ザ・グレート・展開予測ショー

42話のそのあとに(チルドレン)


投稿者名:MAGIふぁ
投稿日時:(06/ 6/ 5)

「なぁ、薫」
「ん〜? なに?」

 夕食後の、お茶やコーヒーでまったりと過ごすひと時。
 皆本家の食卓では、そんな穏やかなハズのひと時に、主が口元を引きつらせ、若干顔を青ざめさせていた。

「まさか…これは…」
「ん〜? だから、な〜に?」

 その原因は、目の前の少女が持ち出してきた『黄色いパンケーキ』と、ゴミ箱から顔をのぞかせている、扇風機のファンによく似たマークの付いた金属の筒。
 そして、なぁなぁ、どんな味? どんな味? と好奇心で瞳をキラキラさせている、居候の3人の少女たち。その一見純真な瞳にうろたえつつ、皆本は自分に言い聞かせる。

 まさかな…アレはバベルを通じて政府に渡したはずだ…うん、だからここにあるはずが…
 
 まぁ実際は。
 仮に本物だったとしても、そのまま食べても人体に影響はない、らしいのだが、やはり自分か食べてみようとは思わない。
 そんな小悪魔な考えの元に差し出された、立派なネオ・クリアー爆弾だったりするのですが。

「まさか、あたしの酒、もといあたしの料理が食えないなんて言わね〜よな?」
「うわ〜。女の子にそんな事したらサイテーやで、皆本はん」
「………」

 たちの悪い酔っ払いのような事を言う薫と、横目で軽く冷たい視線を送る葵。そして何より、無言で「解ってるわよね?」と右手をかざして微笑む紫穂。
 皆本には、完食するという選択肢しか存在していなかった。

「お、おのれ……兵部! あいつがこんなもん贈りつけてこなければっ! あいつ、何を考えてるんだ!?」

 最初の一口の前に、現実逃避気味にののしる皆本。



 一方、その頃兵部は。



「はいはい、急いで急いで〜! もうすぐガサイレ来ちゃうから、その前に引っ越すよ〜!」

 自分の組織のテレポーターたちを活用した、アジトの引越しの指揮を取っていた。
 数人の男女がピストン輸送で、機材や家具を少し離れたところのトラックへと運びこんでゆく。

「まったく、なんでこんなことになったかなー」
(少佐がネオ・クリアー爆弾を、部下任せで適当に送ったせいで、サイコメトリーでここの場所がバレたからです!)

 なにやらすっかりツッコミ役が板についてしまった、お付きのコレミツさんがテレパシーでツッコミを入れる。
 しかし兵部も伊達に長く生きているわけではなく、自分の責任など軽く棚に放り投げてトボケ通す。

「いや〜、困ったもんだね、ホント」
(…………全くですね)

 誰が困った者なのかは、言うまでもない。コレミツさんのそのボヤキには、周りで働くテレポーターの皆さんも心の中で同意したのだが……残念ながら、受信能力を失った彼には届かなかった。



 そしてその夜。
 「え〜、いいじゃん、一緒に入ろうよ〜」という薫のサイコキノ使用のお誘いに、葵のテレポートの協力のもと、皆本さんが必死で抵抗していた頃のこと。



 PANPAN!!TA−−−NN!!
 TOPARATATATATATA!!

 静かに鳴り響く、サイレンサーから漏れ出た銃声と、軽快なサブマシンガンの銃声。
 そして何らかの超能力による反撃の音。
 それらの作り出す破壊音や悲鳴。
 様々な音の織り成す、不協和音のまっただ中で。兵部少佐は、ただため息をついていた。

「まったく。みんな心が狭いなあ」
(いや、当たり前だと思いますが)

 その黒のスーツに包まれた巨体で、銃の反動を殺した正確な射撃を続けながら、律儀にツッコむコレミツ。

「やっぱり、取引に応じなくなったからって、テロリストたちの情報を各国政府に売りさばいたせいかな?」
(いや、当たり前だと思うんですが)

 この人に付いてきて、良かったんだろうか…
 コレミツさんがほんのちょっぴり、人生設計を考え直したのは彼だけの秘密だ。

「せっかく、アジトや構成員、連絡先まで詳細に教えてあげたのになあ。政府とガチンコで戦えるようにしてあげたっていうのに、彼らは何が不満なんだろうね?」
(…だから、当たり前だっつってんでしょうが、この確信犯ー!!)



 がんばれコレミツさん。ガタイが良くて、微妙に使えないテレパスという不吉な特徴持ってるけど、がんばれっ!
 と、エールを送ったところで、その翌朝。


『パンドラと名乗る、謎の組織がテロ撲滅に向け、多大な貢献を――』

 朝からしっかりとした朝食をとる、皆本家の食卓で。テレビから流れるニュースに、皆本は警戒心をあらわに、つぶやいた。

「あいつ、何を考えているんだ?」

 これは何かの布石なのか? しかし、一体何になるというんだ? というか、パンドラも分類上はテロ組織なんじゃないのか?

「ふ〜ん、京介もやるじゃん」
「ま、ええ事だし、ええんとちゃう?」
「……そうね。ま、表向きはね」

 どうやらチルドレンたちの好感度が上がったらしい。
 これが狙いか!? とおののく皆本が、いつものごとくチルドレンのオモチャになったのは…

「あ、皆本さんがあんなヤツにって嫉妬してる」
「うそっ!? 皆本はんフケツーッ! やっぱりウチらをそんな目でー!」
「バッカ、ちげーよ、皆本! そんなんじゃねーよっ!」
「ち、違…!? 僕はただっ! そう、ただ兵部のことが気になっただけで…!」

 お約束と言うやつなんだろう、きっと。

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