ザ・グレート・展開予測ショー

五月雨


投稿者名:すがたけ
投稿日時:(06/ 4/30)

 私の心に、雨が降る。

 あのお方を裏切ろうとする私の心を苛むかのように―― 責めるように、雨が降る。

 あのお方が憎い、という訳ではない。

 確かに恐れてはいたが、天下に号するのはあのお方を置いて他にない……そう思っていた。

 だが、今この京に大軍をもって臨むのは明智のみ……その事実を知って以来、私の心に延々と何かが囁いていた。

 今が千載一遇の機会ではないか、と――。

 馬鹿な!道三様の跡を継ぐ者は……私が夢を託したのは、あのお方以外にいないではないか!

 囁きを振り払うべく、頭を振る。

 しかし、その囁きは染みのように私の心に拡がり、心地よく私の心を蝕んでいった。







 時は今 雨がしたしる 五月かな







 美酒のような甘美さで、私を酔わせるような調べで心の中に鳴り響く雨音は ―― 強さを増した。

 後戻りは、もう出来ない。

 意を決し、私は叫ぶ。
「敵は、本能寺にあり!!」

 ああ―― 道三様も、あのお方も……信長様も仰っていたな―― 男なら、天下を狙え、と。

 そして今、私は天下を狙う。

 裏切りと罵られても構わない。これは、私の……明智十兵衛光秀の、男としての意地の通し方なのだ。

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