コノセカイデ
投稿者名:高森遊佐
投稿日時:(06/ 5/13)
懐かしい写真を見ている。
遠い遠い、遥か昔に撮った写真。
もう色褪せてしまっていて、元の色は分からなくなってしまっているこの写真を。
デジタルとか言う技術で、劣化しない写真も当時にもあったのだけれど、あえて古めかしいカメラで撮ったこの写真。
セピア色に染まった写真を見て郷愁を誘うなんて私も歳を取ったものね。
でも、脳裏には今でも鮮明に皆の顔が蘇る。
人間なんて信じられなくなっていた私を、このセカイと敵対していた私を優しく包んでくれた皆の顔が。
目を瞑っただけで皆の顔が浮かんでくる。
恥ずかしがりやで見栄っ張りな、当時の私の保護者の女性の顔。
いつもニコニコしていて、あの頃の私が最初に心を開いた女性の顔。
ひたすらバカでスケベで騒がしい、あの集団のムードメーカーの少年の顔。
何かにつけて喧嘩した、人狼の少女の顔。
遠い遠い昔の思い出。決して忘れない、忘れることなんて考えられない、大切な時間。
私がこのセカイで一人ぼっちにならないように、そんな事を考えていたのかどうか、
今はもう定かでは無いけれど。
そんな事聞くまでも無かった事。
彼らのおかげで私は今ここに居る。ここにいてもいいと思える。
人狼の少女以外はもう逢えないけれど、人狼の少女とももう殆ど逢わなくなったけど、
いつでも私の心は一つ。私達の心は一つ。
写真の中でギコチナイ笑顔の私と、私を囲むように映っている皆へ。
ありがとう。
まだ私はこのセカイに居られます。
このセカイで生きて行こうと思う。このセカイで生きて行きたい。
ミンナ ガ イタ コノ セカイ デ
了
今までの
コメント:
- 椎名先生の描く世界の優しさと残酷さが込められていて。
きゅっとなります。
漫画で描かれた現在を知っているからこその
見えてくる未来。
あーもう、やっぱGS美神という作品好きって
そう感じさせてくれてありがとーでしたっ。 (ししぃ)
- >人狼の少女とももう殆ど逢わなくなったけど
この一言が深いなぁって
短い文章にぎゅうっと込められた気持ちがすてきでした。 (S)
- この短めの文章の中に、椎名先生の作品世界がギュッと凝縮されているように思えます。
敢えて銀塩写真をチョイスするというのがタマモの性格付けになってるんでしょうね。
「劣化するからこそ」というのがとても情景にはまっていると思いました。
うまい言葉が見つかりませんがとてもよかったです。 (AC04アタッカー)
- 時間とは止まらずに流れていく物。
それでも、そこであったこと、思いでは残りつづけていくのですね。
すてきなお話をありがとうございました。 (美尾)
- その写真を見つめているタマモは、この世界のどこで、何を思い過ごしているのか。
そんな事を考えながら、写真の思い出が――写真の中の人たちとの思い出が、彼女に与えた色々なものについて想像させられます。
ピートやカオス、マリアとも少し違う形で人間達の時代を歩んで行く彼女の姿を予感しました。 (フル・サークル)
- 人間である以上、死は絶対不可避。
だからこそ、その生き様は美しく儚い。
彼女のいまわの際にて浮かぶ情景とは?
