ザ・グレート・展開予測ショー

嘘(絶チル)


投稿者名:すがたけ
投稿日時:(06/ 5/14)

 世界の半分は、嘘で出来ている。

 それは、オトナの世界を垣間見たコドモが最初に悟ること。


 でも、私は知っている。世界を構成している『嘘』は半分どころじゃ済まないということを。



 


 【嘘】





 彼は時々嘘をつく。

 私には嘘なんか通用しないということを知っているはずなのに、自分の気持ちを押し殺し、すぐにばれる嘘をつく。

 その度に彼は傷つき、痛みを背負う。


「大丈夫、君達は僕が守る!だから安心するんだ!」
 圧倒的な危険に晒され、絶望に囚われそうになっても、そういう嘘で私達を安心させようとする。

 たとえ足が震えていようとも。

 たとえ心が凍りつきそうであっても。

 震える足に鞭を入れ、凍りついた心に火をくべて―― 私達を守る盾となるために彼は嘘をつくのだ。

 そんな彼に私が出来るのは、一つしかない。



 ――――キュン!――――



「でも、内心では『あんな変態ジジィの手先に私達三人を渡すわけにはいかない』なんて思ってるくせに」


「言わんでいいッ!!そんなことまでッ!!」

 私に出来ること――それは、彼の心を読んで、その上でまぜっかえすこと。

「うっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃッ!何、妬いてんの?妬いてんのか、皆本?」

「素直やないんやからなぁ、皆本はんは」

 薫ちゃんと葵ちゃんの気持ちを引き出すには、そうすることが一番なんだから。

「うっ……うるさいッ!紫穂もいらないことを言うんじゃあないッ!!
 チルドレン……解禁ッ!!」

 ほら、皆本さん―― また嘘をついてる。

 言葉とは裏腹に、顔が真っ赤になってるわよ?






























 この世界の半分は嘘で出来ている。

 だけど、自分が常に正しい、としか思っていない偏った考えの人間よりも、自分の理想を信じきっている陶酔型の破綻者よりも、『嘘吐き』のほうがよっぽど健全だ。

「だから野菜を食べなさいといつもいつも言っているだろうがッ!!
 しかし、こんなに細かく刻んだピーマンやニンジンを避けるなんて、どこの人間国宝だ、お前はっ!!」

「え〜、私はちゃんと食べたわよー。そんな風に綺麗に取り除けるのって、葵ちゃんじゃないの」

「矛先ウチかいっ!?」

 だから、これくらいの嘘をつく私も、健全に近いのだろう―― 多分。 


「嘘をつくな、嘘をッ!!
 そんなことじゃ立派な大人になれないぞッ!!」

 ふふっ……嘘吐き。

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