ザ・グレート・展開予測ショー

大好きな人


投稿者名:天馬
投稿日時:(06/ 2/10)

 私に好きな人ができました。
 その人はちょっと、不思議な人です。







 “大好きな人”







 あの人の名前と同じ雪が、窓から見える。
 深々と、静かに降り積る其れは寒いはずの心と季節を、何故か暖かなものに変えていく。
 思わず呟く一言。

「雪、か」





 誰のことを言っているのだろう?
 何のことを言っているのだろう?





 好きな人ができました。
 その人は不思議な人です。





 無愛想で常識がなくて、闘いが大好きな人。
 そして強くて、儚げで脆い人。




「いっそ割り切れたら楽なのに、ね」




 自分と同じぐらいの年齢の人間なのに。有り得ない位に現実を知っている。
 そしてその裏にあるものも知っている。
 其れを諦観しようとしている。暖かなものを払いのけようとしている。

 だけど其れが上手にできないのだ。

 暖かさを知っているから。寂しさを知っているから。命の素晴らしさを知っているから。
 だから彼は感覚を麻痺できない。
 悲しみを、喜びを。


 人の温かさそのものを。







 降り積もる雪は、まるであの人の葛藤そのものを表している様で。
 一向に降り止まないその景色は、幻想的なのに、さっきと違って。



 どこか苦しかった。






 一度だけ。たった一度だけ、不器用な彼がその感情を表してしまったことがある。
 お母さんの話。
 大好きで、今の自分を創ってくれて。そして失った存在。

 その時の彼の顔はまさに子ども。
 とても大切なものを自慢する子どもそのもののような顔。
 そして、ソレがもう無いのが分かっているから、瞳の奥には悲しみを秘めた顔を見せてた。



 「泣きたいのならば、泣けばいいのに」







 ―――――泣くこともできないって自分で諦めちゃだめですのよ







 彼は言った。

 俺は泣けない、泣く資格も無い。
 俺はママを殺したから。




 決して自分のせいではないのに、それを自分のせいにするのは甘えですのよ。



 どこか陰のある笑顔。
 ギリギリの状態を好む無謀とも言える性格。
 いつ壊れてもおかしくないような繊細で、だけどいつでも死にそうなほど体を苛められる心を持った貴方。




 そういえば?
 お母さんの話をした時も、こんな風に雪が降ってたっけ。
 珍しく饒舌な彼に見惚れそうになったなんて、言えそうも無いけど。


 ―――――俺さ、雪が好きなんだ。



 ―――――雪って、降り積もって真っ白にするだろ
 ―――――色んなくだらねぇものも全部、積もってくれると面白ぇのにな




 そんなこと言って…

 だけどね、雪之丞。



 降り積もった雪はいつか消えてしまいますのよ?
 雪は、儚く切なくて。貴方みたいなものなのよ。





 そして、消えて雪の先には、暖かな新しい命の息吹が生まれるのですから。
 だから、ね。雪之丞。









 いつか、そういつか。


 私にそんな貴方の背中を支えることが出来たらな、と思う。


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