ザ・グレート・展開予測ショー

屋上にて


投稿者名:がま口
投稿日時:(06/ 5/ 4)

 それは突如としてやってきた。

「―――!! う・・・イタタタ・・・」

仕事が入ってないある日の午前中。
急に横島が腹をおさえて痛がりだした。

「どーしたの、ヘンな物でも拾い食いしたの?」
「うなぎと梅干をいっしょに食べちゃったんですか?」

「い、いやそんな冗談・・・ぐっ、いだだだだだだだっ!!」

なんと、事務所の床にばったりと倒れる横島!

「きゃぁっ!お、おキヌちゃん!救急車 救急車!!!」
「はっ、はいいっ!」

     
      ピーポー ピーポー ピーポー



                                     ――――屋上にて――――



「まったく、人騒がせなんだから。」
「ははは・・・すいません・・」

ここは白井総合病院の病室。時刻はとっくにお昼を過ぎているている。ベッドに寝ている横島を取り巻いているのは事務所の面々。

「急性盲腸炎ですね。手術しときましたから。」

隣の医者がカルテを書きながら事務的に病状を説明する。

「術後の経過も問題ありません。でも念のため一日入院しましょう。」
「そうですか・・・どうもありがとうございました。」
「それじゃ、お大事に。」

           カラカラカラ

「よかったですね、横島さん。」
「ああ、まったくあん時はホント死ぬかと思った・・・」
「しっかし、たかが盲腸くらいであんなおーげさに痛がるんじゃないわよ。こっちがびっくりしたじゃない。」
「なっ! あ、あの時はマジで・・うっ!てて・・キズが・・・」
「ま、まぁまぁ二人とも。」
「でも本当にびっくりしたでござる。病院に着いていきなり『手術だ!』なーんて言われて、
おキヌ殿は半泣きになってたし、美神殿は美神殿で・・・・・」

「ん〜?私何かしたっけ(じろり)!?」
「ひっ、ひゃいぃーん!な、何もナカッタデゴザル。」
「棒読みだけど分ればいーのよ。」




「クスッ、同僚の方にめぐまれてるんですね。」




「うぇ?」

その声は隣のベッドから聞こえてきた。

「え・・・えぇっと・・」
「あ、ごめんなさい!本当に楽しそうだったから・・・あっ、私茜(あかね)っていいます。」
「あ・・・・横島ッス。」
「横島さんですか。よろしくお願いしますね。」

そう言って、ショート・ボブの女性はほほえんだのだった。


「へぇぇ〜、皆さんゴースト・スイーパーなんですか!」
「そうよ。私が所長で、横島クンも丁稚だけど一応資格は持ってるわ。」
「そうなんですかー、大変そうですね。」
「そーなんスよ!!俺もー毎日毎日比喩でも冗談でもなくホンッキで死にそうなんスよ!
それでも美神さんのチチシリふともも見たさに薄給でもそれこそ馬車馬の・・・よ・・・・うに」

 美神のコーク・スクリューがゴッ!

 横島の顔がべゴッ!

「おほほほほ、気にしないで。コイツの虚言癖だから。」

そんな事を言いつつ攻撃の手をゆるめない美神。

「そっ、それより茜さんはご病気なんですか?」

横島がヤバイ音を立て始めたので話題をかえるおキヌ。

「私・・・ですか。ちょっと事故で・・」
「事故?」

「――あの日は私の彼氏と車でドライブしていました。彼免許持ってなかったから私が運転してたんです。
そしたら、酔っ払い運転の車にひっかけられて・・・・」

 いつの間にか横島と美神も話を聞き始めていた。

「私は軽傷ですみました。でも・・・彼、頭を強く打ったらしくて・・・・今は集中治療室に・・・・・」
「そ・・・そうだったんですか・・」

「あ、いやそんな暗い顔しないでください!確かに今は重体ですけど、今日にでも一般病棟に移る予定なんです。」
「え、そうなんスか!?」
「うん、だいぶ具合が良くなってきたらしくて・・・ホントによかった。」


