ザ・グレート・展開予測ショー

栄光の…


投稿者名:aki
投稿日時:(06/ 6/13)

栄光の手。それはイメージ通りの形になる、優れた霊能である。
ある時は手の延長として。ある時は剣として。

その形は自由自在。だが形だけではない。
硬度、温度。あるいは、粘性でさえも…

その動きは最早、横島の、いや人間の指の可動域から大きく外れていた。
指の延長などでは決してありえない動き。一本一本が別の生き物の様だった。

一本は小山からささやかな密林に分け入り、一本は別の山の頂を目指し
また一本は背後を探り、別の一本は、囀り声を塞ぐように蠕く。


「す、すごい…」


見た目には嫌悪感を催しかねないその光景。それは非常に有効であった。


「どう、おキヌちゃん。なかなかいいだろ?」


「はい…すごいです…」














「こんな山奥なのに、簡単に広域探査ができるんですね。ほんとにすごいです」

「そ、そう?おキヌちゃんに褒められると照れるなー」

「だって、こんな森じゃ雑霊が多すぎて見鬼君も使えませんし。
私の笛にしても、あんまり広範囲には使えないですし」

山深い森。以前から妖魔の住まう森との噂があったそこに開発の手が入る事になり
妖魔調伏の依頼が美神除霊事務所に舞い込んだ。

所長の美神を始めとした他のメンバーは別件の依頼の為に参加できず、今回は横島とおキヌの
2名のみでの仕事となった。

無論、絶大な信頼が根本にあるからこその別行動である。
横島は、その信頼を受けるに値するだけの能力を発揮していた。

「俺って時々すげえと思うよ。時々、小鳥とか関係無いのも引っ掛かるけど
悪霊も妖怪も、こいつからは逃げられねえ」

横島にしては珍しく、その台詞は自信に溢れていた。
おキヌに褒められた事も無縁ではないが、話しながらも自信を持つに相応しい仕事を
熟していた事が大きい。
栄光の手は山の稜線にそって森を進み、目指す妖魔を着実に追い詰めていたのだ。

「…小鳥は放してあげて下さいね」

「そりゃもちろん。感覚でわかるからね…っと。来たっ」

栄光の手の本体、手甲部分にある宝玉が強く輝く。
その時、遠くで妖魔の断末魔が響いた。

「えっ!もう倒しちゃったんですか?」

「ああ、探すだけじゃ能がないだろ?巻き付けた後…まあ、細かく説明すると
グロいからやめておくよ」

栄光の手・触手バージョン。
横島らしい発想でありながらも、かつての横島からは想像できない程の有能さを
存分に発揮し、速やかに仕事を終えたのだった。




「どんな妖魔だったんですか?」

「ん〜、多分動物霊が妖怪化したやつだな。猿みたいな感じだった」

「あ、あと、いつの間にこんなの練習してたんですか?」

「あー、シロが修行に付き合えとうるさいからさ。
素早いヤツでも楽に捕まえて、ついでに攻撃もできるようなのを
考えてたら、いつの間にか、ね」

より楽な方向で、と考えた割に、使える能力である。

(これもまた横島さんらしいのかしら)

そう思われても、仕方がないだろう。

あの時のシロの顔ったらもー。と笑う横島を余所に、おキヌは物思いに耽っていた。




「それにしても、予定よりずいぶんと早く終わったな」

「そうですね。せっかくだから、観光して行きませんか?」

「観光ったって、このあたりって何も無いんじゃ?」

「そんなことないですよ。ほら」

と、おキヌが観光ガイドブックを取り出す。
付箋紙が貼ってある以上、事前に調べていたのは明白だ。

「どれどれ…へえ、露天風呂か。泊まり客以外でも使えるんだな」

「そうなんですよ。自然がいっぱいですし、こういう所の温泉なら、きっと気持ちいいですよ」

「露天風呂かあ。混浴だったりなんかしてー!」

「ふふ、残念でした。それは無いみたいですよ」

「ちぇー」




しかし横島は気付かなかった。

ガイドブックには薄い蛍光ペンでマークした箇所があった事に。
そこには【家族風呂】と記されていた事に。




栄光の手・触手バージョン。
今後も、あらゆる局面において、威力を発揮する事は間違いない。
横島に対する、仲間達からの期待も高まっていく事が予想されるが
それだけの魅力を放つ能力であると言えよう。




(もちろん、アレ、私にも使ってくれますよね?)

…誰かがそう考えたとしても、不思議ではない程に。

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