ザ・グレート・展開予測ショー

THE FOOL


投稿者名:寿
投稿日時:(06/ 4/17)

人は俺を英雄だと言う。
世界を救った、強大な敵を倒した英雄だと言う。

だが、俺はそれを否定する。
俺は英雄じゃない。
世界と彼女を天秤にかけた愚者。
彼女を選べなかった最悪の愚者。


「しかたなかったのよ。」
女帝のような力強い上司が言う。
「元気を出してください。」
月のような優しい同僚が言う。

しかたなかった?そんな言葉で俺は納得したくない。
元気を出して?どうやって?彼女がいないのに。
俺は愚者。励ましてくれる者の言葉を聞かないただの愚者。


「あなたのしたことは正しかったわ。」
女教皇のような凛とした上司の母が言う。
「君の問題だ。がんばって乗り越えたまえ。」
正義の名を冠する剣を持つ上司の兄貴分が言う。

正しかった?ならなんで彼女がいない。
乗り越える?乗り越えた所で彼女は戻ってこない。
俺は愚者。立ち止まってしまったただの愚者。


「彼女は幸せだったんじゃないかな?」
法皇のような正しき神父が言う。
「まだ可能性はあるんじゃぞ。」
隠者のような知性をもつ年老いた魔王が言う。

幸せだった?そうかもしれない。でも俺は彼女に今も幸せでいて欲しかった。
可能性?解かっている。でももっといい方法を求めてしまうんだ。
俺は愚者。わずかな光を求めるただの愚者。


「横島さん、たまには遊びに行きませんか?」
太陽のように明るい髪をした異国の友が言う。
「考え事をしてるくらいなら俺と勝負しろ。」
戦車のような勇気と力をもつライバルが言う。

遊び?あいつがいないのに何が楽しい?
勝負?あいつを救えなかった俺が強い訳がない。
俺は愚者。友の声を聞かないただの愚者。


「とりあえず礼だけは言っとくワケ。」
魔術師のような力をもつ上司のライバルが言う。
「あなたがそんなことでは彼女が可哀そうですよ。」
力というものを俺に与えた竜神が言う。

礼?やめてくれ。そんな物が欲しかったわけじゃない。
可哀そう?そうかもしれない。あなたが神なら彼女を救ってくれないか?
俺は愚者。なんにもできないただの愚者。


あのとき「世界」と「恋人」、どちらを取るかという「審判」のラッパが鳴った。
俺は「吊るされた男」のように動けなくなり結局「世界」をとった。
結果は「皇帝」のように強大な「悪魔」の「死」とバベルの「塔」のように崩れ落ちた「悪魔」の計画。

そして「恋人」の「死」。

俺の「運命の輪」は俺に悲惨をもたらした。「節制」がたりなかったのか俺には
彼女のいない日々という試練が残された。




タロットカード。
22枚の大アルカナ。
俺がもっともあっているのは0の数字の「愚者」。
それも最悪の逆位置だ。
ただひとつ違うのはカードが示唆すること。
こだわりの心を手放してしまった方が生きやすい。ということ。
彼女へのこだわりは捨てられない。なぜなら俺は愚者だから。

俺は愚者。試練の末に希望の「星」が輝くのを信じているただの愚者。
もし「星」が輝いたならば俺はひっくり返って正位置にだってなってやる!!

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