ザ・グレート・展開予測ショー

姫君と世話係(絶チル)


投稿者名:イオ
投稿日時:(06/ 6/25)

あぁ、わかった。俺が悪かった。
少し風邪引いたぐらいでお前の飯を作らなくて本当にすまない。
帰ったらお前の大好きな肉料理作ってやるから
だから…

「早く人間にもどれぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」

宿木明の叫びが、空しく山中で響いた。

***

「今、なんか変な叫び声聞こえなかった?」
廃校舎入り口で澪は首を傾げる。
『獣か何かじゃないか?』
コレミツはそうテレパスで彼女に伝える。
両手にはカップラーメンの入ったダンボールを抱えていた。
三食カップラーメンはさすがに体に悪いと彼もわかっているのだが澪はカップラーメンしか食べない。
野菜も食べるように言うとすぐにむくれてしまうので手を焼いているのだ。
「まぁ、いいや、どんな奴が来ても叩き潰すだけだもん。コレミツ、早くお昼にしよう」
昼飯と言ってもお湯を沸かすだけ、コレミツも彼女に付き合ってカップラーメンを食べているが…
(間違いなく俺は早死にするな…)
そろそろ彼女の服も洗ってやりたいのだが女の子というのは扱いが難しい。
彼女が洗うとなかなか上手に洗えないし、それゆえ洗わない。
(少々不経済だが新しい下着を買うか…)
…誰が?
自分が買いに行くと間違いなく通報されそうだ。かと行って彼女は一人では行動したがらないし…
そんなふうに悩んでいたのが悪かった。
「コレミツ!」
次の瞬間にはカップラーメンのケースが巨大な狼に奪われていた。
完全に気配を断ち、獲物をすばやく奪う。まさに獣。
『なんだ!?』
「なんだじゃないわよ!今日のご飯!取り返すわよ!」
やけに澪が怒っている。
あのカップラーメンが期間限定個数限定のカニキングカード付きカニヌードルだったからだろうか?
(だとしたら…この子もまだ子供だな…)
「何笑ってるの!行くわよ!」
自分一人だけテレポートで行かないところも、子供らしい。

***

ダンボールを噛み千切り、無理矢理開封する。
(ごはんごはんごっはっん!!)
そして一つのカップラーメンに喰らい付く
噛み砕き、噛み締めてようやく初音は思い出す。

カップラーメンにはお湯が必要だと!!!!

発泡スチロールの器からでるのは硬い乾燥麺だけで具などはビニールでパッケージしてある。
おいしそうなカニの身が見えるが中々噛み千切れない。
人間に戻ってしまえばいいのだが今の初音は完全な獣なのでそんな事は思いつかない。
唸り声があげてカップラーメンを威嚇するがカップラーメンは無言だ。
しょうがないので乾燥麺だけをバリバリ食べだした。

***

「狼ってカップラーメン食べるの?」
『初耳だ』
その様子をこっそり見ていた二人は少々唖然としていた。
『澪、ここはあきらめて…』
「嫌ッ!だって限定ものよ!次はオークションで倍額出さなきゃ手に入んないんだから!」
どこぞのレベル7のサイコキノと似たようなことを言う。
『分かった分かった…やはり目当てはカードか?』
「そんなわけ無いじゃない!子供扱いしないでよ!カードなんか興味ないわよ!」
といいつつ顔が真っ赤だ。図星らしい。
(しかたがない、武器が無いのが少々心細いが…)
「大丈夫よ」
まるで心を読んだかのように澪が言う。
「私達が負けるわけないじゃない」
当然のように言い放つ少女。いや、彼女にとっては当然なのだろう。
『…そうだな』
コレミツはそう伝えると彼女の昼飯のために狼に立ち向かおうとした。


「この馬鹿犬がぁぁぁぁぁっ!!!」


突如現れた自転車が狼に体当たりする。
ちょっとあまりのことにコレミツと澪は硬直した。
「初音!いい加減目を覚ませ!こんな山奥まで来やがって!」
ゼェゼェと肩で息をする少年は鞄から肉を取り出した。
(ごはんっ!!!)
「あぁ!そうだごはんだ!そりゃっ!」
少年は肉を空高く放り投げた、その肉をとんびが咥える。
(ごはーん!)
「初音!メシはそれだ!捕まえろ!」
そのとんびは明が意識を乗っ取っているもので、このまま狼化した初音を連れて行くのに使う。

早い話が馬の前ににんじんをぶら下げたのだと考えていただきたい。

狼化した初音は取れそうで取れないとんびの咥えた肉を求めて走り出した。
「くっそ…病み上がりの人間に自転車でここまで走らせるなよな…」
明は力なく自転車をこぎ出した…
(間違いなく俺は早死にするな…)
などとどこぞの元傭兵のテレパスのような事を考えながら。

少年も狼もいなくなって…
「なっ、なんだったの今の」
『わからん…まぁいい、カップラーメンを回収しよう』
とはいえ、牙と爪でほとんどのカップラーメンの容器はぼろぼろだ。
『これにお湯入れたら漏れるな…』
「器を変えればいいだけじゃないの。幸いほとんど中身は無事だし」
カップラーメンについているカードもしっかり集めている。
『澪、ここにもカードあるぞ』
「べっ!別にカード狙いじゃないってば!」
『すごいな、最近のカードはキラキラしてる』
「えっ!何!見せて見せて!ちょーだい!コレミツそれちょーだい!」

まだまだ子供だな。
だが、彼女に子供らしい感情が芽生えていることは喜ぶべき事なのかもしれない。
そう思ってコレミツは小さなお姫様にレアカードを渡すのだった。

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