ザ・グレート・展開予測ショー

Mの愛劇(後編)


投稿者名:M2O
投稿日時:(06/ 6/12)

Side横島

「はぁ…」
横島忠夫は何度目かのため息をついていた。

事務所の主に仮眠に使っているソファーの上で天井を見上げる。
原因は二週間前、妻に無理やり迫った挙句に泣かせてしまったことだ。

初夜での行為でも妻を泣かせてしまった。
今でも思い出す…
経験が無いための痛みによるものとはいえ、あの美神令子が涙を流した。
その事実は横島忠夫にとって忘れえぬ記憶となった。

その日から二度と同じ過ちを繰り返さぬように妻には内緒で修業を開始した。
大量のその手の教本から始まり、セラピストの著書、技術読本。
果てはカーマスートラ、房中陰陽術の文献、立川流の書物まで読破し、
技術を研鑽し己の力量を高めていった。

修業の甲斐あって日に日に肌を重ねるにつれてより行為に没頭した。
二人の相性もあったと思う。何しろ二人の相性は抜群なのだ。
例えるなら刀と鞘。一ミクロンの誤差も無い歯車。片翼の鳥。連理の契。
完璧だった。覚えた技術が吸い込まれるように行為に反映される。
横島忠夫は美神令子の形に、美神令子は横島忠夫の形に。
ぴったりと収まるように作られているがごとく二人の相性は最高だった。
仕事が無ければ一日中一緒にいる。夜はもちろん、食事の前、食事の後。
仕事があったとしても夜は離してあげなかった。嫌がるそぶりを見せても実力で黙らせた

TPOをわきまえずに発情したときは躾と言わんばかりの折檻を受けたが。
それでも不都合が無い限り、彼女は受け入れ応えてくれた。
急速に高みに上って行く、そんな蜜で煮られている日々だった。

夜の行為が高みに達するにつれて、妻は美しくなった。
結婚前もその美貌や色気は華やかで光を浴びて輝くようだった。
花に例えるならバラ、品種はパレ、ロブロイ、真紅の艶然たるバラだろうか。
だがバラはことのほか繊細だ。棘もある。大事に扱わなければ美しく咲いてくれない。
まさに結婚前の妻を例えるのにぴったりだと思う。

だが、急に美貌が増したからと言って、別段服装が変わったという訳ではない。
むしろ地味になったと言っていい。
挑発的な服装は成りを潜め、シックな衣装を好むようになった。
自分としては妻の肌を他人に見られるのは不本意だし、
自分を気にしてくれているのなら嬉しいと思う。
だが、今の妻を見れば見るほど結婚前の妻はまだ咲きかけだったのだと思う。

最近の妻の仕草を思い出しても胸が高鳴る。惚気と言ってしまえばそれまでだが。
今までの彼女の美しさはあくまで「女性」としての美しさだったと痛感する。
だが、最近の彼女はシックな衣装から香り立つような「女」の色気が立ち上っている。
バラは蕾から香りがあるが…華が開けば本来の香りが花びらが、広がる。
羽化登仙。そんな言葉がぴったりだ。彼女は今咲き誇ろうとしているのだ。
美しい彼女が自分の妻だという事にこの上ない幸せを覚える。

「はぁ…」
何度目かのため息を吐き出す。

彼女の泣き顔を思い出す。
思えば図に乗っていたのかもしれない。
毎日のように求めに応じてくれたとは言え、少しでも彼女の気持ちを考えていただろうか

そんな事だから、妻の気持ちも考えずに襲ってしまうことになったのだ。
だが、あのときの彼女は今まで見たどんな女性より美しく見えた。
美の女神だって彼女の前では霞まざるを得まい。

だが、それと自分に負けることは別だ。
自虐と自戒と後悔が頭の中で渦巻く。
妻には誠心誠意謝った。妻は許してくれたが、家にいてもぎこちない対応しかできない。

自戒と謝罪と現実逃避を含めて決算期の書類の作成で泊り込むことにした。
書類仕事はかつて勉強していた財務の知識が大いに役に立った。
この分だと後は二人で最終確認をするだけだろう。期限にも十分に間に合う。
また、半年間でたまっていた書類仕事も大方片付けることができた。
すでに泊り込んで二週間経っている。もう、事務所に止まりこむ理由は無い。

