ウェディング・ベル
投稿者名:赤蛇
投稿日時:(06/ 3/28)
DMに混じって、一通の手紙が届いた。
明らかに招待状とわかる封書の差出人は、かつて良く知っていた男と、まったく知らない女の名前。
相変わらず下手で汚い字で書かれた届け先は、まぎれもなく自分の住所。
ちょっと! 何よ、これは!?
からかわないでよ! 嫌がらせにしちゃ性質が悪すぎるわよ。
あんな別れ方をしておいて、今更、私を招待しようっていうの?
―――私だって、本気だったのよ・・・
子供の頃から慣れ親しんだ教会に、結婚を祝うオルガンの音が静かに流れる。
アイツがキリスト教のをあげるなんて意外だけど、いよいよ結婚式が始まる。
賛美歌が流れる中、お嫁さんが参列者の中を通り、私の横を過ぎる。
純白のドレスが、このうえもなく綺麗に映る。
ふうん。
この人が貴方が選んだひとってわけね。
初めて見る顔だわ。
私のほうが綺麗なんじゃないの?
いいえ、ずっとずっと綺麗よ。
―――そうよ。
貴方と腕を組んで、幸せそうに祭壇に上がるのは私だったはずよ。
それが何故?
なんで、私はこんな一番後ろの席に一人ぼっちで座って、貴方達二人の幸せを見せつけられるの?
ねえ、どうしてなの?
愛の誓いなんて聞きたくないわ。
指輪の交換なんて見たくもないわ。
私の気持ちをよく知るはずの神父は、どうしてそんなやわらかそうな声で祝福の言葉を述べるの?
何もかもが悪夢のようで、しっかりしていないとふらついて倒れてしまいそうになる。
あの指輪を受けるのは、私だったはずなのに!
気がつけば式は滞りなく終わり、
参列者の祝福の拍手に包まれて、二人は寄り添って歩いてくる。
もちろん、私は拍手などしないわ。
お嫁さんの目に喜びの涙が流れる。
本当に幸せそうでいいわね。
悲しい涙にならなきゃいいけど。
あ。
今、貴方と目が合ったわ。
貴方がどんどん近づいてくる。
ほんの少しだけ、昔と同じように怯えながら、無邪気に微笑んでみせるのでしょう。
私の気も知らないで。
でも、安心して。
私の笑顔で微笑んで、こんなふうに言うのよ。
”ひさしぶりね”
”おめでとう。とても素敵なひとね。貴方にふさわしいひとだわ”
”今日はありがとう。招待状を送ってくれて”
”遅くなったけど、私からのお祝いの言葉よ。いいから受け取りなさい”
「くたばっちまえ」
Amen.
今までの
コメント:
- 3月は歓送迎の季節です。
夕方から飲んで、カラオケでふと思いついたネタです。(まだ帰ってきてから30分経ってません)
酔っ払いの戯言ですが、まあ、たまにはこんなのもどうかな、と。 (赤蛇)
- 固有名詞がないので脳内補完・・・勘九郎と雪乃丞? (alc)
- シュガーの「ウェディング・ベル」ですか。懐かしい。シュガーはメンバーの一人がすでに物故されていて再結成は不可能だそうですが、この歌は当時の大ヒット曲でしたね。
男は横島、女は令子かと思いますが……そうなると花嫁は誰かなと(笑)。 (HAL)
- ひと言、言ってもいいですか? 歌詞を旨くモノローグにしていて見事でした。
も一度、言ってもいいですか? 特にふらつきそうだわの部分と神父の描写が見事でした。
アーメン (yafun)
- ―――Amen.
どんな別れ方をしたのかは「彼女らのみぞ知る」ですが、過去を水に流して素直に祝福…なんてしそうにないのが彼女のクオリティー。
やはり怖いですな……おキヌちゃんは(激しくちょっとマテ)。
お約束はさておき、短いながらも彼女らしさも十分に詰まった、情感のワンシーンでした。
ただ、展開の賛反としては何かしっくり来ないものも感じたので中立で。 (フル・サークル)
- >alcさん
>>脳内補完・・・勘九郎と雪乃丞?
うっ!
そっちのほうがおもしれぇ!
くそー! 負けたぜ・・・
>HALさん
なんと!
メンバーの一人はお亡くなりになられていたのですか・・・知りませんでした。謹んでお悔やみ申し上げます。
なんといっても最後の台詞を美神に言わせたかったので、花嫁のことは考えておりませんでした。
結構、誰にでも当てはまりそうですが。
>yafunさん
原型を保ちつつ、いかに崩すかがカギだったんですが、なんとかなりましたようで・・・
神父の出てくるあの五行は、自分でもわりと気に入っています。
>フル・サークルさん
はっはっは。
こんなのはおキヌちゃんであるはずがないじゃないですか。
彼女にはもっとふさわしい曲、アミン大統領閣下の『待つわ』を用意して(マテや) (赤蛇)
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