーンとそのマシーンのテールノズルから、長い光の帯が吐き出されて、地球と闇が作る境目に向かって消えていった。
その速さは尋常なものではなかった。
そのコックピットの照準スケールが、敏感に光の点をキャッチして、その光点に向かってカーソルを合わせた。
「よし!・・・私のメッソーラは、そのへんのMSとは違う・・・・」
アシュタロスは、薄い唇を舐めたようだ。
メッソーラは、見えない艦隊へ向かって接近し、照準にあっという間に艦影を捕捉した。
「いいな・・・・・」
アシュタロスは嬉しそうに言うや、トリガーをひいた。
メッソーラの機体の左右に隠されたメガ粒子砲が火を噴いた。
ICPOの艦隊の最後尾につけた艦が瞬時に火球を作った。
と、ほとんど間を置くことなく、その脇をメッソーラの機体がすり抜けた。
その速さは、近くにいたICPOのMSのパイロットに、メッソーラの機体を識別させる間を与えなかった。
ことに、前方に抜けたメッソーラのテールノズルは、光が見えたにしてもICPOのパイロットには、友軍のMSぐらいにしか見えない。
直撃を受けた艦のカタパルトデッキでは、まだMSが発進中であった。
それが、艦の爆発に巻き込まれていった。
「シチリア(ICPOの巡洋艦)がやられましたっ!」
アーギャマのブリッジで監視をしていたヒャクメが、光の膨張する姿を見て反射的に悲鳴をあげていた。
「なんですってっ!?どこを見ていたのっ!!」
美神が言う間もなく、ヒャクメが、
「前方!MS!いや、MAですねーっ!!」
「機種はっ!?」
ヒャクメが手元のウインドーでデータを呼び出す。
が、そこには該当しそうなMAはない。現在観測中のマシーンと照合して、小型すぎるという回答が返ってきただけだった。
「機種不明っ!」
アシュタロスのメッソーラが大きく迂回して、再び艦隊の後尾につけたようだ。
ババァァア!
またも艦艇の一隻に火が回った。
「フン!」
アシュタロスはせせら笑った。
「後方からだと!?」
西条は、目前に迫る地球の青い光を受けてアーギャマの呼び掛けに応えていた。
小竜姫のディアスがターンをして、MS隊の後方へ向かおうとした。
「小竜姫っ!編隊を崩すと、大気圏突入ができなくなるぞっ!」
小竜姫は西条の呼びかけを無視した。
「カオス教の動きを封じる作戦を、こんなところで挫折させるわけにはいかない!」
小竜姫は、ジブロー侵攻のMS隊の先導者の役を負わされていた。
その気負いが、まだ戦いにもならないうちに隊がメチャメチャにされてしまうという不安が、小竜姫に単独行動をとらせたのである。
もうひとつ、理由があった。
もとカオス教という負い目である。
「小竜姫中尉が動いたですって!?やめさせなさいっ!横島機に行かせなさいっ!西条大尉!」
「了解!」
美神の声がノイズの中にかすかに聞こえた。
「・・・・・機動力はフライングアーマーを使うMK-Uの方があるわ!中尉はジブローで活躍してもらうために、余力を残しておく必要があります!」
ノイズの中に聞こえる美神の指揮を、横島はまちがいない判断だと思った。
「了解っス!」
横島の乗ったMK-Uは、フライングアーマーを抱くようにしていた。
そのテールノズルが爆発的に輝いて、横島機は百八十度の反転をした。
横島の目の前の地球が、パッと黒の宇宙に変わった。
「小竜姫中尉!前部でMS隊の指揮をとってください!」
叫びはしたもののヒャクメは、美神を仰ぎ見た。
「各艦艇のMSの射出は中止させないでっ!」
メッソーラは減速して、編隊を組もうとするMS隊に接近して、確実にライフルを射ちこんで、数機のMSを光の球の中に閉じ込めていった。
その閃光を背に受けたメッソーラの前に、小竜姫のディアスが急速に接近した。
「小竜姫様!危険だ!あれは、ただのMSじゃないっ!危険だっ!」
横島に声が小竜姫のヘルメットにも伝わるのだが、形の見えた敵のマシーンを前にしては小竜姫には聞こえる言葉ではなかった。

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