ザ・グレート・展開予測ショー

【Important monochrome】〜守るべきこの世界の為に〜


投稿者名:Hazel
投稿日時:(06/ 5/14)


―アシュタロス大戦・2ヵ月後、東京タワー前のビル屋上
「何回、いやお前が居なくなってから何十回目かなぁ?
 この場所に来たのも皆に余計な心配かけないように・・・
 俺は俺なりに演じては見たけど、やっぱりわかる人にはわかるみたいでさ。
 俺には演技力はないみたいだ。なぁ、ルシオラ?」
彼には夕焼けにそまる空を東京タワーが眼の前に見えた。
その原っぱに立ちすくんではただ哀しそうに呟いた。





少年は演じていた。彼女が居なくなってしまう前の道化を。
周りの人達に、嘲笑されようとそんな事はどうでも良かった。
周りの人達が笑っていてくれるならば・・・それで。
自分に対して、変に同情や優しくはして貰いたくなかったから。
しかし・・・彼の心は日に日に考えるようになっていた。
果たして、このまま、道化を演じ続けているだけでいいのだろうか・・・?
事務所の皆、学校の皆、今まで知り合ってきたであろう全ての者達の姿が、
瞳を閉じれば自然と浮かんでは消えていく。




自分は、周りに甘えていただけなのではないか?
自分は、実は何も変わってなどいないのではないか?
彼はふと、不安感で胸が一杯に締め付けられた。
そして、少年はある結論を胸の中で決めるのだった。
「決めたぜ!ルシオラ!俺は強くなる!このままじゃいけない・・・!
周りを頼っているだけじゃきっとまた誰かを失う事になる・・・!
俺はもう誰も失いたくない・・・
お前を助けてやれなかった事の悔しさは味わいたくない!
 だからお前にもらったこの命で強くなって見せる!!
俺自身の力で、俺はお前と皆と出逢えたこの世界を!
 この世界の命を守ってみせる!」
少し、大口過ぎたかなと反省しながら笑みを零す。
しかし、その零れ落ちそうな涙を拭ってと夕暮れに染まる太陽に手を向ける。
彼の決意を・・・見守っているかのように一点の光が天に輝いた。
光は一瞬だけ、誰にも気づかれる事無く強く発して消えていった。



  
                    GS美神
               
               【Important monochrome】
               〜守るべきこの世界の為に〜
                   プロローグ
               
                『或る少年の決意』






〜妙神山〜
「・・・・・・」

「そうじゃ・・・気を集中させ、神経を研ぎ澄ませるのじゃ」

あの事件から半年・・・彼はほぼ土日を利用してここ妙神山に来ている。
目的は、小竜姫との禁断の愛?を育むためではない。
パピリオに会いにきたというのもあるかもしれないが、本当の所は自分自身を
鍛える為にここに訪れては猿神(ハマヌーン)から直々に教えを受けているのだ。

(この小僧・・・また霊力が伸びておるの・・・
 確かにここに通いつめ、休む暇も自らに与えず鍛錬を続けている
 とはいえ、半年で、霊力を3倍近くまで跳ね上げさせるとは・・・
 フフフ、末恐ろしい奴じゃよ・・・)

彼は、目の前の少年の異常ともいえる霊力の成長力を訝しげに眺める
と彼は笑みを零す。
煩悩の固まりと言われ続け、ヘラヘラとしていた時の面影は微塵も見せず・・・
少年は青年に成長しようとしている・・・煩悩の象徴のような彼がだ。
感慨にふけながら、猿神は彼自身が自ら修行を志願してきたあの日を
思い出していた。





