ザ・グレート・展開予測ショー

再会


投稿者名:NEWTYPE[改]
投稿日時:(00/ 7/ 4)

「やっぱりあれは美神隊長のテンプテーションだ!」
横島は港までたどり着くと、美神と唐巣らが談笑しているのを確認しつつ、難民の中におキヌがいないか必死で探し始めた。
そう、美神のテンプテーションは、地球に向かわずに、月に脱出してきたのである。
コロニーの難民を同乗させて・・・・・。
「厄珍大佐の粛清が始まったのです。ICPOの協力者と見られる人々は、全て逮捕されました。あのコロニーは、カオス教の軍事基地として民間人も軍需工場に強制的にほうり込まれました。」
美神美智恵の報告に、月のICPOは色めき立った。
「作戦は急ぐべきだ。地球連邦軍の中で何が起こっているか、世界の人々に知らせなければならない。」
その号令の中、横島はようやくおキヌと再会を果たしたのである。
「よくテンプテーションに乗ってくれたな・・・・・」
「MK-Uを盗んだ横島さんのお友達ということで、カオス教から徹底的にマークされたんです。父さんも母さんもお姉ちゃんも逮捕されて、強制労働送りになりました。私も捕まるところだったんですけど、家族が私を隠してくれて・・・・・そこを美神隊長に救ってもらったんです・・・・。」
おキヌは、まさか月で横島に会えるとは思っていなかった。
それが、居た。
その安心感からおキヌは本能的に横島に甘えた。
「そうだったのか・・・・すまん、おキヌちゃん。やっぱり俺のせいで家族を・・・・」
「・・・・ううん、気にしないで下さい横島さん。どっちにしても・・・・・こうなってたと思います。私・・・・・横島さんが悪いことやったなんて思ってませんから・・・」
「・・・・・おキヌちゃん、ありがとな。」
「・・・・よこしま・・・・さん・・・・」
「?」
「私・・・・・私・・・・」
「どうしたんだ?おキヌちゃ・・・・・!!」
おキヌの顔が徐々に歪んで目から大粒の涙が溢れ出しているのが横島に見えた。
「・・・えっく・・・みんな・・・ば・・・らばら・・・・ひっく・・・に・・・・一人に・・・なっ・・・・ちゃって・・・その上・・・・・ひっく・・・よこし・・・・まさん・・・・にも会えな・・・ひっく・・・・かったら・・・どう・・・・ひっく・・・しようかって・・・・・・」
「・・・・おキヌちゃん・・・・・」
「わあああぁぁぁん!!」
おキヌが自分の悲しみをぶちまけるかのように横島の胸にすがりついた。
横島もおキヌを抱きしめながら、一瞬死んだ母親のことを思い出し、自然と目頭を押さえている自分に気づいた。
二人ともまだ高校生なのである。親が居ない不安や悲しみもあって当然のことと言えた。
(あ〜あ、私もこういう恋愛したいな〜)
物陰で一人惚けている朧の姿があったが・・・・・・・そんなことはどうでもよかった。


その頃、ICPOのトップは、ジブロー侵攻作戦の論議をしていた。
西条だけは地球降下作戦に反対していたのだ。
「カオス教は、人間の闘争心の現れであります。その根を絶たない限り、カオス教を解体することはできません。ジブロー侵攻作戦は、地球の重力に魂をひかれている人々の目を宇宙に向けさせるためには有効だと思いますが、それでは解決策にはなりません。宇宙の戦いは続くだろうし、闘争心を解消させるまでには至りません・・・・・」
それが西条の反論の理由であり、なによりも、
「地球での戦いは、地球を汚染します。それでは、ICPOの本旨に反します」
が、その意見は退けられた。
「西条大尉が言ったではないか。宇宙での戦いは続くと・・・・・。それを続けさせないためには、まず地球に住むしかないと考える人々の根を絶つ必要がある。」
斉天准将である。
「ならばカオス教の黒幕といわれているDrカオスを暗殺する計画を予定したほうがいい」
西条は言ったものだ。
「オカルトGメンは、動いてくれているが、そんな手に乗るような男ではない・・・・」
オカルトGメンは、地球上でのICPOに協力する組織である。