すごい作品をありがとうございます (虜)
- コノセカイで、ですかあ。
残酷な時間と、過ぎ去った日の思い出と、タマモにはきっと両方大切なのでしょうね。
肩で風をきってあるく、かっこいいタマモを想像いたしました(^^ (とおり)
- >ありがとう。
私はこの言葉にのまれました。
このありがとうは深い…一言の中に集約されているように感じました。
文に短いながらも重みがあるからこそ説得力があるのですね。
(アンクル・トリス)
- タマモの未来はどのような形だったのでしょう。
でも、最後のありがとう、という台詞からして、きっと幸せなのでしょう。
細かくは語られない背景に思いを馳せる、自然とそうさせてしまう短くも美しい話でした。 (aki)
- 遅くなりましたが、GTYの皆様初めまして。
高森遊佐と申します。以後お見知りおきをお願いします。
某所のチャットにて投稿を決めて実際投稿して以来、気付けば錚々たる面子が一度に投稿されている状況で、
こんな出来損ないが名前を連ねている事は恐縮しきりでございます。
こんな私に暖かいコメントを頂いた方々に感謝の気持ちを込めてコメント返しおば。
>ししぃさん
優しくも残酷な世界、まさにそうですね。
彼女以外にも長く時間を生きる者達にとって、彼らの存在はとても大きな輝きを持っている事でしょう。
>Sさん
短い中に詰め込めるだけ詰め込んでみました。
元はチャットにて数分で即興で書いたモノに、ちょっとした肉付けをしただけなので短いという裏話は秘密です。
>AC04アタッカーさん
写真は劣化しますが、美しい思い出は劣化しません。むしろ美化される事もありますしねw
椎名先生の描く世界を少しでも表現できているのならば、私としても書いた甲斐があるというものです。 (高森遊佐)
>美尾さん
時間が流れ、失われるからこそ思い出は美しいのかもしれませんね。
>フル・サークルさん
ピートも彼女と同じような美しい思い出と辛い別れを胸に生きていくのでしょうね。
カオスは幸か不幸か、そう遠くないうちに呆けてしまうのですが、
忘れるという事は楽しかった事と同時に辛い、嫌な記憶も無かった事にできる訳で。
そこにマリアは何を思うのでしょうね。
>虜さん
生きている限り、その生を輝かせたいものです。
死んでも生きられる世界ですが、おキヌちゃんも言っているように生きているって事は素敵な事ですね。
>とおりさん
取り残される悲しみはあっても、ソレを引きずったりはしない、前を向いて歩く彼女の姿。
それを同情なんてしたりしたら、彼女の思い出への冒涜となりますね。
>アンクル・トリスさん
ありがとう。美しい言葉ですよね。
色々あって最後にこう言えるって素敵な事だと思います。
>akiさん
細かく語るのは野暮ってもんです。
ありがとう。この台詞が言える人生であった事だけはここに記しましょう。 (高森遊佐)
- 思い出になってしまったけど確かに皆はこの世界にいた、そのことを忘れないためにも生きていこう。
というタマモの決意のようなものが伝わってきました。 (いも)
- 最後の台詞に、悲痛を感じました。
タマモに限らず、GSに出てくる人とは異なる時間を生きるキャラ達はいずれ皆こんな経験を…と思うと哀しいですね。
面白かったです。 (偽バルタン)
- 遠く過ぎ去った時間の向こう、写真は色あせてしまうけれど。
見て聞いて、感じて、今自分がここにいること。
離れていても、別れていても、もう会えなくなったとしても。
セピア色の思い出は、目を閉じればきっと色付き、動き出すのでしょう。
ああ、優しいこの雰囲気に包まれて胸の奥があったかくなりました。
初見にもかかわらず興奮気味で申し訳ありません。
とってもとっても素晴らしい情景をありがとうございます。 (ちくわぶ)
- >いもさん
彼らがいたからこそ、このセカイにタマモはいられるのではないでしょうか。
それこそ美神達がいなければ、美神達が退治の依頼を受けなければタマモは除霊(っていうのかな?)されていたでしょうし。
>偽バルタンさん
別れは悲しいものですが、きっと新しい出会いがまたあるはずです。
>ちくわぶさん
興奮して頂けて書いた方としては嬉しい限りです。
GS美神世界は優しいけど、残酷。だけどやっぱり優しい世界ですね。
ファンとしてはその世界に生きるキャラクター達の幸せを願うばかりです。 (高森遊佐)
- モノよりオモイデ。モノは劣化しても、この想いは永遠の輝き。
短いSSでありながら、その根底にはとてつもなく深いものがあって、何倍にも何十倍にもSSを楽しめました。
最後の一文の中で、彼らの存在がすでに過去だったことに、若干の悲しみを覚えつつ。
投稿お疲れ様でした (天馬)
- 偶々見返してみれば新たなコメントがっ!
と言うわけで
>天馬さん
思い出が美しいだけに思い出が辛いという事もあるでしょうが、彼女はきっと強く生きてくれるでしょう。
だってそうじゃなきゃ切なすぎですしねw (高森遊佐)
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