              カラカラカラ

「茜さーん、検診です。」
「あ、はーい!」

「ヨコシマ、なんか私たち邪魔っぽくない・・・」
「うーん・・・じゃあ談話室の方にいくか?」
「そうね。」

横島はそばにある松葉杖をとる。

「横島さん、大丈夫ですか?」
「ははは、平気へーき!」

              カラカラカラ

廊下は看護士や患者でごったがえしていた。        

「えーと、たしかこっち・・・

           ドンッ

「うわっと!」
「あっ、失礼!」

 ぶつかってきたのは、白衣を着た医者だった。そして謝罪もそこそこにまた走っていってしまった。

「な、なんだったんでござるか・・」
「さぁ?」

まぁここは病院だ。医者だって急ぐ用でもあるんだろう。

横島たちはさして気にも留めずまた歩き出したのだった。


 ―数時間後―

 外はもう日が暮れようとしていた。

「んじゃ、そろそろ面会時間も終わりだし帰るとしますか。」
「そうですね。」
「せんせえ、また明日でござるぅー!」
「お、おう・・(小学生か・・・)」

          バタバタバタ

「ふぅ、俺も帰るか・・・」


          カラカラカラ

 病室は夕日によってオレンジ色に染め抜かれていた。

そんな中、横島はあることに気づいた。

「・・・あれ・・茜さんがいない・・・」

隣のベッドはからだった。

(散歩か・・・?)

と、その時

         ガラガラガラッ!!

「横島クンいるっ!!?」
「どわぁっ!み 美神さん、どうし」
「どーしたもこーしたもないわよっ!」
「美神殿っ、早く屋上に行かないとっ!」
「ちょ、ちょっとちょっと。屋上・・・って何かあったんスか?」

「ひ、人が飛び降りそうなんですっ!!」



           え

「えええええぇぇぇぇえええぇぇっっ!!!」


 美神の愛車のコブラは当然屋根が無い。
そこに、偶然シートを倒したタマモが不安定な屋上の端にたたずむ人を発見したのだった。


「とっ、飛び降りっていったい誰がっ!・・・・・・」

視線の隅にからっぽのベッドがうつる。


      「まさか」




        ビュオオオォォォォォォ

 屋上。その人物は夕日をバックにそこにいた。

         ガチャ ギイィィ

屋上の扉が開く音に思わず振り向く。

「そ・・・そんなトコいたら風邪ひくっスよ。




 茜さん」

茜はゆっくりと横島の方を向く。


「・・・・・ったじゃない・・・・」


今にも消えそうな声だった。

「・・・もう峠は越えたって言ったじゃない・・・・・もしかして今日にも意識が戻るって言ったじゃない・・・・・
なのに・・・・・なのに・・・・・・・・・・





彼、死んじゃった。」

彼女の頬に一筋の光が見えた。



―数時間前―

「うわっと!」
「あっ、失礼!」

          ダダダダダッ

           ガラッ!

「茜さんいますか!?」
「ど、どうされたんですか?」
「大変です!今、あなたの彼の・・・・


「容体が急変!? ふざけないでっ!!!・・・彼は私の全てだった・・・・・

 でも・・・・・・・原因を作ったのは私なのよ。」

横島の肩がビクンと震える。

「私がドライブなんかに誘わなければ・・・・・事故なんか起こさなかったら・・・・・彼は・・・・・・・
 だから・・・・私・・・もう・・・」


「・・・ダメだ・・・」

横島がゆっくり歩き出す。

「よ、横島クン・・・」
「絶対に死んじゃダメだ・・・・その彼のためにも・・・・・

  ゼッタイに死んじゃダメだ!!」


「来ないでっ!!」

          ビクッ

「これ以上来たら・・・・」

        
        ヒュウウウゥゥゥ


(遠い・・・・


 助けられない・・・・・


 走れば届くか?