―半年前のとある土曜日
「何・・・強くなりたいとな?」

「ああ・・・!俺はもっと強くなりたい!」

彼は、自分を睨んできた斉天大師である猿神(ハマヌーン)に臆する事のない
強い眼差しを彼に向けて返して、叫んだ。

「お前は、十分強いではないか?文珠という神・魔・人・妖、四界を

 おいてもお前しかない能力を持っていて何が足りないというんじゃ?」
猿神はため息を大きく吐きながら、ゲームのプレイ越しで彼の話を聞いていた。

「あんな想いをするのは・・・もう沢山なんだ」

彼は遠い眼差しのまま、彼は告げる。
猿神は黙ったまま、彼の言葉を聴き続けている。

「もしだ・・・遠い先でいや、結構近い未来であの時といや・・・
 それ以上の戦いが始まってしまったら・・・
 今の俺に何ができるのかって考えた・・・馬鹿な頭なりに。
 一晩中、考えてみたけど思い浮かびやしなかった。
 第一、悪役だと思っていたアシュタロスは悪役なんかじゃなくて・・・
 どっか誰かに倒されたがっていた節があったからな〜。
 皆の力があったとはいえ、アイツが本気でこの世界を征服するつもり
 だったら・・・多分、いや間違いなく俺達は滅ぼされていた筈だ。
 もし、本気でこの世界全てを手に入れたがっている奴が、
 アイツ級の力を持っている・・・いや、もしかしたらそれ以上の奴
 が出てきたらって思ったら、いてもたってもいられなくなった。
 ・・・ってところかな?」
彼はその真剣な眼差しを一度も崩さず、猿神を見据えている。

 「口にするのは易し、行動に表すのは難しじゃ・・・」

ゲームのコントローラーを無造作に置くと、彼は立ち上がる。

「見せてもらおうか・・・?」

「え?」

「見せてもらうぞ・・・お前の強くなるという言葉の覚悟を?」
彼はピョンと、庭に飛び出すと大きな如意棒を携えた大猿へと巨大化した。

「サンキュ!猿神(ハマヌーン) の爺さん!!」
横島は、緩んでいたバンダナを締めなおして庭へと飛び出していった。





「老師?横島さん?お3時の時間ですよ〜・・・
 って何しているんですか!?」
おやつの時間である事を告げにきた彼女は、目の前の光景に驚いている。
そこには、巨大化している猿神の攻撃を避けながら間合いを詰める
横島の姿があったのだが、彼の姿は傷だらけでシャツからは血が滲み
はじめていた。

「老師!!これは一体?!」

「邪魔をしないでください!!」
説明を求める小竜姫に、珍しく女性に対して声を荒げる横島。

「横島さん・・・?」

「すいません・・・大声出しちゃって。でも、止めないで下さい
 これは、俺が頼んでしている事ッス!」
彼は笑顔を彼女に向てると目をギラつかせ猿神に向かっていく。
彼女は、胸を締め付けるような切なさを彼に感じたが彼の真剣な眼差し
に押されてしまったのか黙って見守ることにした。
―そして、数十分後・・・



「し、しみるッ!!も、もっと優しく頼みますよ・・・」

「あんな危険な事をしていたのですから、至極当然の事です!
 これぐらい我慢して下さい!・・・で?」
何とか修行をこなしたのはいいのだが・・・
当然、複数の擦り傷や切り傷を負った彼は小竜姫に手当てをしてもらっていた。
勿論、彼女もヒーリングはできるが反省を促す為に“お仕置き”の一環で
身体に染みる消毒液をあえて使い、彼の傷口に塗っている。

「で、横島さん」

「?」

「どうして、あんな事をしていたのですか?」
少し瞳を潤ませて、彼女は尋ねる。

「うっ・・・!そ、それは!!」
(よ、弱ったなぁ・・・?!)

「軽い切り傷や擦り傷程度でよかったもの、斉天大聖様の攻撃をまともに
 浴びたら・・・幾ら貴方といえども唯ではすみません、もし・・・」

「小竜姫様・・・?」
掠れたような震えた声で話す彼女に、そう尋ね返す彼。
そんな彼に、彼女は目を見開き少し強く彼を見据える。

「貴方が・・・・死んでしまっていたら!どうしていたつもりなのですか?!
 わたし達が悲しまないとでも思っていたのですか?!」

「小竜姫様・・・すいません」
真剣に自分の事を心配しているのだとわかった彼は頭を深々と下げる。

「すいませんで、済めば仏陀様や竜神王様はいりません!!」
プイとすね気味に頬を膨らませてそっぽをむける彼女。
武神と比喩される彼女にしては可愛らしい素振りといえる。

