ザ・グレート・展開予測ショー

誓い


投稿者名:寿
投稿日時:(06/ 4/24)

好き。
この言葉を彼に伝えてから一ヶ月が過ぎました。
彼からの返事は私と同じ言葉。
嬉しかった。私の長い長い人生の中で一番の幸せでした。
それから彼が一人前のGSとして認められ、私は彼とともに喜びを分かち合いました。
本当に幸せでした。彼と何時までも一緒にいたいとますます思えるようになりました。
でも・・・

「聞いてますか美神さん?」
私は今事務所で上司でもある美神さんに相談を持ちかけていました。
「聞いてるわよ。この頃横島君がおかしいって?いつもの事じゃない。」
美神さんはあまり興味がなさそうにそう返してきました。
「そうじゃなくて、この一週間付き合いが悪いと思いません?」
そーなんです。この頃横島さんがバイトが終わったらすぐに帰ってしまうんです。
前はご飯も食べていったし少しは二人の時間を持ったりしていました。
「そーいえばそうね。一週間前か。なにかあったかしら?」
「いえ、なにも。ちょっと除霊でトラブルはありましたけど・・・」
「あー、あんときか。」
あの日の除霊はたいしたものではありませんでした。
私たちは前衛に美神さんに横島さん。中衛にタマモちゃん。後衛に私。そして私のガードとしてシロちゃんが就いていました。
いつも道理のポジションだったんですが私のガードに就いていたシロちゃんが前に出過ぎてしまい私が無防備になる。という状態におちいってしまったんです。
しかも、悪いことは重なるもので私に向かってくる霊が・・・
「!?」
私は完璧に不意をつかれてしまい攻撃がくるのを覚悟しました。
しかしいつまでたっても衝撃は来ませんでした。なぜなら私の前には「盾」の文殊が・・・
横島さんの咄嗟の行動で事なきを得、シロちゃんが戻りその後は問題無く進みました。
除霊後、シロちゃんが美神さんからお説教を受け一週間肉抜きを受けていましたがそれくらいです。
「あんときはちょっと焦ったわよ。おキヌちゃんは笛を吹いてるときは完全に無防備になっちゃうからね。」
「そうなんですけどね。でもそのくらいなんです。ほかには特に何も無かったですし。」
その次の日からです。横島さんの付き合いが悪くなったのは。それに・・・
「それにこの頃いつも疲れた顔してません?」
「そういえばそーね。」
「理由を聞いても大丈夫って言うだけですし・・・」
私は不安になって来ました。
横島さんはなにをしているの?
誰かと会っているの?
もしかして私以外の女性と会っているかもしれない。
私は横島さんに嫌われてしまったの?
なぜ?私は横島さんに嫌われる様な事をしたの?
そんな考えが私の頭の中を駆け回ってきました。
「大丈夫よ。おキヌちゃん。」
「えっ?」
そんな考えが私の顔に出てしまっていたのか唐突に美神さんが言い切りました。
「あいつはどうしようもないくらい馬鹿でスケベだけど女泣かすような奴じゃないわ。それはおキヌちゃんが一番わかってるんじゃない?」
「それはそうなんですけど。でも・・・」
「じゃあもう少しあいつを信じてあげなさい。それにあなたはもう少し自分に自信を持ちなさい。大丈夫。貴女ほどの女そうそういないんだから!」
そう美神さんは言い切りました。その言葉は私の不安を多少なりとも軽くしてくれました。
私は自分の上司であり、姉と慕う彼女に感謝の気持ちを込めながら、
「はいっ!」
とただそれだけを笑顔を添えて返しました。


次の日。
仕事も学校も無い久しぶりの休日。
私のその日の予定は幸せの使者の来訪により決まりました。
「おキヌちゃん、二人でどっかいかない?」
そんな風に少し照れながら誘ってきた横島さんに私はもちろんOKし、大慌てで準備をして、二人でデートに出発しました。
楽しかった。
二人でお買い物もしました。
二人でお食事もしました。
二人で映画も見ました。
楽しい時間はあっという間に過ぎました。
でも、私はやっぱり気になっていることがありました。
この一週間何をしていたのか?
帰りの道すがらそれをどう聞こうか考えていました。そんなとき
「おキヌちゃん、少し俺に付き合ってくれないかな?」
「いいですけど、どこに行くんですか?」
「それは着いてのお楽しみって事で。」
そんな横島さんの言葉になんだろう?と疑問に思いながらも彼に付いていきました。

ついた先は横島さんの部屋でした。
夕暮れ時に恋人の部屋に。付き合う前から何度と無くかよった横島さんの部屋。
普通なら多少緊張を覚えてもおかしくないのですが私は不思議と安心していました。
ただ、横島さんの顔がとても穏やかだったから。
部屋に入ると横島さんは私にプレゼント用に包まれたものを手渡しました。
「それ、おキヌちゃんにプレゼント。」
「えっ?」
私はなにが起きたのか一瞬分からなくなりました。
プレゼント?
私に?
なんで?
そんな事ばかりが頭の中を駆け回りましたが、横島さんの笑顔を見るとそんな疑問より大きな感情が駆け上がってきました。
それは「喜び」という名の感情。
「あっ、ありがとうございます。あの、開けてもいいですか?」
「もちろん!早く開けてみて。」
「はい!」
私はワクワクしながら子供のように逸る気持ちを抑えながらそっと包みをほどいていきました。
「これは?」
それは私がいつも着ている巫女装束でした。ただいつものよりずっと強力な霊波を帯びた。
「うん、おキヌちゃんがいつも着てるやつ。織姫に頼んで作ってもらったんだ。」
「織姫様に?じゃあこれ高かったんじゃないんですか?」
そうです。織姫の服といえば一着数百万円はします。それをどうやって?
「いや、そうなんだけどね。ほら俺も一人で除霊出来るようになったからさ。隊長とかに頼んで仕事回してもらったんだ。」
「だからこの一週間すぐに帰っちゃたんですね?」
「そうなんだけどね。」
だからこの頃いつも疲れた顔をしていたんですね。バイトの後に単独で除霊作業をすればかなり体力を使うはずです。でも、
「なんでそこまでしてこれをプレゼントしてくれるんですか?」
そうです。いくら一人前のGSになったからってまだまだ横島さんの生活だって苦しいはずなのに。
「ほらこの前の除霊でおキヌちゃんが危ない場面があったでしょ。あの時はうまく護れたけどそのとき思ったんだ。いつも護れるのかって。俺は護るために最善を尽くしていたのかって。」
「えっ?」
横島さんは少し苦笑いをしながら続けました。
「俺は一度護れなかった。だから。もうあんな事はごめんだから。そう思ったらさ、なにができるか考えてそれでそれを思いついてあとはただ我武者羅に。」
そう言う横島さんは笑顔でした。ただ、その笑顔は痛々しかった。
大丈夫だから。
私はずっとあなたの隣にいるから。
だから・・・
私はいつの間にか、ただそうするのが当たり前のように彼を抱きしめていました。
「おっ、おキヌちゃん?」
「嬉しいです。でも大丈夫です。私はあなたを残していなくなったりしない。絶対に!だからっ!だからそんな顔をしないで下さい。」
私の瞳からはいつの間にか涙が流れていました。
「私は決めたんです。横島さんとずっと一緒にいるって。嬉しいときも、悲しいときも、いつでもずっと一緒にいるって。横島さんと、二人でずっと、いるんです。なにがあっても。絶対。だから、だから・・・」
「うん。うん。」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん・・・・」
私は泣きました。彼の心が嬉しかったから。彼の心が痛かったから。だから。








いつのまにか日は暮れていました。
横島さんは私が泣き止むまでずっと抱きしめていてくれました。
ただ優しく、包み込んでくれていました。

「ねぇ、横島さん?私横島さんと恋人同士になれて幸せです。」
「俺もおキヌちゃんと恋人同士になれて幸せだよ。」
とても幸せな時間。

「でも、プレゼントも嬉しいですけど私は横島さんと二人で居れればそれでいいんです。ううん。二人で居たいんです。」
「うん。ごめんね。俺もおキヌちゃんと二人で居たいな。」
ただ月明かりだけが差し込む部屋の中で。

「この一週間寂しかったんですからね。」
「ごめんね。これからはできるだけ二人で居よう。」
それは誓い。これからの私たちの永遠の誓い。

「それにあんまり無茶しちゃ嫌ですよ。私だって横島さんを護りたいんですから。」
「うん。約束するよ。」
二人の絆。また増えた二人の絆。


彼の部屋の中。

二人だけの世界。

ただ二人だけの時間。

私たちはただ優しい光を放つ月だけが見つめるなかで・・・

お互いがお互いだけを見つめながら・・・

なによりも強く、なによりもかえがたい誓いを立てて・・・

月だけを見届け人とした・・・

誓いの口づけを交わした・・・

お互いが共にこの時が永遠に続くことを祈りながら・・・

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa