ザ・グレート・展開予測ショー

出発


投稿者名:NEWTYPE[改]
投稿日時:(00/ 7/ 8)

「なんだって!?今何て言ったおキヌちゃん!?」
横島はおキヌを連れてアーギャマのクルーに紹介した後、おキヌに告げられた一言に顔を豹変させていた。
「で・・・・ですから・・・・・私も・・・・パイロットに・・・その・・・・志願したんです・・・・・」
おキヌが俯いたまま小さく答える。
「何でだよ!戦争になるらしいんだぞ!死ぬかもしれないんだぞ!」
「そんなこと分かってます!!」
「だ・・・だったら何で・・・・・?」
「私・・・・・横島さんと居たいんです。もう・・・・・一人は嫌です・・・・・・」
俯いたままのおキヌの肩が小刻みに震えているのが見て取れる。
「・・・・・・そうか・・・・・そう・・・・だよな。俺もおキヌちゃんも身寄りがいなくなっちまったもんな・・・・・。でも・・・・・もしおキヌちゃんにまでなんかあったら俺・・・・・」
「私・・・・・横島さんと一緒だったらいつ死んでも後悔しませんから。だから私を守ってください、ね、横島さん。」
おキヌが横島の手を握りながら優しい表情を横島に向けた。
「・・・・・・ああ。でも、絶対無理しないって約束してくれ。もし、おキヌちゃんに死なれたら、俺も嫌だし、あの世のおふくろにもどやされそうだからな。」
「分かってます!私、おばさまの仇も討ちたいんです。おばさまには、いっぱい可愛がってもらったから。」
おキヌは軽く横島に笑いかけると、他のパイロット候補生と共に司令室の方へ流れていった。
(おキヌちゃん・・・・無理するなよ)
横島は、おキヌの後姿が見えなくなるのを確認すると、フライングアーマーの装着確認のため一度デッキへ戻った。


ムーンライトから、二日の間に八隻の戦艦が、順次発進していった。
それらの艦艇は、サイド4(地球周辺のコロニーの一つ)に集結をして地球軌道に向かうのである。
サイド4近くは、かつてのコロニー郡の残骸が浮遊している空域である。
航行する艦にとっては、危険な空域であった。
そのために、ICPOの艦艇はサイド4を集結場所に選んだのである。
が、アーギャマは二度目の突入であった。
その『魔の空域』に入ってゆく時、アーギャマの艦内には、総員見張れの号令がかかる。
その命令がかかると、誰彼となくのノーマルスーツを着込んで監視に立つのである。
全員が艦の前方に立って、流れてくるコロニーの残骸を監視して、被害を最小のものにするのだ。
カンカン・・・・。
それでも、時には小石が艦体に当たって、その音が艦内に響くことがあった。
その魔の空域を越すと先発していた補給艦艇が見えてくる。
お互いに発光信号を交わして、接触するのである。
「食料を運び込め。いらない備品は、すべて輸送船団に引き渡せ!」
艦と艦の間には、ワイヤーが張られてランチの行き来が始まった。
この空域に来る間にも、艦艇は地球侵攻作戦の準備に忙殺されていたのである。
その作業で使っていた備品類を戻し、出来るだけ艦を身軽にするのだ。
勿論、一般将兵には、侵攻ポイントは知らされていなかった。
しかし、バリュートの整備を見れば地球に侵攻するということはわかるし、その侵攻作戦を勝ちあるものにする拠点といえば、ジブローしかないということも想像がついた。
そして、ICPOの艦艇が『魔の空域』に滞空すること、二日。
全ての準備が完了した所で、アーギャマを旗艦とした艦隊が地球に向けて発進した。
それぞれの艦の船首には、へんぽんとICPOの旗がはためき、ICPOの艦隊であることを誇示していたが、果たしてこの心意気が地球の人々に伝わるのだろうか?
「艦隊位置、確認!前方障害物、注意しつつ全速前進をかける!」
美神艦長の号令に、操舵手が答える。
「了解っ!全速前進!」
「全センサー、オートテェック!」
「進路!クリアー!」
ヒャクメの呼称を聞きながら、美神は前方に青く見える地球を見た。
(公彦さん、お願い・・・。ひのめを連れてジブローから逃げて・・・・)
「全速前進!」
美神の号令一下、アーギャマのテールノズルが長い尾を引いた。
それに倣って、各艦のテールノズルも長い尾を引き、残された四隻の補給艦が、武運を、という発光信号を点滅させて見送った。


