ザ・グレート・展開予測ショー

誓い〜欲しかったもの〜


投稿者名:寿
投稿日時:(06/ 4/29)

この作品は私の「誓い」「誓い〜剣と盾〜」の続編にあたります。
事前に前作を読んだ方が解かり易いかと思います。


私の親友二人に恋人ができた。
それは純粋に喜ばしく思う。
私にも恋人がいる。
私より小さくて目つきの悪い恋人が。
それなりに楽しく付き合っているが私は彼から贈り物を貰った事が無い。
氷室さんは「巫女装束」を、一文字さんは「木刀」を。
物が羨ましいわけじゃない。
その思い出が羨ましく思う。
私には今欲しいものがある。
ひとつは彼との素敵な思い出。
私だって女ですから、恋人との素敵な体験はしてみたい。
そしてもうひとつは・・・強さ。
悔しいことに彼は私より強い。
彼の実力なら私のことを護ってくれるだろう。
でも私は護られてばかりではいたくない。
だから力が欲しい。彼と堂々と並ぶために。
だからだろうか?私は彼にこんなおねだりをしてみた。


「なに?」
俺は自分の耳を疑った。
こいつからこんな事を言われるとは夢にも思わなかった。
「ですから、横島さんに私と勝負してくれるよう頼んで欲しいんです!」
訳が分からない。
「なんでまた?」
「あら、おかしいかしら?あなたがあいつは強いってよく言っているから興味をもっただけですわ。」
強い奴と勝負したい。その気持ちはわかる。
俺がそれを否定するわけにはいかない。しかし・・・
「やめておけ。」
「何故かしら?」
「あいつが受けるとは思えん。よしんば受けたとしてもおかしな気持ちからだ。
そんなのがいい勝負とは思えん。」
実際のところ、あいつが受けるとは思えん。
この頃氷室と付き合いだしたせいか、おかしなことをするとは思えんが。
「だからあなたに頼んでいるんです。あなたは彼の「親友」なのでしょう?」
「まあな。」
「それに氷室さんにも立ち会って頂けばおかしな事もしないでしょう。」
ちっ!読まれてやがる。
「わかった。頼むだけ頼んでやる。」
何度も言うがあいつが受けるとは思えん。それに・・・
「あいつは強いぞ。お前が考えているよりずっとな。」
「わかっていますわ。だから勝負してみたいんです。」
なにか考えがあるのだろう。
たまにはこいつの為に骨を折ってやるか。


数日後
私は横島さんと向かい合っている。
雪之丞と氷室さんが頼み込んでくれたらしい。
「いやじゃーー!なんで試合なんかしなきゃいかんのじゃーー!!」
「やかましい!一度は認めたことだろうが!!」
まあ、半分押し切ったようですが。
「横島さん、今回は勝負を受けてくださってありがとうございます。」
「あのさ、弓さん。やめない?そうだっ!これからみんなで遊びに行こうよ!
ダブルデート!とか言ってさ?」
「魅力的なお誘いですがお受けいたしかねますわ。」
「横島さーん!がんばって〜〜!」
どうやら氷室さんは友達より恋人の応援をするらしい。
女の友情とは儚いものですわね。
そんなことを考えながら私は改めて横島さんと向き合う。
私は試してみたい。自分の力が彼にどこまで通用するかを!
「準備はいいか?」
「いいかぼけーー!!」
「よろしいですわ。」
「いいみたいだな、いくぞ。」
「人の話をきけーーーーー!!」
「それじゃ始め!!」
「シカトかよ!!」
雪之丞の言葉で勝負が始まった。
「本気で行かせて頂きますわ!!」
私は横島さんに向かって走り、薙刀を打ち下ろす!
いける!!
「あぶねぇ!」
避けられた?くっ!
続けて攻撃を繰り出す。彼に文珠を使わせるわけにはいかない!
「はぁ、はぁ、流石ですわね。」
当たらない。私の攻撃は全てかわされるか霊気の盾で弾かれてしまった。
「でもまだですわ!弓式除霊術奥義!!水「はいっ、終わり。」晶・・・」
いつのまにか横島さんの霊波刀が私の首に当てられていました。
水晶観音発動の一瞬の隙を突かれた!?
「それまで!!勝者横島!!」
私はまだ状況を理解できない頭で彼の言葉をきいた。


「どうだった?」
雪之丞が私にそう声をかけてきた。
「惨敗ですわ。悔しいですけど。」
そう結果は私の惨敗。
彼に文珠を使われるどころかたった一回の攻撃で負けてしまった。
悔しい。
頭で分かっていてもここまで実力差を見せ付けられると悔しくてしょうがない。
「言っただろう?あいつは強いと。」
「そうですわね。さすがあなたのライバル!と言ったところですかね。」
「へへっ、まあな。」
そう言う彼は嬉しそうだった。
ライバルが褒められることが嬉しいのだろうか?
ライバルという物がいない私には分かりかねる感情だがそういうものかもしれない。
「そういえば横島さんたちはどこに?」
「ああ、あいつらなら帰ったぞ。なんでも仕事があるらしい。」
「そうですか。今度改めてお礼を言わなければいけませんわね。」
「そうしろ。」
それきり会話が途絶えてしまった。
もう少し励ましの言葉をかけてくれてもいいんじゃないかしら!?
少しは気を利かせなさい!この朴念仁!!
「それで聞かせてもらえるのか?」
「えっ?」
私が心の中で愚痴をぶちまけていると唐突にそう聞いてきた。
「だからなんであいつと勝負したいなんて言い出したんだ?」
「それは・・・」
言える訳が無い。
少しでもあなたに近づきたいからなんて・・・
私はどう言っていいかわからなくて俯いていると突然・・・
「きゃ!」
顔に冷たい何かが押し付けられた。
「へへっ、プレゼントだ。」
慌てて顔を上げるといたずら小僧のような表情を浮かべた彼がいた。
そんな彼が私に渡してきたのは一本の冷たい缶ジュース。
「なにをしますの!?」
「まあ良いから飲めよ。」
私は憤慨しながらも彼の言葉に従った。
それは冷たく、私の火照った体を落ち着かせてくれた。
不思議な感じがした。
それは体だけでなく心も落ち着かせてくれたから。
「なあ弓。なんで強くなりたいんだ?」
「おかしいかしら?」
「おかしくはないさ。ただお前は十分に強いのになんでそう力を求めるのか気になっただけだ。」
十分に強い?今あなたのライバルに・・・
あなたと同等の力を持つ人に手も足も出なかった私が?
「どうして・・・」
私は憤怒、悔しさ、惨めさ、そんな感情が入り混じってこんがらがった頭からなんとかそう口にした。
「お前は強いさ。少なくとも俺の背中を任せられるくらいにな。」
あっ・・・・
彼がなにげなく口にした言葉。
私が聞きたかった言葉・・・
「そう・・・あなたはそう思いますの?」
「ああっ、思うぞ。」
戸惑いも無く返された言葉。
それには特に特別な感情は含まれていない。
だからこそ嘘じゃないと思える言葉。
「それでもまだ強くなりたいと思うなら俺が鍛えてやるよ。」
私は何もいえなくなった。
私の心の中を満たしている感情・・・
それは「歓喜」
「っ!」
私は今にも溢れ出しそうな感情を抑えるため一気にジュースを飲み干した。
それはまた私の心を落ち着かせてくれた。


私は今日欲しかったものを手に入れた。

ひとつは思い出。

決して華やかではないが、一本の缶ジュースと共に語られた私の求めていた言葉。

ひとつは強さ。

私は少なくとも彼に認められる力を持っているらしい。

でも満足はしていない。だから・・・

「あなたがそうまで言うならお願いしようかしら。」
「なっ、人がたまには優しくしてやればてめえ!」
「あ〜ら、なにかしら?」

だから誓おう。

私は強くなる。

自分のために、そしてあなたのために。

たった一本の缶ジュースの思い出にかけて。

戦士として、女として、堂々とあなたのパートナーになれることを祈って・・・

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