天国に近いハート
投稿者名:フル・サークル
投稿日時:(06/ 5/14)
「本当に、良いのか・・・? 軍でなければならんと言う訳でもないのだぞ」
そこまで、そんなになってまで、貴方は
「いや、むしろ、軍だからこそあまり歓迎されはしないだろう・・・
彼らにとって奴は・・・・・・お前達は」
誰にも認められず、何一つ許されず、最後に、たった一つだけが―――
「魔界に住まう魔族とは言え、争いばかりが居場所ではない。昔とは違うのだ・・・」
その死だけを認められた貴方
「何が違うって言うんだい?」
昔の事なんか知らない。
あるのは貴方の為に、貴方と共に生きたこの一年足らずだけ。
「お前は・・・何と戦いたいのだ?」
ベレー帽を被った女魔族が私に訊いた。
「お前の敵は、何だ」
「敵、か・・・そんなもの、どこにいたんだろうね・・・」
貴方の敵は、何だったのでしょう。
仰せのままに、私はそれを打ち倒したでしょうに。
だけど、ああ、だけど。貴方の敵は。
貴方の本当の戦いは。
貴方は誰にも認められずひとりで戦い続けた。
宇宙の矛盾に、自分の定めに。
多くの部下を率いながらも、貴方の戦いはいつもひとりだった。
「魔界正規軍は、本来、神族と戦う為にある・・・だが、私は奴らと戦う為にそこにいるのではない」
私にではなく自分に語りかける様に、そいつは喋っていた。
何を思ってかは知らない。今はあまり知ろうとも思わない。
だけど何故か・・・わからなくは、ない。
きっと私も「そういう事」だから
「何が敵かなんて知らないよ。
ただ、私は・・・・・・あの方の為に戦う」
最後まで・・・私さえも
ああ、だけど、私には貴方がいた。
たとえ貴方は一人だったとしても。
「ふん・・・希望ではなく、決定事項か。まあ・・・それも良いだろう」
地獄にさえ見放された貴方。
その道のりは全て無に帰り、否定された。
だけど思い続けた貴方のその魂は、何よりも天国に近く。
「ならば、急ぐぞ・・・それと、この先、私は貴様の上官だ。言葉使いに気を付けろ」
私は留まり続ける。
今度こそ貴方を知る為に・・・見るべきものを見て、考えるべきことを考え、為すべき事を成す。
貴方の憎んだこの世界を知り、貴方の心をここで探す。
初めて踏んだ魔界の砂は、足を上げるたび強い風に運ばれた。
―――― FIN ――――
今までの
コメント:
- 切なくて。強くて。
……魔族ってなんなのでしょうね。
言葉一つ一つに決意があって。
強い女性達のやさしいお話。
賛成ですっ。 (ししぃ)
- 総制作時間、約一時間・・・・・・とことん即興向いてねえ(涙
こういうダメなもん読み返してると、30分ぐらいでちゃんとした作品仕上げられる人が本気で羨ましくなって来ます。
アシュ編終了後、ワルキューレと魔界に来ているベスパの入隊直前・・・な感じです。
軍に入ることを選んだ彼女が「何を思った」のかはちょくちょく気になる所です。 (フル・サークル)
- 連載の合間にあったであろう展開だと思います。
切なさがこみ上げてきます。
がんばれベスパ!
