ザ・グレート・展開予測ショー

腕に擁かれ


投稿者名:高森遊佐
投稿日時:(06/ 5/18)



暗い空間で私は走っている。
後ろからは私を追い詰め、捕まえ、殺そうと追ってくる複数の影。
逃げても逃げても距離は離れない。

タスケテ、ダレカタスケテ

必死に助けを求めて声を上げるが、暗い空間に私の味方は現れず、追っ手は消えず。
もう息が上がってまともに走れない。
とうとう足が縺れて、転んでしまった。
後ろを見ると追っ手がもうすぐそこまで来ていて。私のほうに手を伸ばしていて。

イヤアアアアアァァァァァ―――――……


絶望の叫びが喉を突いて出て。










ハッと目が覚める。
寝汗で全身しっとりとしていて気持ちが悪い。
内容は全く覚えていないが、どうやら悪夢を見て魘されていたようだ。
ただ凄く、凄く怖くて嫌な夢だった事だけは覚えている。
一つ大きく呼吸をして、気を落ち着ける。

確か私は一人で事務所で留守番をしていた。
そうだ、ソファで横になっていたらうつらうつらとしてきて、それで眠ってしまったのだろう。

思考が纏まってくると、自分がいつの間にか狐形態に戻っている事に気付いた。
それと同時に暖かい何かに包まれている事にも。
その暖かさに気付いた今、つい今しがたまで感じていた言いようの無い恐怖が無くなり、とても安らかな気持ちでいる。
私を包んでいる何かの匂いには覚えがある。
アイツがいつの間にか私を抱いて、眠っているようだ。

いつもならこんな状況になったら、顔を引っかいておまけに焼いてやるところだけど。
いつもならこんな状況になんて、なるはずがないのだけど。

今はこの暖かさが嬉しい。

魘されて震えていた私を見て、寒さに震えているとでも勘違いしたのだろうか。
でも今はその勘違いに感謝しよう。

何もかけずに眠るアイツが寒いのか、ブルリと一つ震えて私を抱く力に幾分力が入る。
それでも苦しくない程度の力で。アイツの匂いがより強くなるのを感じて。
クスっと一つ笑って、私は再び目を瞑る。
いつもよりちょっと汗臭いこの男の腕に抱かれて、もう一眠りするとしよう。
今度はいい夢が見られる気がする。


おやすみ、――――。

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