 ・・・・・・・無理だ・・・・)



        ヒュオオオオォォォ

    




    チクショウ オレハ・・・・オレハ









         ムリョクダ


 ――夕日



      メノマエノ ヒトヒトリ



 ――東京タワー



       タスケラレヤシナイ


      今、完全に太陽が沈んだ。


「・・・・横島さん、あなた・・・いい人ね・・・・
 けど・・あなたには関係ないことなの。ほっといてくれませんか・・・」



「・・関係なく・・・・なんかない。」
「えっ?」

「俺も、大切な人を失ったことがある・・・・・・
 俺が馬鹿だったせいで・・・・ほんとに何もしてやれなかった。
 今のあなたみたいに自殺も考えたこともある。
 

 けど、俺はこうして生きている。


 形は違っても、また愛せる可能性がある・・・
 俺はそれを信じて今日まで生きてきた。

 その彼のためにも生きるんだ!
 こんな間違った死に方されるのはイヤだっ!!」


「・・・・ずいぶん身勝手な話ね。」
「ゴメンなさい・・・」

「今日会ったばかりのあなたにそこまで言われるなんてね・・・・

 だったら、私のことを彼以上に思ってくれる人がもっといるかもね。」

彼女に笑みが戻ってきた。

「茜さん・・・」

彼女は横島たちの方へ歩き出した。










      ビュオウッ!!

一陣の風が、吹き付けた。 彼女に向かって外側に。


         あ


彼女はバランスを失い奈落の底に向かって投げ出される。


        カランッ

美神の横から松葉杖だけを残し横島が消える。



       死なせないっ!


横島が茜の肩をつかむ。そして回転するようにして茜を押し戻す。

その瞬間、横島は反動で外側に倒れる。

「横島クンッ!!!」

そして、自然の摂理に従い横島の体は地面への自由落下をはじめる。


     (もう  だめだっ)


          ガシッ!

          がくんっ

 横島のそで口を誰かがつかんだ。上を見上げると

「美神さん!おキヌちゃん!それにタマモにシロっ!」
「せんせえ、言う順番がおかしいでござるっ!」
「バカ言ってないで気合いれなさいっ!!」

      ぎゅうぅぅ  プチプチ

「美神さん!このままじゃ握力もソデももちませんよ!」
「あぁもうっ!!こーなったら一気に引き上げるわよ!」
「だ、大丈夫なの!?」
「知らないわよっ! 3!」

誰かが走りこみ、ソデをつかむ。

「2!」

「あ、茜さんっ!」

「1っ!」

           『どりゃああぁー』

           ずざざざざざざざっ

    ゼーッ ゼーッ  はぁはぁ  はーっはーっ

「ヨ・・・ヨコシマ」
「ん、なんだ?」
「えーっと、ここは病院でアンタは病人よね・・・」
「・・・・スマン」

「横島さん・・・その・・・・・ありがとうございました。」
「・・・茜さん、こっちこそありがとう。」
「――はいっ!」

もう夜もふけ、月明かりが屋上をやさしく照らしていた。


 ―翌日―

病院の入り口には事務所の面々と茜がいた。

「いろいろとお世話になりました。」
「もう二度と戻ってくるじゃないぞ。」

「うーん、退院とゆーより出所ね。」

そんな中、茜が横島に近づいていった。

「横島さん、短い間だったけれどあなたに会えてよかった。私、これからも生きていけそうです。」
「そりゃあよかった。」

「それで・・・これはほんのお礼です。」

なんと、茜が横島の顔に接近し・・・・・・・

              チュッ                    「あっ!」「なっ!」

「えへへ、横島さんもがんばってくださいね。」

そう言って茜はパタパタと立ち去っていった。

「・・茜・・・さん」

横島はホッペに手を当ててぽーっとしていたりした。

だが!同時にえらい殺気を感じたっ

「よ・こ・し・ま・さん!鼻の下が伸びきってますよ・・・」
「んふふ、もう2〜3日入院する?」

「え・・・あの・・・・その・・・・・・あああっ」


 その後、横島は入院費用を給料から天引きされ、ショックで二階から落ちたとさ。

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