横島は、しばらくおキヌとの再会の余韻に浸った後、いったんおキヌと別れてMK-Uのウェーブライダー装着のためアーギャマへ戻った。この作業は大気圏突入時に必要不可欠なのである。


「よし!横島君。」
浪人は、傍らのモニターでコード接続を確認する。
ビッィイ!
サイドパイプの独特な音がスピーカーから流れ、「昼飯配給!各員受け取れっ!」の号令が流れた。
その声に浪人は、パネルワークの手を止めて、
「横島君、飯取って来てくれないっすか?」
「え?もうですか?」
横島は、再びコックピットから出て浪人を見下ろし、プレデッキの方を見た。
そして、そこにあった二人分の食事パックをとろうとした時、通路のつき当たりのエア・ロックが開いて、唐巣艦長と美神隊長が入ってきた。
「・・・・・・・?」
エア・ロックの出入り口の兵が、杓子定規に敬礼するのがワザとらしく嫌らしい。
「以前の木馬とは、大分、発進の呼吸が違いますよ。」
「ええ、分かってます。」
唐巣の言葉に美神は、律儀に応えていた。
「あ!横島君、西条大尉がどこにいるか知ってるかい?」
「たしか・・・・十式のところだったと思いますけど。」
唐巣は頷くと傍らの壁のインターカムを取り上げて、
「西条大尉!新任の艦長を紹介する!上がってきてくれたまえ!」
その声は、MSデッキの誰の声よりも大きかったかもしれない。MSデッキのクルーが一斉に見上げた。
十式の陰から西条の体が流れてきた。
「新任の艦長でありますか?」
「そうだ本日決定された。先ほどの、美神大佐だ。今日昇進してもらい、アーギャマに着任というわけだ。」
「ほう・・・・・!これは嬉しい。」
西条の口元が、ひどく優しい微笑を浮かべて言った。
「よろしく。西条大尉の件は、唐巣艦長から耳にタコができるほど聞かされました。」
美神は、西条の手を屈託なく握りかえした。
「こちらこそ。かつてのお手並みを拝見できるかと思うと嬉しい。」
「いや、自分の感覚が鈍くなっています。それが怖くて・・・・・」
「大丈夫ッスよ、美神艦長なら・・・・・!」
「ああ、あなたが横島くんね。期待してるわ。」
「ありがとうございます。」
横島は、率直に答え再びデッキの方へ流れていった。
「それでは艦長、デッキの方へ・・・・・」
「そうですね。」
唐巣は西条と共に美神をブリッジに案内した。
ブリッジではヒャクメがひとり掃除をしていた。
「感覚はわかってきました・・・・・」
美神は艦長席に座って、肘掛けを叩いてみせた。
「わかりが早い。今後は頼む。」
「はい・・・・・」
「気になることといえば、ご家族がジブローにいるということだが・・・・?」
「大丈夫です。夫はニュータイプみたいなものです。事前にジブローを脱出してくれるでしょう。」
「旦那さん・・・・どういう方で?」
「名字は忘れたんですけど名前は公彦といいまして、(名字わからんです(泣))木馬の操舵手をやっていました。」
「それは!」
唐巣の感嘆する声に、西条は戦後の年鑑かなにかで読んだニュースの中に美智恵と公彦の結婚のニュースがあったことを思い出していた。
「納得です。」
西条は、唐巣に答えてみせて、
「唐巣艦長は?」
「私は、次の作戦がある場合にそなえて、ここで部隊編成をやる。」
「了解しました。」
「見送りはいいよ。」
唐巣がブリッジを出ていった後、西条は艦長席に近づいた。
「・・・・・お子様は?」
「二人です。」
「女の子が二人ずつ?」
「よくわかりますね。」
「いや・・・・何となくです・・・・。」
西条はもっと何か言いたげだったが、それ以上口に出すことはなかった。

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa