ザ・グレート・展開予測ショー

いえで。 後編


投稿者名:アンクル・トリス
投稿日時:(06/ 4/ 8)

 子供と言うものは、我々が思ってるより いつも一歩 大人である
 
                ――――――――――賢木修二 著 「医学的見地から見た幼女嗜好者の功罪」より抜粋 








 GS美神極楽大作戦 アフターリポートシリーズ

 「いえで。 後編」



 
 6まとめ


 否定の言葉は やけに空虚に聞こえた。 望んでいるのに信じられない自分は なんてひねくれ者だろう。

 
 「・・・・・・違わないもん。」

 「いーや! 違う!! 絶対に違う!!」


 横島が本心からそう言っていることが、ひのめにはよく分かった。そのことが 彼女を苛つかせた。
 苛立ちの原因を、母を信じきっているこのヒトに対する物か、母を信じ切れない自分に対する物か
 判別する事はできなかったが、感情の制御も出来ずに言葉だけが溢れてくる。

 「お兄ちゃんはママじゃない!! なんでそんなことがわかるの!!?」

 言った後ですぐに後悔する。なぜこうも考え無しに声を荒げてるんだろう?お兄ちゃんは全然悪くないのに。
 視界はぐちゃぐちゃで、思考もぐちゃぐちゃで もう わけが分からない。

 そんな幼いひのめの叫びに

 「そりゃ、 分かるよ。」  簡単な返答。

 適当な事言わないで! そう怒鳴ろうと横島を見たひのめは喉元まで出た言葉を飲み込んだ。
 

 「・・・・・・・・・なんで、わかるの?」

 彼がこちらを見ている。 その目が自分を落ち着かせた。とりあえず話を聞いてみよう。怒るのはそれからでも良い。

 「おし、じゃあちょっと昔の話をしようか。」

 「むかしの、はなし?」

 「うん。なんてったって、被害者が2人いるからな。」

 そう言うと、にやりと笑い 横島は机の方を見た。

 『・・・・・・そうですね。』

 表情の変化がありえないはずのモガちゃん人形は、なぜか落ち込んでいる様に見えた。

 「んー じゃあ何処から話そうかなー。」

 『とりあえず、あの事件から話すのが一番分かりやすいと思うのですが。』

 「そうか? じゃあそっから話すか。」

 2人の会話に入っていけず、少し仲間はずれにされた気分だ。じっと見つめると彼はびくり、と体を震わせこちらを見た。
 ちょっと、流石美神さんの妹…ってどういうこと?

 「・・・あれはひのめちゃんが生まれて1ヶ月か2ヶ月たった頃かなぁ。えっと、」

 ひのめの視線を華麗にスルーして横島は話し始めた。しかしよく見れば彼が少女の視線に怯えている事は明白だった。
 実に恐ろしきは美神家の血、ということだろうか?

 『初めて念力発火能力(パイロキネシス)が発現した時ですね。正確には生後1ヶ月と25日です。』


 すかさず人工幽霊1号が補足する。横島が確実に忘れているであろう
 ひのめの霊能力の正式名称も付け加える辺り、良いコンビかもしれない。

 「はじめてきくよ・・・。」

 自分がいつから炎を扱うようになったかなんて気にしたこともなかった。
 気付いたら使っていた。それくらい自分にとっては当たり前のことだったのだ。
 もっとも、このような形で知るようなことになるとは、複雑な気分だったが。


 「あんときは大変やったなー。 ひのめちゃんの念波が事務所中を暴れまわってなぁ・・・・・・。」


 『横島さんは三日間入院。 私も完全に事務所を修復させるまで1週間かかりましたしね・・・・・・。』


 
 何処か遠くを見ている横島。ヒハイヤ・・ジゴクキライ・・・とぶつぶつ呟いている。 どうやら未だにトラウマらしい。
 モガちゃん人形のおどろ線も増加したような気がする。その目に光るものは涙だろうか?
 この問題を突き詰めていくと、『人造霊魂は涙を流すか?』と言う非常に深遠なテーマに辿り着くのだが、

 


 GS美神はぎゃぐ漫画です。



 「・・・ごめん・・なさ・・い。」

 『「!!!??」』


 いやな予感がして顔をあげた2人の顔に飛び込んできたのは潤んだ瞳。
 落ち込んでるところにさらなる追い討ちをかけられ、マンモス泣きそうになっているひのめだった。
 横島達にはそんなつもりはこれっぽっちも無かったのだが、弱っているときはなんでもマイナスに物事を考えてしまうもの。
 表面張力限界ギリギリまで溜められた涙を見るのはさながら火角結界のカウントダウンを見守るタイガーの心持ちだ。
 


 「わるくないっ!! ひのめちゃん全然悪くないっ!!! ぜーんぶ美神さんが悪いっ!!あのオッパイおばけっ!!」


 実際、横島が入院する破目になったのは
 バックドラフト現象が起こる事を知っていながら横島に命令した美神によるものが直接の原因だが、
 全部美神が悪いと言うのは早計だろう。ただひのめを泣かせないようにするためだけに言ったのかもしれないが、
 後で失敗したと気づくだろう。玄関越しのプレッシャーは増している。



 「ほんまあの守銭奴は・・けどあのチチは・・・あのチチだけはー!」

 顔面中から体液を垂れ流して憤慨する横島。感情の赴くままにわきわき動く手がとってもいやらしい。


 『横島さん。 話がずれてます。』


 「え?・・・・・・あぁすまん。  んで、入院してしてた時の話なんだけどさ ・・・美知恵さんが来たんだよ。」



          −・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−




 「あー、なんで看護婦さんが俺の部屋にはこんのじゃー!!」


 横島はナースコールを連打しながら血の涙を流していた。
 入院費を出した美神令子の指示によって、また、彼の度を越したセクハラの被害に遭ってきた看護婦達の手によって
 病室に来るのは医師のみ、ナースコールはスイッチを押しても意味が無いと言う完璧な措置が採られているため
 期待していた彼なりのスキンシッップ(セクハラ以外の何物でもない)がまったく取れない所為であった。

 けれども彼はそんな事に気づいてもいない。更にナースコールを連打しようとしたとき、ドアがノックされた。
 返答する前に、訪問者は部屋に顔を覗かせた。


 「思ったより元気そうね、横島君。」

 「た 隊長!?」

 「あら、その反応は心外ね。私がお見舞いに来るのがそんなにおかしかった?」

 訪問者は美智恵だった。

 「・・・実際意外っすよ。だって俺、明日退院だし 今更お見舞いにこんくても。」

 「本当はもっと早く来たかったんだけど、 事後処理が忙しくてね。それに、言いたい事があったから。」


 

 「横島君。 ありがとう ひのめを助けてくれて。」

 感謝の言葉は、横島には少し 的外れに思えた。自分のしたことはドアを開いた事だけ。
 その程度の認識だったからだ。謝罪だけならまだしも、感謝されるとは予想外だった。

 「いや、俺はドアを開けただけで・・・結局美神さんの機転っすよ。」

 「確かにそうね。  でも、決してそれだけじゃないわ。 貴方がいなければ実際危なかったんだから。」


 それとも感謝もさせてくれないの?そう付け加えてこちらを見つめてくる美智恵にドキドキして、
 横島は慌てて話題を代えた。彼は意外と純情な所もあるのだ。

 「そ、そーいや ひのめちゃんは大丈夫なんですか?」

 「ええ、それはもう。元気すぎて困ってる位よ。」

 「さすが、“美神の女”ってやつっすか。」

 「ふふ・・・ちょっと違うわね。それだけじゃないわ。
  さすが“私と公彦さんの娘”よ・・・・・・念力発火能力者って言うのには驚いたけど、頼もしいわ。」

 「夜泣きやおしめ、 それにミルク おまけに、火事の心配もしなくちゃいけないなんてね。」





 でも、生後1ヶ月であの霊力、将来きっとすごいGSになるわよ。

 


 そう言って笑う美智恵の姿に、横島は理想の母親像の垣間見た気がした。これならきっとひのめは良い子に育つだろう。


 「・・・・・・美神さんみたいにならないように子育てお願いします。」


 それはそれとして、釘を刺すことも忘れなかった。


 「・・・・・・・・・・・・あら、もうこんな時間? 内務省の高官と約束があったわ。」


 とっても心配だった。

 「無視かっ!? あんたんとこの長女のせいで何回死にかけたと思っとるんや!!」


 「もう面会時間も終るし、そろそろ帰る事にするわ。じゃ、またね。これからも令子とひのめをよろしくね。」
             なにが『国の宝なんだヨ!』よ。 あの子は『私の宝』なんだから。


 これから行われるであろう勧誘大作戦を断る手段を考えながら、慌ただしく帰って行く美智恵。

 その後姿を見ながら、横島も新たな決心をしていた。

 
 あの人だけに任せておけねぇ。
 


          −・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−





 「だから、ひのめちゃんを叩いたのは嫌いとかじゃないと思う。
     大体、美智恵さんが除霊したのを怒るなんて事有り得ないもんなぁ。」

 さすが私の娘!!位良いそうやし。


 そう言って笑う横島。対してひのめの表情はまだ硬かった。彼の言葉が信じきれなかったからではない。
 



 「・・・じゃあ、」

 「ん?」

 「じゃあ何でママは私を叩いたの?」




 『聞いてみれば良いではないですか。』

 返答はこの部屋にいるもう1人からだった。人工幽霊1号は静かに語る。
 その口調には、なにか熱のようなものが感じられた。言葉にするなら、喜びのようなものか。

 「え・・・でも、」


 『人ならぬこの身には、ひのめさんの葛藤をすべて理解する事はできません。
          ただ、私にもあなたが愛されている事は分かります。何を恐れる事があるのですか。』


 「そうだな 自分の思った事を思った時にすぐ、美智恵さんに伝えてごらん。じゃないと後悔する。」


 横島が何気ない風に言った言葉は 何か深い実感が感じられたが、それが何なのかはひのめには分からなかった。


 『・・・ん?  横島さん 玄関に生命反応。何物かが侵入しました。』



 とととととっと軽い足音。


 「わっ!」

 
 目にも止まらぬ速さでひのめに飛びついてきたもの。


 『わんわんわんわんっ!!!』(訳:ひのめ殿っ シロもひのめ殿のこと大好きでござるっ!!)
 


 『・・・・・・・・・・・・・・・』     (訳:私もひのめのこと、好きよ。)


 ケモノ状態のまま突入して来た2匹だった。なにせ美神除霊事務所に在籍してから此の方
 ひのめの面倒を見ることも多かった。情も移っているのだろう。



 「・・・うーん、何言ってるかさっぱりわからん。」


 『どうやって入ったかは突っ込みなしですか。』


 ただ、惜しむらくは 興奮しすぎて人語で喋るのを忘れているシロと、 
 恥ずかしいので目だけで意思を伝えようとするタマモの気持ちを正しく理解できないという点だが。

 よって訳の部分は2匹の尻尾からの意訳です。あしからず。


 「・・・まぁ 1件落着かな。」

 美智恵がひのめを叩いた本当の理由は、まだ解明されていないが なんとなく、横島には予想がついた。
 ひのめの霊力は年齢の割りに恐ろしく高い。制御のために念力封じの札を使わなくてはならないほどに。
 更には、以前 美神に聞いた念力発火能力の暴走による人体発火現象。



 ひのめの話と合わせて考えると、単なる勘違いが関の山だろう。



 なんにせよ、ひのめの家出は避けられるだろう。

 つまり、自分が殴られたり、睨まれたりする道理だって無いのだ。それが何よりも嬉しかった。


 久々の勝利の余韻に浸る横島。そこで遅まきながら残る2人がいつの間にかいる事に気づいた。


 「うっ・・ぐすっ・・・よごじま゛さ〜ん・・・・・・。」

 泣きながら喜ぶキヌ。となれば次は当然。


 「・・・・・・・・・・・・・・・横島クン。」

 照れているのが恥ずかしく顔を伏せる美神。           嗚呼!! だったらどんなに良かった事でしょう!!











 「私ね・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・全部聞いてたの。」
 


 
 



 《以下二十数行にわたり、青少年の育成上 非常に好ましく無い表現が続きますので 
    割愛させていただきます。ワンパターンだと言う事は重々承知しておりますが平にご容赦お願いいたします。》 
 




 ◇



 冬の寒さも和らぎ始めた五月の頭、今日も今日とて、横島忠夫は惰眠をむさぼっていた。その寝顔は朝と同じく歪んでいる
 どんな夢を見ているのだろう?

 「あ・・・・・・あのアマ・・・! いつかそのわがままなちち、俺のモンに・・・・・・!!」


 どうやら彼の勤めている事務所の上司、美神令子がお相手のようだ。
 



 



 ―――――――――――――――――まぁ、その顔は恐怖で歪み、頭からは血がぴゅーぴゅーと噴き出ており、
                                        あまつさえ呼吸はほとんど止まろうとしてはいたが。







 おわるよ!

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa