ザ・グレート・展開予測ショー


投稿者名:天馬
投稿日時:(06/ 6/ 8)

 自分というものがわからない。
 けれど貴方は微笑む。

 その微笑を見るだけで私は満たされて。
 そんな自分が、不思議で仕方がない。

 どうして?
 いったい、どうして?

 貴方は誰なの?



















「大丈夫ですかっ!? おケガは!? 私ったらドジで…!」


 また、この夢だ。

 最近私はよくこの夢を見る。
 夢のはずなのに、やたらとリアリティがあって。
 そして夢の始まりはいつもここ。



「今『えいっ』と言わんかったか、コラ―――ッ!?」


 夢の中の私は、なんでかわからないけどこの人を最初殺そうとしていた。
 なんとなく、幸薄そうっていうか。
 この人なら死んでくれそうな気がするって、そんな物騒なことを思いつつ。

 夢の中の私は、なぜか私なのに、私じゃないような感じ。
 不思議なことに、この夢の中で私は自分自身の主観しか感じられない。
 勿論第三者的というか、客観的というか。そういう部分もあるのだけれど。
 自分という視点しか、存在してない。





「おキヌちゃん、いいよ。部屋掃除くらい自分でできるからー!!
 見られたないモンだってあるんやああぁぁぁ!!!!」


 夢の中ではいつも場面が唐突に変わる。
 この前見た時は…なんだったっけ。
 そうそう、なんだか包丁を研いでいた様な気がする。
 そんで、この絶叫してる男の人が、引きつった笑顔で自分を見てたのも覚えてる。




「おキヌちゃん、味見できないのに料理が上手だね〜」


 そして、この夢の中で必ずこの人は出てくる。
 そしてとっても良い笑顔で私に笑いかけてくるのだ。

 かっこいいかかっこ悪いか。それで言っちゃえばかっこいいと思う。
 けど、私がテレビで見る芸能人のようなかっこよさはない。つまり美男子じゃない。
 けど、この人の顔を見るたびに。

 私の心はぽかぽかして。
 言いようもないほど苦しくて。


 そして愛しさを感じる。




 ―――――おキヌちゃん!
 ―――――おキヌちゃん♪
 ―――――おキヌちゃん…



 どうして貴方はそんなに私を呼ぶの?
 どうして私は、貴方をそんなに愛しく感じるの?



















「生きてくれ、おキヌちゃん!!」


 そして夢の終わりはいつもこの場面。
 彼が、泣きながら何かを突き刺している場面。
 そして、その場面でやっと私は口を開くのだ。


「是対思い出しますから――!! 忘れても二人のこと、すぐに!!!」


 名前は最後まで言わないんだけどね。

 あぁ、そろそろ夢も終わりかなぁ?

















『どうしたんです、――さん? 元気出してください!』
「お…おキヌちゃん…!? あれ!? 生き返ってもう俺のことは…」


 あれ…今日は続きがある?
 また、この男の人? やだ…ランニングにトランクス姿なんて。


『心はいつも一緒ですよ。私たち三人…たとえ離れ離れでも…!』
「三人か…。前は良かったよなー。今じゃ俺も暫くはGSは休業でさー」
『どうして?』


 男の人は、すごく苦しそうな顔をして私に話しかける。
 私はその表情を見ると胸が苦しくて、どうしても立ち直らせたくて。
 懐かしさとともに話しかけていた。
 そして一方で、私の心は何かを訴えかけてる。
 心は一緒? 三人? 前は良かった?

 
「色々あって俺はジャマなんだよ。俺がいちゃ――さんを守れないって…」
『何言ってるんです! ――さんは――さんが守らなきゃ!』


 私は目の前の男の人の名前を言ってる。誰かの名前を言っている。
 けれどその部分が良く聞き取れない。思い出せない。
 いったい何? 誰の名前を言っているの?
 そしてあなたは何なの?


「いや、しかし俺の実力じゃ…」
『実力なんかつければいいんです! 大切なのは私たち、仲間だってことでしょう?』


 ―――――仲間?
 そう…。
 私たちは仲間だった…。この人と、もう一人いたけど私たちは仲間だった。
 少しずつ、少しずつ自分の中で何かが解けてきてるのがわかる。
 


「おキヌちゃん……!」
『生きてるってすばらしいです! どんなことでもきっとできるんですもの! だからがんばりましょう!』


 そう、生きてるってきっとなんでもできる。
 だって私…私…なんだっけ? 大事な何かを思い出せそうな。


『そうすれば…また…私たち一緒に…』


 また一緒。
 あああぁ、何かを思い出せる。
 思い出したらきっと私はこの人たちと一緒になる。


「おキヌちゃん!? ちょいまち!!」
「まだ行かないで!!」


 手を伸ばしてきた彼。
 あ、だめだめ。
 私が消えていく。
 お願いもう少しなの、もう少しで何か思い出しそうなの。

 まって消えないで!
 私の手をつかんでお願い!!
 お願い、よこし―――――




















 不意に目が覚めた。
 時計を見ると、まだまだ日の出には遠いみたい。


「なんだか不思議な夢を見たような気がする」


 最近なんだか夜中にふと起きちゃうことがあるんだよね。
 どうしてかなぁ? 何か悪い夢でも見たのかな?


「何か…大事な何かを忘れたような気がする…?」


 うーん、なんだったのかなぁ?
 でも夢ってそうよね。起きた時には、すっかり忘れてるものだもんね。
 なんていうか、指から水がこぼれてしまうような感じ。
 でも雫が掌に残るように、大事なことなら思い出すよね。
 こんなこと、誰かが言ってたような気がする…。
 と、布団をぼぉっと見てたらちょっと気になるものが目に入った。


「アレ? これは…」


 やだ、お布団に染みができてる。
 明日は干さないとだめかなぁ? そう思ってると染みがどんどん増えてる。


「これは、涙…? 私、泣いてるの?」


 染みだと思ったものは、私の涙だった。
 悲しくないのに。あふれ出てきてとまらないソレは、布団の染みをどんどん増やしてゆく。


「アレ? アレ?」


 理由もなく流れる涙に、私は当惑していた。
 そしてこの胸に去来する、不思議なぬくもりと、そして切なさを抱いて。
 私。
 私は…。
 いったいどうして。






















































 そして、場所は巡り。
 同日同時、某完全無欠の激安ボロアパートにおいて、一人の男が目を覚ました。


「雪之丞……」





 その瞳に決意を秘めて。






「俺も…一緒に行く!」





 そして物語は加速する。

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