ザ・グレート・展開予測ショー

おねがい べいびー


投稿者名:MAGIふぁ
投稿日時:(06/ 5/19)

 とある産婦人科の病院の廊下。そこでベンチに腰掛け、まんじりともせずに何かを待っている男が一人。
 スーツ姿に髪をオールバックで固め、タバコに火をつけずに咥えながら、男は落ち着かない様子で貧乏ゆすりを延々と繰り返していた。

「あ〜〜…まだか…まだなのか〜…」

 あ〜、う〜、と唸りながら待っているのは横島忠夫。つい半年ほど前、美神令子とできちゃった結婚にこぎつけるのに成功した、ある意味勇者。
 そして今日、妻の令子が分娩室に入るのを見届け、それからずっとここで祈りながら待っているのだ。

「神さま……お願いです。どうか、どうか、ほんとーーーーっにお願いですから…」

 横島は祈っていた。
 ただ一心に。
 これから生まれてくる子供のことを。


「どうか、子供の性格が令子に似ませんように…っっ!!」


 ………………………

 ……祈っていた。ようだ。うん。
 まぁ、その内容はさて置いて。
 しかし、その気持ちは解らなくもない。なにせ…

「令子一人でさえ、どんだけ振り回されて、どんだけ苦労しまくった事か……これで性格の似た子供がもう一人増えたら……あああああああ…」

 というわけだ。簡単に、かつ具体的に言うと美神令子×2=折檻その他も×2倍。もしくは自乗。
 そしてその状況をリアルに想像しかけてしまい、廊下の壁に頭を打ち付けて想像を霧散させた時、ふと横島は気付いた。

「あれ? そーいや俺って、どの神様に祈ってたんだ?」

 この世界には神さまが実体をもって存在しており、時折厄介ごとや依頼を持ってきたり、茶シバきに来たりする。
 現に横島も幾らか知り合いがいる。コネは生かしてナンボ。
 横島は、誰に祈ったら願いが叶いそうなのか、真剣にシミュレーションを開始した。

 1 まず一番身近なのは、貧か……でも、あいつ一応福の神のはずなのに、骨の髄から貧乏神だからな〜。却下。
 2 お次はやっぱり小竜姫さまか。ご利益はありそうだし、美人だけど今は関係ないな。それにあの人武神だからなー。この手のことは管轄外っぽい。
 3 サル。…どーだろう? 正直、よく知らんからなー。保留。
 4 ヒャクメ。………ヒャクメじゃなぁ…
 5 その他。韋駄天とか道真とか。コネと言えるほど繋がりがないが…ま、一応祈っとくか。どう考えても、美神さんの遺伝子に勝てそうにないが、枯れ木も山のなんとやらだ。

「アカン……どーにもなりそーにない……」

 そして落ち込んだ横島が、半ばヤケになった頭で考えた。

「よし…こーなったら、もう…」



 で。



「Gya-tei Gya-tei Hara Gya-tei♪ Harasoh Gya-tei Boji Sowaka♪」

 文珠で作り出したらしい、かつての蛇女な宿敵のチチと、かつての恋人の妹のシリと、とある竜神のフトモモに、何故か嫁さんの母親の顔をくっつけた女神像と。
 ハヌマンと韋駄天と貧とジーク、ついでのアシュタロスと、何故かヒャクメも含めて、テキトーに合体事故を起こしたような悪魔(?)像。
 その2つの前で、どこからともなく取り出して着替えた袈裟に身を包み。勇壮なマーチ調にアレンジされた般若心経を口ずさみながら。
 ブレイクダンスを踊り狂いつつも、必死に祈る大バカヤロウの姿が、それから出産が終わるまでの間そこにあったという。

「あ……あのバカは…っ! 病院で、しかもアタシが一大事だって時に、何やってんのよ…!!」
「お、奥さん冷静にっ! 出産! まずは出産を終えないと!!」

 なお。
 彼をシバくために、美神が根性ふりしぼって驚異的なスピードで出産を終えたせいか、結果的に安産だったらしい。


 (そこんところは)めでたしめでたし。


 なお、2人の子供の性格がどうなったのかは……定かではない。

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