「まあ、それ位にしておけ。小竜姫」
元の状態に戻った猿神は、そんな彼女をなだめる。

「老師も老師です!!わたしに黙ってこのような・・・!」

「そ、それは、コイツが今までになくシリアスだったから、つい・・・」
猿神から彼の決意を小竜姫に諭すが、彼女の迫力に押され少し小声になる。

「それでワシが試したんじゃよ、この小僧の気負いというものが
 どれくらいのもんかのぅ。じゃから、な?あんまり責めるではない!」
猿神はゆっくり近寄ると、彼女の耳元で目の前に居る彼に聞こえないように呟く。

(小僧はのう・・・大事なモノを護る力が欲しいといったのじゃ。
 その為になら、どんな修行もどんな事にも耐え抜いてみせると・・・
 あ、モチロン、その守りたい大事なモノの中にもお前も入っていたぞ?
 どうじゃ?嬉しいじゃろ?小竜姫?)
ポンと彼女の肩を叩くと、小竜姫はボンと顔を赤くしてまま伏目がちに口を開く。

「じ、事情はわかりました(////)・・・ですが、私に黙ってこのような事
 をした横島さんと斉天大聖様といえども罰は受けてもらいます!」

『へ・・・?罰?』

果たして彼女が与えた罰とは・・・???









〈ぎゅるるるる〜!!〉
鳴り響くのは、バンダナ少年と猿神の腹の音。
「許して下さい!!この通りです!!」

「すまなかった!!わしもこの通り謝るから頼む〜!!」
目の前にあるいつになく豪勢な料理を前にぺこぺこと土下座をする二人の姿が。
こうなると先ほどまでのシリアス展開も台無しである。

「ダメです!!今日一日分の夕食分位我慢してもらいます!!」

『そ、そんなぁ!』

声をそろえる二人を眺めつつ・・・

(小竜姫だけには逆らってはいけないのね〜・・・)

(小竜姫だけは怒らしてはいけないでちゅね〜・・・)
蝶の化身の少女と、目玉の装飾品を身につけた監察官は
心に“妙神山の管理人だけには逆らっていけないな”と刻み付けるのだった。




“フフフ・・・そんな事もあったのぅ!”
「目を開けてよし!!」
そんな事を思い出すと心の中で笑いながら、彼は叫んだ。

「ぷはぁ!!きっついっスね〜。何もしないで神経だけを集中
 させるっていうのも。それも数時間以上なんて・・・」
「今のお前にとっては、肉体の鍛錬よりも精神の鍛錬の方が重要じゃ」
猿神は、今の横島の霊力の状態を告げる。

一つ、今の彼の潜在霊力は既に神・魔族の上級クラスと同等又は
   それ以上で有る事。

二つ、今の彼ではその力を生かしきれるほどの精神力が足りない事。

三つ、今の彼の霊力構造には、人間・魔族の他に神族の霊気構造が
   なぜか組み込まれている事。(理由は今の所、不明)

四つ、彼はまだまだ成長途中であり、本人次第では(神・魔・人・妖)
   四界でも指折りの実力をもつ者へとなることも不可能で無いということ。
との4点を告げる。

「始めて間もない頃よりは、大分成長はしておるがお前はまだまだ
 自分の潜在能力を使いこなせてはおらん・・・
 だから、お前には集中・放出・圧縮・変化の己の霊力を使うには
 基本ともいえる4点を口すっぱくしていっておるんじゃろうが?
 愚痴をいう暇があったら、さっさと修練をせんか!!」
(だが、故にお前を狙うものが出てこないとも限らん・・・
 それに備える為にも・・・今、ここで鍛えておかねばのう)

「は、はい!わっかりました!!」
彼は、猿神に一喝されたのかそばに用意された飲み物を一口飲み干すと今度は
放出の修練を始める。


―やがて・・・
「今日はここまで!後は、自主訓練じゃ!」

「はい!わかりました!老師!!」
あたりはすっかり暗くなり、あとは横島自身の自主性に任せ、
猿神は自らの部屋に戻る。
すると、そこには既にここではすっかり馴染みの顔ぶれといった一同が
彼の様子を心配して鎮座していた。

「で、どうなのですか?横島さんは?」
ベレー帽をかぶった軍服姿の青年は、猿神に尋ねる。

「想像以上の逸材中の逸材・・・それが正直な意見じゃよ」

「さすがはヨコシマでちゅ!」

「じゃがな・・・少し不安じゃ」

『何が(です・だ・のね〜)!?』
一斉に身を乗り出す4柱の神魔の乙女達。

「落ち着け!小竜姫!ワルキューレ!ヒャクメ!べスパ!」

『すまん(すいません・すいませんなのね〜)・・・』

「急激に成長しすぎなんじゃよ、あやつがな」
一同は、ふすまの陰から彼の霊気を覗く。

「ここが霊気の修練に優れておる最適な修行場とはいえども・・・
 平均霊力がたった半年で、それも3倍に跳ね上がる人間など前代未聞じゃ。
 それに、人間で筈の小僧が潜在能力とはいえ・・・
 神・魔・妖の上級クラスの霊力をもっておるなど異常としか言えん。
 蛍の化身が彼に魔族の霊気構造を与えたとしてもありえない成長力
 なのじゃ。・・・それがどうも気掛かりでならないのじゃ」
両腕を組みながら、神妙な面持ちで彼は語ったのだが・・・。

「当たり前だ!ヨコシマは常識などでは量れん奴だからな」
ベレー帽の軍服が似合う凛とした戦乙女が口をだせば。

「なんたって、アシュ様を倒した奴なんだ。それ位、当然だとも!」
と蜂の化身の乙女も口を揃える。

「どんな事もお見通しの、このヒャクメでも横島さんの全ては
 見通せないのね〜♪」
覗き魔?の汚名を着せられ続けている彼女も胸を張り答えれば。

「待って下さい!!彼の力を一番、最初に見出したのはわたしですよ!!」
と竜の女剣士はその三柱を制すように声を上げ。

「お、落ち着いて下さい!皆さん!」
おろおろと、軍服姿青年が四柱の乙女達を制する。

(むむむ・・・今は無理でちゅけど、今に成長して
 ヨコチマを誘惑するでちゅ!)
と蝶の化身である少女はグッと拳を握り始める。

「お〜!楽しそうだな〜皆!」
(さて!混ざりたい気持ちはあるけど!集中!集中!)
当の本人は、その様子を眺めつつも霊力の塊を宙に無かって放ち続ける。
そんな騒がしいある土曜日の妙神山の夜。

(本当に・・・それだけなら良いのじゃが・・・)
彼の異常ともいう成長率に、猿神は自己修練を続ける彼を見ながら
一抹の不安を憶えるのだった。

〜次の日・昼:オカルトGメン日本支部〜
名残惜しそうに、妙神山に別れを告げて日曜の昼に彼が訪れたの
はオカルトGメンの一室にあるシュミレーションルーム。

「はああああああ!!」
彼は、漲る霊波刀と軽やかなステップで仮想魔族・妖怪達を次々と
驚くべき速さで倒していく・・・。

「全く、ホントにデタラメな奴だな。君は・・・横島君」

「有り得ない成長力だわ・・・遥かに人間のレベルを既に超越している。
 現役の超一流GS達の成長スピードなんて目じゃないぐらいに・・・!」
舞いのような鮮やかで倒していく彼に開いた口が塞がらない二人。

(つい、最近まで手間のかかる弟同然だと思っていたのに・・・)

(男子一日会わずば、刮目して見よとはよくいっただわ・・・
 たった半年で、GS世界トップ霊力記録である170マイトを
 軽く超えるなんて・・・!)
このシミュレートのコントロールルームにおいてある液晶画面
に映し出されている数値を眺め、二人は唸っている。


―使用開始時間より現在30分42秒54経過”
 設定レベル:オリジナル×10倍
 撃破総数:95/100体
 平均霊力数値:321マイト
 最高放出霊力値:989マイト
 暫定GSレベル:測定不能

オカルトGメンが誇る最新鋭のスーパーコンピュータでさえも
彼のGSレベルを測定できないのということなのか?
この現実を半ば信じられない面持ちで眺める二人だったが、
彼の今までにない真剣な眼差しを眺めて確信したのかお互いに頷いた。
“彼は、現時点でも世界最高及び最強のGSだ”という事を。


―ピィィィ!シミュレート終了!シミュレート終了!
 終了時間:36分35秒24 新記録樹立!新記録樹立!
 コングラチュレーション!ミスター・ヨコシマ!

「ふぅ・・・こんなモンかな?」
(まあまあ、いい動きだったかな?)

「素晴らしいわ!横島クン!!」

「一体・・・いつの間にそんな力を?」

「まあ、妙神山でちょっと・・・」
彼は、軽く息を整えると用意されているタオルで汗を拭いながら二人に答える。
「どう?オカルトGメンに入る気はない?」

「そうですね・・・癪だけど今の君は喉から手が出るほど欲しい人材だ
 例え、僕と美神先生がポケットマネーを出してもいい程の逸材だよ」
二人の誘いの言葉に彼は?
「西条が俺の事を素直に褒めるのは・・・ちょっと気持ち悪いけど
 すんません、俺にはあの場所しかないんですよ。
 俺の居場所はね」
彼は微笑んで、少し頭を下げて断った。

「そう、残念ね〜・・・」

「ま、わかっていたことではあるけど・・・
 聞き捨てならない言葉は取り消してくれないか?」
彼は、自らの愛剣ジャスティスを横島の首元に差し向ける。

「あはははは・・・何の事だ?」〈汗〉

「気持ち悪いとはどういう意味だい?人が折角、褒めたというのに?
 それじゃ僕が、贔屓目で人を評価しているみたいじゃないか?」#

「違うのか?」

「断じて違う!例え、”愚か”で女性の尻を追い掛け回していた”醜い”
 君であったとしても、評価するのが僕の主義だ」

「ほぅ・・・随分、好き勝手言ってくれるじゃねえか?・・・#
 西条ぉぉぉぉ!!」
彼は霊波刀で、西条向かって剣をむけると西条は銃を撃ち放つ!

「うぉぉぉ!アブねえ!!卑怯だぞ!西条!」

「フン!合理的といってくれたまえ!合理的と!!」
至近距離から放っているのにもかかわらず、紙一重で避ける横島
とそれを追い掛け回す西条。

「あ、ここにいらしたのですか?三人とも」

「ええ、休日だというのにご苦労様!」

「いえ!あ、またやっているんですか?二人とも?」

「ええ・・・飽きもせずによくやるわね・・・」

「フフフ・・・でも、兄弟喧嘩みたいですね?」
彼女が美智恵だけに言った筈だったのだが・・・

『誰がこんな奴と!!』#
ほぼ同時に、指を刺して大声で否定する二人だが・・・
同時な所が、兄弟みたいだと揶揄される理由だと言う所を理解していない。

「ええ・・・そうかもね」
目を閉じて、口元を笑わせた美智恵だったが彼女がある一点を
切なそうに、見つめているのを彼女は見逃さなかった。
よくよく考えてみれば・・・可笑しいコだ。
毎週、毎週、休日出勤を彼女は志願してくる。
彼が来るかこないかにもかかわらずにそれは熱心に。
来てくれた日は、破顔一笑したかと思えば来ないとわかる
としょぼんと頭を落とす。
明らかにわかりやすい態度だった。
「ねえ、あなた?」

「は、はい!なんでしょうか?!」

「もしかして・・・クンの事が好き?」

「(////)」
美智恵の問いかけに、これでもかと言うほどわかりやすい態度
でフリーズする彼女。

(ふむふむ・・・水鏡香華[ミカガミキョウカ]さんか。
 さて、どうしたものかしらね〜♪)
などと、またもこんがらってきそうな恋の鞘当てを愉しげに想像したのか
思わず小さく吹き出した美智恵だったりする。

「ふぅ、今日も疲れたなぁ・・・まったく西条のヤロー!
 生身のしかもただの高校生の俺を銃で撃ってくるとは〜!!」
“安心したまえ・・・君はただの高校生なんかじゃないから”
と西条が聞いていれば返って来そうな言葉を叫びながら家路につく。

「まあ、いいか♪水鏡さんからプレゼントも貰えたし・・・
 おや?俺の部屋に明かりがついているな・・・誰かいるのか?」
彼は、自らのマンションに聞き耳を立てるとそこには複数の声が聞こえてきた。

「まだ食べちゃだめ!貧ちゃん!」

「せやかて・・・わし、腹がへってもうて・・・」

「小鳩・・・わたしもよ・・・」

「お母さんまで!」

「もう少しだけ待ちましょう?」

「先生が来るまでの辛抱でござるよ!」

「来れば話やろ?」

「それは・・・どういう意味よ?」
彼の言葉は失言だったようで、小鳩の母を除いた女性陣の導火線に
火をつけてしまった訳で・・・

「最近、アイツ妙に落ち着いて来てモテとるみたいやし、
 今頃、どこかの美人の姉ちゃんといいトコでディナーと
 しゃれこんで・・・?!」
彼が後悔したのはもう遅かった。
一瞬にして、女性陣は彼を取り囲む!!

(ば、馬鹿!余計なことを言って触発させるんじゃねえ〜!!)

「あれ、横島さん帰っていたんですか?」

「ピートに唐巣神父!」

「何しているんだね・・・?君は自分の家の前で?」

「い、いや〜・・・それが」

―ドタタタタタッ!!
『お帰り(なさい・でござる)〜!』

「あ、ああ・・・ただいま」
一斉に飛び出してきた小鳩・おキヌ・シロ・タマモ・魔鈴の気迫?
に押されたのかそう返すことしかできないらしい。
「おかしいな・・・俺の部屋にくるにしちゃ、随分多すぎやしねえか?」
 (というより、明らかに定員オーバーなんだが・・・)

「わたしもいるからよ♪」
古ぼけた机から、青春が口癖の憑喪神である彼女が
机から姿を現し出てきた。

「愛子?どうやって・・・ここに?」

「ああ、それならワッシが担いだんですジャー」
机の口から、姿を出して大柄の男子が飛び出してきた。

「なるほど・・・ここにみんな入ってるって訳か」

「納得した?」

「ああ・・・とりあえずはな」

「皆、待ってますから!とりあえず行きましょう!」
ピートの掛け声に、仕方ないなと思わず彼は小さく笑みを零すと
全員、愛子の机の中に入っていった。

「こら〜!ボケ横島〜どこ言っていたんだぁ〜」(///)
既に、ベロンベロンに酔っていた長い亜麻色の髪をなびかせた
上司は早速絡んできた。

「さ、酒くさいっスよ・・・うわっ!一人でこんなに・・・」
彼は、彼女の足元に転がっているビール樽が2つ3つ所ではない
事に驚いている。

「ピートぉ・・・ワタシもう酔っちゃったみたいなワケ〜」////

「エ、エミさん、あんまり寄りかからないでく、くれませんか?」/////////

「ピートお兄様から離れなさい!年増!」###

「フン!小便臭いお子様は黙ってるワケ!」##

「ち、ちょっと・・・アンちゃんもエミさんも落ち着いて〜」
遠くで、親友のヴァンピールが困惑しているが目はあわせないように
しておく横島。
“あの二人とピートの間に入るのは、身の安全の為にもヤメテオケ”
と本能が悟っているからだ。

(すまん、ピート・・・俺は何もしてやれない・・・)
彼は背中を向けて、美神の相手をする事にした。
遠くで、“助けてください、横島さん!”との声がするが気のせいに
でもしておこうと頷く横島。

「やっと、来たわ〜♪」(///)

「遅いで〜自分!」(///)
すっかり、出来上がっているのか顔を赤くしているトラブルメーカー的存在
の式神使いの女性。
その式神使いに毎日振り回されている同じ式神使いの若い男性教師。

「わはははははー!いつ始まるか楽しみじゃったんじゃぞ〜!」

「イエス・横島さん・予定時間より・2時間30分・遅刻」
背後から、豪快な笑いを飛ばし飯はまだかという顔で笑う欧州伝説の
不死の魔王と優しい笑みを見せるアンドロイドの少女。

「鬼道に、冥子ちゃんに、カオスのおっさんにマリアまで・・・?」
彼が、愕然としていると後ろから誰かが急に彼の肩に腕を回してきた。

「おう!遅すぎだぜ!主役のお前が来なきゃはじまらねえだろ!」

「雪之丞・・・主役って?俺がか?」

「オウ!」

「え・・・俺、何かしたっけかなぁ・・・?」
彼の発言にこける一同。

「あ、あんたね〜!自分のGS取得日ぐらい覚えていなさいよ!!」

「あ、そういえば・・・!」

『横島(クン・さん・先生)〜・・・』

「アハハハハ!すっかり忘れていました!」
(そっか、もうアレから一年経つ訳のか・・・
ああ、それで小竜姫様はあんな豪勢な食事を用意していてくれただったんだな〜)
猿神と謝罪を繰り返した上でようやく口にすることが出来た。
帰るときに、皆から色んな物を貰ったが何故かその理由がわからないまま
お礼を言って帰ったのだが、心なしか小竜姫、ワルキューレ、ヒャクメ
べスパ、パピリオ達が残念そうにしていたのを思い出した横島。
(悪いことしちゃったなぁ・・・今度、行った時でも謝ろう)

「ま、まあ、主役のピート君と横島君が揃ったんだ!始めようか?」

「そ、そうじゃのう!」
年の功なのか?唐巣とカオスが仕切り始めた。

「「では、ピエトロ・ブラドーと横島 忠夫2名のGS取得1年を記念し・・・」」

『乾杯〜!!』
二人の掛け声を、合図に祝杯をあげると宴は始まった。
周りは誰もが、笑顔で自分とピートの事を祝福してくれている。
周りは誰もが、幸せそうな笑みを浮かべている。
だからこそ・・・彼は固く心に誓った。
(守ってみせる・・・この光景もこの皆も、この世界を・・・)
その為により強くなる事を、隠した強い眼差しで天に向かって誓うのだった。
ポケットに入っている彼女の霊気構造の一部である蛍はわかるかわからない
ぐらいだが淡く美しいライトグリーンの光を放つ。

(色々な事が、あって楽しそうね・・・わたしの姿はもうみえないし・・・
 わたしの声も・・・もう届かないけど。
 あなたの歩こうとしている道は辛く厳しいモノなのかもしれない・・・
 でも、わたしは・・・わたしはいつでも貴方の側にいるから・・・
 だから!)





“頑張ってね♪ヨコシマ♪”
そんな声が彼は聞こえた気がして、少し口元を緩ませた。

 “ああ・・・俺、頑張るよルシオラ”
彼は心の中で呟いて言葉を返した。
今は見えない・・・でも、確かに彼の傍にいるであろう彼女に向かって。








〜おまけ〜
「あの・・・どうしてみんな俺を囲んでいらっしゃるのでせうか?」(汗)
お互いに、牽制している眼差しでバチバチとガンを飛ばしあう
姿に少し汗が流れ始める横島。

「どうしてって・・・先生の記念日を祝うのは弟子の務めでござる!!」
と彼女はそれとなる彼の腕を掴もうとするが・・・

「弟子は、弟子らしくしおらしくしているものよ?馬鹿犬・・・」
それを阻止せんばかりに、挑発をする妖狐の少女。

「うぬぬ・・・女狐め、ここでも邪魔立て致すかぁ〜!!」

「フフフ・・・面倒だけど相手してあげる、かかってきなさい!」
一瞬即発で睨みあう二人だが・・・

「おい、二人とも!今日は祝い事なんだから大人しくしてくれよ?な?」
彼の一声を聞いた途端に・・・

「「はーい(でござる)♪」」
借りてきた猫のように大人しくなる・・・。
つくづく、手間も苦労も掛かる妹分だよな・・・と思っていると
雪之丞が近づいて、彼の傍においてあった包みを開ける。

「ほーっ、色んな女から色んなモン貰ってるんだなぁ・・・」
この場では言ってはいけない爆弾投下発言をする。

「小竜姫に、ヒャクメに、ワルキューレに、べスパに、パピリオ。
 うん、ここら辺は顔なじみだな・・・
 お?水鏡?これは新しい名前だ・・・な?!」

「ば、馬『先生ぇ・ヨコシマ(クン・さん)〜####』は、はひぃぃぃぃ!!」
彼を取り囲んでいた彼女達の声に思わず、身を縮こませて顔を真っ青にし
返事をする。
「ふ〜ん、土曜日いないと思ったら・・・妙神山行っていたんだ〜?」#
職場の上司にあたる美神令子が神通棍を振り回し始めれば・・・

「小竜姫さまにヒャクメさん、ワルキューレさん、べスパさんに
 パピリオちゃんかぁ・・・随分、モテますね〜・・・」#
職場の同僚にあたる氷室キヌはネクロマンサーの笛を取り出し・・・

「拙者の散歩なんかより・・・随分楽しかったでござろうなぁ・・・」#
自称、彼の一番弟子犬飼シロは、霊波刀を構え・・・

「キツネうどんや稲荷寿しじゃ・・・許さないわよ?ヨコシマ?」#
美神(美神家から名前を借りた)タマモは炎を出現させる・・・

前方を4人が固めた。

「ダメですよ?逃げようとするなんて・・・横島さん♪」#
花井小鳩は、シメサバアンチーズバーガーを手に持てば・・・

「そうですよ・・・わたし達の質問にしっかりと答えてもらいます〜♪」#
魔鈴めぐみは、魔法のほうきを掲げている・・・

隣人である彼女と魔女の血脈を受け継いでいる彼女達二人に左方を固められ。

「で〜どんなコなの〜?この水鏡さんって〜・・・?」#
六道冥子は、十二神将すべてを出し・・・

「素直に答えた方が身の為よ〜・・・横島君?」#
彼女は、自らの空間にある机を浮かばせている。

日本いや、世界きっての式神使いの彼女と
机から生まれたツクモ神である彼女達二人に右方を固められ
完全に彼らの逃げ道がなくなってしまった。
もちろん後方は壁伝いなので動けられる筈もない。
「じ、じゃあ・・・お、俺はッ?!は、離せ!!横島ぁぁぁ!!」

「離すかぁ!!元はお前が悪いんじゃああああ!!こうなりゃ道連れじゃ〜!!」

『覚悟はいい(ですか・の〜・でござるか)!?』########

「「ぎゃあああああああああああ!!」」
彼女達に、お仕置き?を受けた二人がどうなったかは敢えて
記載しないでおこう・・・.
二人の名誉という物を守るためにもそのほうがいいのだろうから。





余談ではあるが、その実に滑稽な光景を月に棲む月神族三人の乙女達やら。
機械仕掛けのアンドロイドやらがその輪の中へ
入りたがっていたり、いなかったり。
空に優しげな眼差しを向けるかつての紫色の体をした魔神が
浮かんでいたとかいないとか。


―そんな愉快な日の出来事・・・だったとだけ記しておく。

 




あとがき
―とまあ、始まったわけですがいかがだったでしょうか・・・?
 お気に召しましたら光栄です!
 原作の横島君とは違った雰囲気を醸し出した彼の決意を描いて
 みたのですがどうでしたでしょうか?
 生意気な新参者ものの戯言だと思って下さい。
 アドバイス等もございましたら、よろしくお願いします。
 書き手は私、Hazelでした。ではまた・・・

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