たどりゆく道
投稿者名:桜華
投稿日時:(00/ 7/ 2)
たどりゆく道
「……以上、他の者は帰っていい」
その言葉に、自分の番号を呼ばれなかった者達が、肩をうなだれて帰っていった。
残った者達の間には喜びはなく、そこにあるのは、さらなる戦いを前にした緊張。
一人の少女がいた。黒髪の、まだあどけなさの残る。15、6の少女。
GS試験。その予選を通ったその子の顔にも、緊張と不安が読み取れてた。
本選開始は、一時間後。
少し気をほぐそうと、少女は近くのレストランに赴いた。
「みんな、強そうな人達ばかり……」
勝てるかしら。
そんな思いが、少女の胸中を支配する。
自信は、あった。彼女は、父親も母親もGSだし、幼いながらも、時たま仕事の手伝いをする事もあった。その時の経験は、他の受験者達には無い物だ。
だが、いざこの場所に来てみると、それが単なるうぬぼれのように思えてくる。
「ふう」
甘味の効いたショートケーキを食べながら、彼女はため息をついた。
「パパもママも、よくこんな試験通ったものだわ」
今はこの世界の第一線で活躍する二人である。その娘としての周囲からの期待が、少女の小さな肩に重くのしかかる。
そっと。
彼女は、自分のカバンからそれを取り出した。
それは、お守りだった。彼女のではない。彼女の父親の、だ。
彼女の父親が、まだ17の頃から、肌身離さず身につけていたお守り。いつのまにか、自分のカバンの中に入っていた。
自然と、彼女の顔に笑みが浮かぶ。
彼女がGSになることを両親に打ち明けた時、父親はかたくなに反対した。
何故? と、彼女は思った。ただ、免許を取るだけだ。ちょくちょく仕事を手伝っている今と、結局は何も変わらない。いや、それすらも合法化するのだから、いいことづくめではないか。
彼女にとって、父親の反対は予想外であり、ショックだった。
とてもやさしい父だった。母とも仲がよく、仕事も出来た。事務所はいつも盛況で忙しかったが、たまの休みには、必ず自分と遊んでくれた。小学校の頃、将来の夢という作文にお父さんのお嫁さんになると書いたことがあった。さすがに今はそうは思わないが、父の一番大切なものでありたいと思っている。父の側にいつまでもいたいと思っている。
だからこその決意であり、それゆえに、父の反応は悲しかった。
だが、彼女の決意は変わらなかった。どうしても、GSになりたかった。その気持ちは、理屈ではない。
初めて、父親に反発した。初めて、父親とケンカした。初めて、父親をののしった。
試験当日。つまり今朝になるまで、父は結局、自分の決意を認めてはくれなかった。
気まずい雰囲気のまま、父の車で会場まで送ってもらった。
気まずい雰囲気のまま車を下り、そして別れようとした。
お守りをもらったのは、その時だった。
無言でそれを自分に手渡し、
「がんばれよ」
とだけ言って、父は去って行った。
愛想も何もない言い方だったが、それで充分だった。ともすれば、彼女は涙を流すところだった。それほどに、父の激励は嬉しかった。
「頑張るよ、パパ」
お守りに、彼女は語りかけた。
心が落ち着く。先ほどまでが嘘のように、その心に自信が満ちてきた。
「必ず、合格するよね。だって、パパの娘だもの」
彼女は、お守りを腕に巻きつけた。
「応援、よろしくね。パパ」
「さあ、次は注目のカードです!
一回戦、第五試合。 期待の新星! 横島蛍選手です!」
大げさと思いながらも、蛍は笑顔で入場した。
「蛍選手は、なんと、世界最強と称されるあの横島GS夫婦の娘であります!」
蛍の人物紹介に、客席から歓声が沸き起こる。
蛍は、大きく深呼吸し、対戦相手を見据えた。不思議と、落ち着いていた。緊張しすぎず、さりとて、リラックスしすぎず。いい精神状態だ。自分の力を、100%引き出せる状態。
「パパのおかげね」
呟く蛍の右腕には、赤いバンダナが巻かれていた。
「それでは……試合、開始!」
その日。
後に親子にわたって最強の名を勝ち取る事になる少女が、GS資格を手に入れた。優勝という、華々しい記録とともに。
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初めまして。こちらには初めて書きこませていただきます。桜華と申します。
さてさて、蛍ちゃんの物語、いかがだったでしょうか?
書きたいことは、色々とあったんですけどね。なんせ、テスト前で時間が無くて。
まあ、そのストレス発散のために書いた物語なんですけどね……
すでにお気付きの事と思いますが、母親をはっきり言ってはおりません。だって、誰でもいいし(笑)。各人、横島に引っ付いて欲しい人を想像してください。
それと、題名にはたいして(まったく)意味ありません。まったく思いつかず、苦し紛れにつけました。笑ってやってください。一応、父親と同じ道をたどっていると言うことで。
それでは、この辺で失礼します。
ああ、化学がやばい。数学も。
今までの
コメント:
- すんごいステキです〜・・・。蛍ちゃんもですけど、横島パパも・・・
何か、本当にパパっぽくて・・・あう。ステキです〜。
テスト、大変でしょうが頑張って下さいませ・・・って、私も人のこと
言ってられません・・・(苦笑) (馬酔木)
- んーーーーーーーもうサイコーおもしろいです (ひのめ)
- ええ話や〜(じ〜ん)
と、「嫁取り物語(その1)」の1コマのような状態になっています。
なんか古き良きオヤジを感じさせますね、横島クンが。
こう言う男に私はなりたい。
>テスト
これこそまさに「たどりゆく道」(苦笑)
それも終わってみれば良い想い出・・・になるわけあるかーっ!!
試験はいやじゃ〜!!単位が、単位がッ!! (kassy)
- バッチグーです。
桜華さん、テストなどほっといてここの専属小説家になった方がいいです(笑)
で、感想。
椎名先生が再連載するとしたら(いや、してほしいけど)このエピソードは
必ずやると思います。ただ、そこで問題なのが横島の奥さん。
この話を読む限りでは母親も一流のGSらしい。
そう考えると大分絞られる気が・・・。
・・・・・なんか長くなりそうなのでここで止めます(笑) (NEWTYPE[改])
- ↑横島の花嫁候補となる女性陣はみんな若いんですから(サザエシステム)、例え連載終了時には一流のG.S.でなくても、それからの霊能力者としての成長は期待できる筈です。はっきりいって、ご都合主義ですが(苦笑)。
ですから極端な話、小鳩や愛子、それに冥子にだって(笑)十分『世界最強』になるチャンスは有るのですよ、きっと……まあ、そう思い込みましょうよ(弱気)。
さて、感想です。
(「煩悩の部屋」での投稿を念頭に、)相変わらず纏め方が上手だな、と思いました(偉そう)。
ともあれテストの方、頑張って下さい。 (Iholi)
- 最強GS夫婦になるとしたら、やっぱり美神さんかおキヌちゃんでしょう。
そして、美神さんと結婚していたら、名字は美神です。根拠は・・・有りません。 (山屋)
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