ザ・グレート・展開予測ショー

いえで。 前編


投稿者名:アンクル・トリス
投稿日時:(06/ 2/10)

 1-めざめよ!

 冬の寒さも和らぎ始めた五月の頭、今日も今日とて、横島忠夫は惰眠をむさぼっていた。その寝顔はいやらしく歪んでいる
 どんな夢を見ているのだろう?

 「んー、・・・しょ〜りゅ〜きさま〜」

 ・・・・・・どうやら彼の霊能の師匠、小竜姫がお相手のようだ。

 「わ、わるきゅ〜れ それにヒャクメまで・・・」

 ・・・・・・・・・どうやら、彼の脳内では明神山でえらいコトになっているらしい。

 そのとき、

 ――――――――がちゃり、と

 鍵の開く音がして誰かが部屋にはいってきた。

 

 事務所に鍵を置いてから、彼の顔をなめまくって起こすようになった
 シロにしてはゆるやかな歩みで横島のベッドへ、
 シロではない、ならタマモだろうか?
 いやいや、タマモにしては歩幅が小さい。ならおキヌでも、ましてや美神であるはずも無い。
 侵入者はうれしそうに横島を見つめる。  その、言葉を聴くまでは―――

 「んへ〜・・・・・み、××××ん! なんで!? これは―――ひt」

 「お兄ちゃんの・・・ばかーーー!!!」 「まっ!!!!!」
 

               瞬間


 最近やっと、少しだけ制御ができるようになった炎を放つ。
 理由は1つ、いま一番聞きたくない言葉を、目の前の大好きなヒトが言ったから。

 奇声をあげながら、熱さにのたうち回るこの部屋の主を横目に、少女は人知れずため息をつくのだった。


 「け、けしてーーーーー!?」


 2‐ちがうよ!

 炎に包まれてから、きっかり10分。常人なら皮膚組織に致命的なダメージを負う所だが、こんがり小麦色にやきあがっただけの横島は、
 目の前にいる怒ったような、落ち込んでいるようなよく知る少女に問いかけた。

 「・・・で、今日は遊びに来たの? ひのめちゃん?」

 「・・・・・・・・・・・・」

 「(ど、どうしたんや? いつも元気なひのめちゃんがなにも言わないなんて、なんかあったんか?)」

 「・・・・・・・・・おにいちゃん。」

 「(ん?昨日ひのめちゃん、事務所に泊まったんだよな・・・いや、・・・まさか・・)・・・ん?なに?」
 「わたし、家出してきたの。」




  ぶわっ

 予備動作ゼロで横島の目から涙が溢れ出す。


 「・・・・・・美神さん、こんな小さな妹と姉妹ゲンカなんて・・・・・・」

 「・・・・・・・・・ちがうの」

 ひのめの呟きが聞こえなかった横島は無駄に歯を光らせながら、

 「とにかく、お兄ちゃんにまかしな!仲直りさせたげるから」

 その、笑顔があまりにも眩しかったので、ひのめは

 「うん・・・ありがとう。」

 と、誤解を解くのも忘れて、ほにゃっと笑い返してしまった。

 HAHAHA!と深夜の通販番組に出てくるお米の国の男性のように笑う横島
 その笑顔は、次のひのめの科白で泣き笑いに変化した。





 「じゃあ・・・今日からここにすんでもいい?」

 横島は忘れていた。彼女が<家出>といったのを、

 彼女にとっての<家>は、美神除霊事務所ではないのだ。
 つまり、ひのめが美神“令子”とでは無く、“美智恵”と喧嘩したことも知らないのだ。

 彼の知っていること、それは


 「(・・・・・・また、俺がなぐられるんやろーなー)」

 自分が誰かに(何人かの顔が浮かんできた)うらめしげに睨まれたり、殴られたりするであろうコトだけであった。 





 3‐きみだよ!

 「・・・・・・あれ?」

 「どーしたでござるか?おキヌ殿?」

 びっくぅっ!!