『魔の空域』に近い別の空域では、アレキサンドリャーと二隻の艦が、かなり高速で地球に向かっていた。
艦同士の間でもランチが行きかい、この艦隊も多忙であることが分かる。
その先頭の艦、アレキサンドリャーのカタパルトデッキの上には、一機のMS、マラッサが滑り出していた。
胸と背中の部分には、だんごのようにカプセルを装備しているので、丸いシルエットがよりポッテリとしたものに見えた。
アレキサンドリャーが、急遽受領したMSである。
そのマラッサのコックピットに雪之丞がいた。
「バリュートをやるぞ!」
アレキサンドリャーのMSデッキには、ザックに混じってもう一機のマラッサがある。
そのコックピットの開かれたハッチからは、タイガーの姿が見えた。
「やってくんサイ!」
タイガーは、モニター上に図示されているコンピューターグラフィックスと雪之丞のマラッサの映像をダブらせた。
「タイガー!いいな!」
雪之丞のマラッサが、背中の補助バーニアに取り付けられたカプセルの外殻を火薬で放出した。
カプセルの中から巨大な風船状のものがふくらみマラッサの機体を包む。
それをバリュートと言う。
そのバリュートの中心からバーニアを噴かしその気流でバリュートを覆うことによって、大気圏突入時のMSの摩擦熱に対してのバリアーとして、それでMSの機体を保護するのである。
タイガーは、雪之丞のバリュートをモニター状のコンピュータグラフィックスの映像に重ねて展開の状態を確認する。
「良好ジャッ!」
「良しっ!」
バリュートのカプセルが、再び火薬でマラッサの機体から切り離される。
「これで大気圏突入は大丈夫というわけだ。」
前方のハッチが開いて、雪之丞が身を乗り出して地球の方向に振り向いた。
「バリュートのカプセル取りつけ、急げっ!」
雪之丞のマラッサに流れてゆくメカニックマンたちを見ながら、タイガーはコックピットから立ち上がって呟いた。
「あとは度胸の問題ですノー・・・・・」
前方に見える地球は、静止衛星軌道上の倍の距離に見えるところまで近づいていた。
しかし、大気圏突入などを考える人間の行為がどのようなものか想像もつかない地球は、ポッカリと黒い幕の手前に浮いているだけだった。


「よーし!横島君、良好っすよ!」
MK-Uの両腕に支えられたフライングアーマーの翼が左右に開いたのを見て、浪人が大きな声を上げた。
MK-Uのコックピットから横島が流れ出て、フライングアーマーの前に降り立った。
「本当にこのホバーでMK-Uの機体を支えられるんスか?」
「計算上はできるっす!」
浪人は気軽に答えた。
「計算上ってそんな・・・・・」
「頑張るっす!後で小竜姫中尉の生写真あげるっすから!」
「マ、マジッスか!!ってあんたそりゃ犯罪だろ!でもほしい!!っつうかよこせっ!」
横島が血走った眼で浪人に掴みかかる。
「分かったっす、分かったっす。地球に降りて任務を果たして再び戻ってきた時にやっるすから。」
「んなに〜!!それじゃー遅せー!!俺は小竜姫様の生写真をコックピットに飾って大気圏突入時のお守りにするんや〜!!」
「とにかく今はだめっす。無事戻ってきたら・・・・・三枚にサービスするっすから。」
「くっ・・・・・(この眼鏡、頑固そうだな・・・・しゃーない。後にするか・・・)約束っスよ!!」
「わかってるっす。とりあえず作戦まで休んでいいっすよ!」
「分かりました。」
横島はプレデッキの方に流れていった。
浪人はその横島の後姿を見送りながら小さく呟いた。
「そんなもんあるわけないじゃないっすか。・・・・・あればほしいっすけど。とにかく頑張るっすよ、横島君!」

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