書類整理の間も彼女を泣かせてしまった事が頭から離れなかった。
会いたい。彼女の温もりが恋しい。彼女の声が聞きたい。
だが・・・怖い。自分は彼女を前にして同じ様に振舞えるだろうか。

「ああぁ〜〜〜もう!畜生!!仕事はもう終わった!寝る!!」

不貞寝を決め込んで毛布をかぶると疲れか睡魔は直ぐに訪れた。



「旦那様。起きてください。」
 甘い囁きが耳を撫でた。

「んあ?・・・・」

ソファーから身を起こすと朝食だろうか、コンソメスープの良い香りがする。
応接用のテーブルにはトースト、オムレツ、サラダ、スープが並んでいたような気がする。
何故気がするというと、一瞬しか見ていないからだ。


横島忠夫の目はソファーの前、2m。縦180cm、横1mの空間に釘付けなっていた。


亜麻色の髪には純白のヘッドドレス。
首にはレースのチョーカー。
胸元は微妙な大きさで開いて豊かな谷間を強調している。
基調となる色はあくまで純白と漆黒。
胸元は白いレースで覆われている。
指から肘はレースをあしらった純白の手袋に包まれている。
お腹とスカートを覆うエプロンは純白でレースをあしらった物。
その下のワンピースは黒。
スカートは極めて短く太ももの半分までを隠すのみ。
太もも上部は白のガーターベルト。白と肌色のコントラストがまぶしい。
ギリギリ太ももが見えるか見えないかの位置で固定されたスカートから出る足には
白のガーターストッキング。
靴は黒いハイヒール。



メイドさんだった。どこからどう見てもメイドサーヴァンドだった。それもえっち系の。
そのメイドたんが真っ赤になりながら言うのだ。

「旦那様。お食事が出来ております。召し上がってください。」

目の前のメイドたんが、自分が腕の良い職人に妻の身体データを渡して作らせた、
超絶に金のかかった、至高のメイド服を着ているのだと理解するのに十五秒の時が必要だった。
結婚後、すぐに着せようとしてにべもなく断られ、取り上げられた代物だ。


その後、十五秒の間に横島忠夫の脳内ではこのような葛藤が有った。


ちびるしおら(横島の理性)「だめよ。横島!いくら妻だって、メイドの格好をしてたっていきなり襲いかかるのはダメ!!」

ちびよこしま(横島の煩悩)「へっお前は見えてるだろ?目が潤んで、真っ赤になって、女の匂いを出しているテメエの女房をよ。」

ちびるしおら(横島の理性)「何を言ってるの!この前の涙を忘れたの?」

ちびよこしま(横島の煩悩)「あれが堪えてるようなら、こんな挑発的な格好をして旦那の前に来るかぁ?」

ちびるしおら(横島の理性)「それはそうだけど・・・・」

ちびよこしま(横島の煩悩)「大体、こんないい女が此処までしてくれてるんだ。据え膳食わねば男の恥。レッツゴー本体!!」

ちびるしおら(横島の理性)「ダメだって言ってるでしょ!!」

ちびよこしま(横島の煩悩)「この煩いのは俺が黙らせるからさ。遠慮無く突っ走れ!!!!」

ちびるしおら(横島の理性)「ちょっとっ・・や・・だめだって・・・まって・・」

ちびよこしま(横島の煩悩)「じゃあ本体健闘を祈る!!さぁ〜脱ごうね〜。」


以上、脳内葛藤終了。

結論:やってしまえ。


「令子おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」

「ちょっとご飯が・・・んっ・・やっ・・あっ・・・」




この後、様々な衣装が夫妻の寝室のクローゼットの奥深くに収納されることになったのはまた別の話。


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初めまして、M2Oと申します。
GTYの数々のSSを見て触発され書いてしまいました。
ちょっとえっちですが、18禁では無いと思っています。
もし削除の対象になるようでしたら管理人様、削除よろしくお願いします。

もし、ご縁と煩悩の神様が降りてきたらまたお会いしましょう。
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