ザ・グレート・展開予測ショー

ある一つの結末 (絶対可憐チルドレン)


投稿者名:ヤドリギ
投稿日時:(06/ 5/18)

内務省特務機関超能力支援研究局「B,A,B,E,L」

その特務エスパーチーム「チルドレン」に割り当てられた部屋で、
皆本は紫穂の淹れてくれたコーヒーをのんびりと飲んでいた。

ふと視線をソファに向けるとチルドレンの三人は仲良く何かの雑誌を読んでいる。

いや…チルドレンというのは正確ではない。
『子供』とは彼女らに与えられたチーム名であり、その容姿、年齢は既に子供の域を超えている。
容貌も三子三様、各々が美しく成長していた。
新しいチーム名は目下議論中…

口にこそ出さないが、皆本も彼女たちを多少なりとも異性として意識するようになっていた。

(ほんの数年前までガキだったくせに…)

近年、さらに能力に磨きをかけているサイコメトラーによる空気接触感応を一瞬危惧したが
それでも内心苦笑せずにいられない。

彼女たちは16歳

エスパーに対する偏見も目に見えて減少していっている昨今、
薫たち三人は青春を思う存分に謳歌している。



結局、伊号中尉による未来予測は外れた。
あの南の島での一件以来、何とかあの未来を阻止しようと努力してきた。
それ努力が報われたとは思っていない。
自分にできたのはせいぜい起こりうるエスパーたちの問題を予想し、対策を練り、
偏見を無くすきっかけになればいいと発明や研究に力をいれただけだった。
いわば護りの姿勢―
相手側の反応無しには行動が取れない、後手だった。
『いったい何が起こってあのような未来になるのだろう』
皆本はこの六年悩み続けた。
だが蓋を開けてみると、何も起こらずに世界は平和への道を進んでいる。


予測は外れた
だがあの未来を知ったことは無駄だったとは思わない。
あれは起こりえた未来
ほぼ完璧を誇った震度7の未来予測が覆って奇跡的に保たれているのがこの世界なのだ。
知らなければ悩むこともなかっただろう。
だが知っているからこそ現状のありがたさが判り、大切なものだと思える。


皆本は最早かけがえのない家族といっても過言ではない三人へ再び視線を送る。
手のかかる妹たちは本当の家族のようにじゃれあい、笑いあう。


B,A,B,E,Lは今日も平和であった。










と、ここまでが皆本主観の認識









「ある一つの結末」







さて実際のところ…
一部の水面下では阿鼻叫喚のカタストロフっぽいことになっていた。

結論を先んずると伊号中尉の予測は当たったのだ。
未来、あの時、あの場所で皆本と向き合った薫は敢えてその銃弾を受けようとした。
その胸に去来するのは後悔、無念と行き場のない怒り

『破壊の女王』の激情か、
二人を助けんとする『光速の女神』の全力の超能力か、
はたまた『魅心の魔女』の運命に抗いたいと願う強い想いか…
あるいはこの全てが要因かもしれない。

目の眩む閃光
何とも表現しがたい謎の衝撃から三人が目覚めてみると…
何度も帰りたいと願ったあの平和な「B,A,B,E,L」の日々の中にいた。




即ち精神逆行――



ここに疑似餌(子供の外見)と圧倒的な暴力(震度7+6年の戦いで培われた技術)を持つ悪魔が三匹誕生した。

―――彼女たちは文字通り狂喜乱舞した。
状況を把握した三人の行動は素早く的確で容赦がない。

建前では自分たちの経験してきたこと通りに『演技』をしつつ、
裏では紫穂を筆頭とするえげつない行動を取り続けていく。


正々堂々などが如何に建前に過ぎないか、と身に染みて判っていたからだ。


監視の目をかいくぐり、獄中の兵部と接触
チルドレンとの秘密の接触後、兵部は謎の失踪をとげる。
当時「B,A,B,E,L」は最悪のテロリストの脱走に顔を青くした。
表立った活動は確認されていないものの、
現在も警戒態勢は続けられている――

ちなみに当の本人は冬のオホーツクの海岸の海辺の家で安楽椅子に座りつつ切なげに口笛を吹いていた…
兵部京介――――皆本と出会うことなく途中退場・リタイヤ
薫と違って兵部に思い入れがなかった紫穂は容赦などしなかった、とだけ言っておこう。


その後も皆本に近寄る異性をさりげなく切り捨てていった。


無論のこと従来のスキンシップは忘れない。
すでに皆本は『相手は子供だから…』とたかをくくっていた。
慣れというものは恐ろしく、実際には問題ありまくりの行為も
10歳のときからの延長だと感じるらしく、慎みについての説教だけで済まされた。
さすがに最近は発育もよくなり注意だけでは済まされなくなってきた。
しかし見た目は子供、頭脳は大人を地でいく三人は注意なんて何処吹く風――
事故を装っては皆本に引っ付きまわっている。
更に言えば実際には子供の視点ではなく、女性の視点なのだ…


風呂場でのお約束のハプニングを皮切りに
回避不能の強制イベントをどんどん発生させていった。
すでに秘蔵のアルバムは山の如し、パソコンのHDも増設しなきゃね♪などとのたまう始末…


そしてココが一番重要なのだが――皆本はこれらの真実に全く気づいていないのだ。
否、気づかれぬように細心の注意を払われた結果であり皆本が鈍いわけではない。
皆本は彼女たちを守るためならどんな無茶でもしようとするだろう。
あの未来の繰り返しは何が何でも避けたかった。

そして本人こそ気づいていないが、皆本は女性にモテる。
今まで三人はスキンシップをとりつつも露骨な誘惑は避けてきた。
誘惑する暇があったら周囲の女性に対して牽制を行った。
まぁ…案の定、互いの間では常に隙あらば一歩リードしようとはしていたが――

皆本にとってチルドレンの三人はまだまだ子供…だが今はそれでいい。




一度地獄を見た少女たちは、二度とないチャンスを不意にしないため
幸せの障害になるものは容赦なく排除した。

この世界は彼女たちが勝ち取った理想とも言える場所
故に壊さぬように慎重に、万全を期す必要がある。

つい先日、めでたくメンバー全員が16歳に達した。
日本国憲法における合法的な結婚年齢でもある。
今の時代は一夫多妻制など存在しないが、これからが力の見せ所だ。
不可能は可能にできると学んだ少女達は諦めるつもりなど毛頭ない。
今はチーム名と並行して、誰が本妻になるのか終わりのない議論を繰り広げている。
もちろん皆本には気づかれないように……


会議が難航するなか皆本が皆で食事に行こうと声をかけた。
議会は閉会、喜んで大好きな人についていく
色気より食い気か、とからかう皆本に三人はじゃれついた。

起こりえた未来を重ねて、皆本は妹たちの幸せを願う。
少女達は幸せになる方法を可能にすべく、様々に画策する。
そんなこととは露知らず、意中の人は団欒の風景に頬を緩めた。


油断することなかれ、彼女たちは妹でおわるつもりなどないのだから――

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