 「ななn、なんでもないのよ!しろちゃん!」

 「そうでござるか。」

 わたわたと挙動不審なおキヌを、シロは不思議そうに見ている。
 心の動揺を、笑顔で隠しながら、キヌは尋ねる。

 「と、ところで、シロちゃん?私に何か用? お昼ご飯ならもうできてるけど・・・」

 「それならもう、おいしくいただいたでござるよ。」

 さすがおキヌどのでござる!      いや、その賞賛はうれしいんだけど・・・

 「じゃあ・・・・・・何?」

 つぎのシロの科白は大体予測できたが、一応聞いてみる。

 「先生の所に遊びにいくんでござるよ」

 やっぱり!

 おちつくのよキヌ!今ならまだごまかせるはず!

 「あ、あのねし「おキヌ殿も先生の所に行くつもりでござろう?」!?」

 ばれてる!?

 「だから鍵をわたしてほしいでござる。」

 「・・・・・・・・・・・・・・・私、もってないよ?シロちゃんが持ってるんじゃないの?」

 「拙者はいつもの所に置いておいたでござるよ。おキヌ殿」


 「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」





 沈黙が空間を支配する。

 
 なら誰が鍵をもってるんだろう?

 
 「あはははは!」
 


 その声を聞き、 2人は頷き合うと、容疑者を確保にむかった。



 「やっぱりサンデーよ・・・ね・・・?」

 マンガを読んでいたタマモは、プレッシャーを感じて恐る恐る振り向いた。
 そこには、          なんか怒ってる同居人が2人。
 まさかアノ事がばれたの!?

 「ど、どうしたの?2人とも?・・・・・・・・・サンデー読む?」

 「拙者は‘ばんち’派でござる。・・・・・・そんなことより」

 「タマモちゃん、横島さんの家の鍵知らない?」

 いつもより真剣な表情でタマモにせまるおキヌとシロ。                              ぼん
 隠していたものが―――。


 「し・・・・・・・・・シラナイ。」

 「・・・完全に知っている反応でござるよ、タマモ。」

 「うう・・・その鍵のことは知らないってば!」

 「・・・・・・その?」

 「はうっ!?(ぬかった!??)」

 「あのね・・・・・・・・・・・・・・・・・・タマモちゃん」

 「・・・・・・な、なに?おキヌちゃん?」

 「ケモノに・・・・・・もどってるよ。」



 「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」







 再び、沈黙が空間を支配する。

 動揺が、心を不安定なものとし、タマモは自分でも気づかぬうちに変化を解いていた。
 それに従い、衣服のポケットに入っていたものも、床に落ちる。
 

 それは・・・・・・どこにでもあるような鍵だった。
 しかし、霊能力者である美神除霊事務所のメンバーである2人には、(おキヌは目、シロは鼻で)
 はっきりと、それに籠められたタマモのそれに対するあたたかな霊波を感じ取る事ができた。
  
 
 
  しかし、これは自分たちの捜していた鍵ではない。

 捜している鍵には、タマモの霊波だけでなく、自分たちの霊波も混じってるはずなのだ。
 これにはタマモの霊波しか残っていない。


 袋小路に陥りそうな問題は


 

 「ふわぁ〜〜・・・・・・おはよう〜。」


 この事務所に泊まっていた美神令子の登場によって氷解するかに見えた。

 「あんたたち、なにやってんのよ? 固まって?」

 「・・・・・・美神さん。聞きたい事があるんですが。」

 当事者の2人と巻き込まれた1人を代表して、おキヌが尋ねる。

 「いいけど、その前に私の質問に答えて?・・・・・・ひのめ知らない?起きたらいないのよ。」

 昨日自分と一緒に事務所に泊まった妹の行方を尋ねる。


 その質問に対する答えは

 『オーナー』

 上から返ってきた。


 「何、人工幽霊?」


 『オーナーが起きてきたら言うように、ひのめさんからメッセージを預かっております。これから読み上げます。』

 

 『―――――「おねいちゃん、わたし今日からおにいちゃんと一緒に暮らすね。」―――以上です。』




 「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」





 三度、沈黙が空間を支配し――――――数瞬の後、


 「「「「えええええええええええええええええええぇっ!!!!!??」」」」


 爆発した。




 タマモの鍵はいったい何の鍵か?
 なぜ人工幽霊一号は、美神が起きてくるまで言葉を発しなかったのか?
 そしてひのめの発言の理由は?


 すべては後半で明らかになる!!・・・・・・・・・はず。





 つづくよ!

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