あと、厳しい事を言いつつもベスパを気遣っているっぽいワルキューレもかっこいい女ですね。 (AC04アタッカー)
- 他の全てがあの人を否定しても私だけは っていう揺るぎなさが彼女の魅力ですものねー
できれば、意固地さがこういう境地になるところを見てみたかったり。
>30分ぐらいで
く、くやしくなんてないやいっ(泣) (S)
- いつも楽しませていただいております。
べスパは大人の方に人気ありますね
己の信ずるもののために
己の愛するもののために
私もべスパに転ぼうかなぁ(笑 (虜)
- ベスパらしい、強さと優しさと言えば良いのでしょうか。
想い人の、死を望んだ姿に、彼女は何を思ったのか。
何を感じたのか。
それが、これからを決めるんでしょうね。 (とおり)
- 思い人を失った後の自暴自棄、そう解釈する事もできます。
でもそれを決めるのは誰でもないベスパ本人なんでしょう。
在り方を変える事になるのか、そうでないのかも、今後ベスパが
自分で決めていくのでしょうね。
原作の狭間にあり得た展開、面白かったです。 (aki)
- 切なくて、意地らしくて…とてもベスパらしいお話とおもいました。 (偽バルタン)
- ぐああ!もうこれ、凄まじくツボです。
ベスパ愛好者の端くれとして、この雰囲気に嫉妬を憶えずには(笑)
フルさんならではの深みのある描写と、空虚でありながらも自分のすべき事を感じるその姿……
ベスパよ、お前は美しいっ(握りこぶし)
実に味わい深いお話をありがとうございました。 (ちくわぶ)
- #ししぃさん#
後書きよりも早いご感想、ありがとうございました(笑)
アシュタロスの提示したその疑問は、ワルキューレも抱く所であって、ベスパもまたその答えを見い出そうとする・・・
彼女の入隊にはそんな経緯がある様に感じられました。
#AC04アタッカーさん#
原作では入隊したベスパが、分かる気はしつつもやや唐突な印象がありました。
だからこそ想像してみる余地も多い訳ですが。
ワルキューレは色々な意味で彼女の先輩となりそうに思えます。 (フル・サークル)
- #Sさん#
ちょいと歌ネタも入ってたり(ごにょごにょ)
ベスパの視点からのアシュタロスが揺るぎないのは、彼女自身の揺るぎなさでしょうね。
そんな彼女に基いた冷静な視点でもあったから、誰と相容れずとも真実を捉えられるのではと。
#虜さん#
やはり、こんな人がいてこんな風について来てくれる・・・そういう事をリアルにイメージし易い面があるからかもしれないと思いました。 (フル・サークル)
- #とおりさん#
「それが生きる者の務めだ」と言った時、アシュタロスは自らにも言ったのか、それとも伝える側でしかなかったのか気になってもいます。
ベスパもきっとその言葉から、先んじて彼の苦悩に気付いたのでしょうね。 (フル・サークル)
- #akiさん#
どの様に見る事も出来て、そこから「答えが彼女の中にのみある」と感じさせられる、原作での結末だったと思えます。
自棄と言えば確かに、このベスパは前向きに見えて、実は後ろしか見てない様でもあります。
#偽バルタンさん#
ベスパらしさというのも、結構掴むのが難しかったかもしれません。書き出してみて途方にくれました(笑)
ベスパらしさを感じて頂けたと言われると、書いてよかったと思えます。 (フル・サークル)
- #ちくわぶさん#
彼女にある空虚さとは、アシュタロスを失ったという結末の空虚さだけではなく戦いの空虚さ、動機の空虚さ、全ての始まりとなった世界そのものの空虚さともリンクしている様に思います。
最後までアシュタロスの側でいて、しかし同一化しない観察者のポジションを保ち続けた彼女だったからかもしれません。 (フル・サークル)
- まどかさんの作品は難しいなぁ(駄目挨拶)
「あの方のために戦う」。ある意味では卑怯な自己満足でしょうね。
もうすでにいない誰かのためといってしまえば、否定する存在すらもいないから。
だけどそれは、最愛の彼を、そして彼女を救えなかった悲嘆に暮れた彼女にとってのささやかな救い。
それを知っているからこそ、上司となったワルキューレも何も言わなかったのかもしれません。
しかし、三十分でこれですか(つД`) (天馬)
- #天馬さん#
ご安心下さい。書いてる私もよく理解していません(駄目返事)
うーむ、そういう見方もありますか・・・あまり救いを求めてるとは考えとりませんでした。
まあ、「あの方の為に」とは言い換えれば、「あの方について行くと決めた自分の為に」ですね。 (フル・サークル)
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