ザ・グレート・展開予測ショー

おかーさん〜タマモさんの場合〜


投稿者名:天馬
投稿日時:(06/ 2/16)

 今日は二人で留守番。
 美神さんは仕事。横島は学校。シロは…散歩かな?
 残っているのは、私と学校が休みのおキヌちゃんだけ。


 「あうー?」


 あ、ごめん。アンタもいたわね。






 “おかーさん〜タマモさんの場合〜”






 そういえば今日はアンタ、おかーさんと一緒じゃないわね。



 「隊長さんも忙しいから」


 そう言ってるのはおキヌちゃん。
 いつもみたいなふんわりとした、柔らかな、あったかくてやさしい笑顔。
 こんな笑顔の人を、私は他に見たことがない。


 「本当はおかあさんもひのめちゃんと一緒にいたいのにねー」


 そう言って。
 ひのめを抱きながらあやしている。
 わかってるんだかわかってないんだか。
 きゃっきゃと笑顔を見せるひのめ。




 おかーさん、か。




 私にはわからない。わかるはずもない。
 前世の記憶は欠片もない。
 生まれてきたのは母の中ではなく、石の中。
 アンタみたいに祝福されたわけでも、ないしね。

 アンタは幸せよ、ひのめ。





 「……くぁ…」



 あぁ、おキヌちゃんに抱っこされて眠くなったのね。
 ちっちゃい口でおっきくあくびなんかしちゃってさ。
 でもアンタ、寝つきが悪いしねぇ。
 横島が毎回火達磨になる度に思うわ。







 「―――――――――」








 ん?おキヌちゃん?





 ―――この子の可愛さ限りない。
    山では木の数萱の数。
    星の数よりまだ可愛。
    ねんねやねんねやおねんねや。
    ねんねんころりや…







 「……………」

 「どうしたの、タマモちゃん?」




 呆気にとられた。
 ううん、その声色と。
 優しさと。暖かさと。温もりと。
 おかーさんみたいなその雰囲気が。
 私を微動だにさせなかった。
 まるで、本当のおかーさんみたい……。



 「あ、ひのめちゃんも寝ちゃったね。
  正直ね、自信なかったから。こんな子守唄くらいしか知らないから」


 右目を瞑ってちょろっと舌を出して。
 ばつが悪そうにひのめに言い訳してるその姿。
 そっとそっと。ベビーベッドにひのめを寝かせる。
 そんなことない、そんなことないよおキヌちゃん。



 「あのさ、おキヌちゃん」

 「なぁにタマモちゃん?」

 「抱いてもらっても、いいかな?」

 「えっ?」









 ……………








 な、なにいってんのよ私は!
 おキヌちゃんに抱いてなんて!
 おかーさんみたいな雰囲気出したおキヌちゃんだからって!
 どーかしてる、どーかしてるわ私!!!
 なんで、なんでなんでなんで



 「あ、あのねおキヌちゃん!
  決して私は百合を期待してたとかじゃなくてね!
  うんとね、別に気にしなくても良いから!!
  っていうかごめ…」





 ぎゅっ





 あ…










 ―――――あったかい










 「ねぇ、おキヌちゃん」

 「なに?」

 「おかーさんって、何かな?」

 「おかあさん?」

 「うん」




 その暖かさは私に有無を言わせないで。
 その力強さは自然と私の口を開かせて。
 知らないはずなのに、どこか懐かしい感覚。





 「わかんない」

 「よね。ごめんね」

 「へんなタマモちゃん」

 「笑わないでよ」

 「うふふ…でも、可愛い」




 とかいってさ。子供じゃないんだから。
 頭をなでちゃって。ひのめみたいに私をあやしちゃって。






 「うんとさ」

 「なぁに?」

 「きっとおかーさんって、こんな感じなんだよ」

 「私もおかあさんがわからないからなんとも言えないよ?」

 「ううん、きっとこんな感じ」




 そう?って言って。
 見えなくても微笑んでるのがわかるんだから。
 そんな感じが余計おかーさんみたいんだから。





 おかーさん。

 おかーさんかぁ…







 きっとこんな感じなのかもね。






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