ザ・グレート・展開予測ショー

けっこん。


投稿者名:アンクル・トリス
投稿日時:(06/ 2/ 7)

 1‐おおかみのきもち

 「結婚しよう。」

 「・・・・・・・え?」

  シロは目の前にいる男の言葉が信じられなくて一瞬頭が真っ白になった。

  男・・・つまりは自分の師は真剣な顔をして自分を見ている。
  その表情を見て暴走して顔を嘗め回してしまいそうになる自分を必死に抑えながら、シロはこの状況をとらえようと努力していた。

 「(え?え?・・・え?なんで?夢でござろうか?
  でもせんせいがせっしゃをもらってくれる?・・・・・・・・・きゅーん♪)」

 「シロ」

 「(いやいや、突然に過ぎるでござるよ。なにかへんでござる。
  だいたい先生が「おーい、しろー」拙者のことを好きだなんて・・・スキ・・スキ!?)」

 「シロ!」

 自分の名を強く呼ばれてシロは思考をストップして師の顔を見た。そして次の科白で完全に考えるのをやめた。

 「・・・・・・・愛してるぞ。」

 (せせせせs)
−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−

 「せっしゃもあいしてるでござる―――!!!」 

 ぺろぺろぺろぺろぺろぺろ 

 「うるさい!!!」

 ん?・・・・・・あれ?なんでタマモガ?

 頭上に疑問符をのせたシロをよそに、タマモはシロを睨んでいる。ちなみにその服装はパジャマだ。

 自分を見る。ふとんを抱きしめている。ちなみにかおのまえにあった部分は唾液でべとべとだ。
 どうやらなめまくったらしい。

 ・・・・・・・・みとめたくはないが。コレハ・・・

 「あんたきゅんきゅん鳴いてるかとおもえば
   しっぽをぶんぶか振りだすし・・・風圧で起こされたんだから、私。」

 呆れた様子の相棒の言葉を右から左へ聞き流しながら目線を反対に、

 窓の外に広がるみずいろのそら。

 夢?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぼむ!!!

 と赤くなった顔のままシロは大声で叫んだ。

 「せっしゃのあほーーーーーーー!!!」

 「うるさいっていってんでしょ!このバカ犬!!!」

 
 2‐おおかみのきば(うら)

 雲一つ無い秋晴れの空の下、一人の少年、いや、青年が人間ではありえない速度で走っている。
 普段はあまり男前とは言われずに、たまにみせる真剣な表情がかなり魅力的というよくある設定の顔は恐怖で歪んでいる。

 「いかん!ちこくやーーーー!!美神さんに殺される!!」

 高校を卒業して、あの守銭奴な上司が自分を正社員にして、給料を上げてくれて
(その時は以前親友に聞いた話を思い出して死を覚悟した)それから、二年近く、ずっと遅刻だけはしなかったのに・・・・・

 バイト時代に遅刻したときのことを思い出して青くなる。ましてや、自分はもう正社員なのだ、え!?じゃあ、どうなってしまうんだろう?

 恐ろしい想像に至る前に、20才になった横島忠夫は他のことに意識を移した。

 「(大体、いつもはこれでもかって位朝もはよーからシロのやつがサンポをせがみにくるのに・・・)」


 以前、ぼろぼろのアパートに住んでいたころは、弟子によるドアの破壊によって痛みとともに目が覚めたものだが、
 正社員となったときにおキヌちゃんやら小竜姫さまにやけに強く勧められ(隣家の少女はなぜか強硬に反対したが)
 今住んでいるマンションに引越してからはドアの修理費もグレードアップするので合鍵を渡そうとしたらなぜか
 タマモに燃やされ、美神さんに殴られた。おキヌちゃんは半泣きになった。

 結果、事務所に合鍵を置くことになり、3人の機嫌は直ったが、シロは不満げに自分の腕にがじがじ噛み付いた。


 じゃれるようにあま噛みしてくるおおかみのきばを思い出すうちに、事務所の前に着いていた。

 『おはようございます、横島さん』

 「おう、人工幽霊。おはよう・・・・・・・美神さん、怒ってる?」

 事務所に憑いている同僚?に挨拶しながら一縷の望みを持って上司の機嫌を伺ってみる。

 「怒ってましたよ。今、―――」

 「すんまへん!すんまへん!!もう遅刻はしません!これで最後です!だからオシオキだけは――――」


 まさにプライドゼロ!まだなにか言おうとする人工幽霊の言葉を無視してドアを開けると同時に土下座!

 しかし、彼の予想に反して美神の右ストレートはこなかった。



 顔を上げた彼の目に最初に飛び込んできたもの、それは―――――――――
 



 3‐おおかみのきば(おもて)



 太陽がもっともたかくに昇る頃、シロは数時間程前のことを思い出していた。


____________________________________________________________________________

  「・・・・・・で、なんの夢見てたの?あんた?」

 一通りの言葉の応酬が終った後、タマモは未だ赤い顔をしているシロに尋ねて見た。
 とたんにほんのりとした赤色から自分の前髪位に赤みを増した頬でシロは


  「せんせ、じゃなくて、ご、ごはんの夢でござるよ。え、えーと、肉!・・それとどっぐふーどもでてきたでござる!!ほ、本当でござる!」

 その反応を見たら一瞬で嘘と、そしてシロのみていた夢の内容が自分も大好きな青年に関するものであると気づくはずであった。
 しかし、タマモはシロのように朝型ではない、眠気で思考がまともに働かないのはしょうがないだろう。

  「??ふーん・・・・・げ、まだ5時じゃないもう。一回寝るから起こさないでよ〜・・・」

 目を閉じて数秒で再び眠りの世界に落ちたタマモの横でシロは夢を思い出してはふとんをあま噛みし、わふわふ、ゴロゴロを2時間程くりかえしていた。


 結局、日課のサンポには行けなかった

____________________________________________________________________________

 ――――――ロちゃん、シロちゃん。」

 「・・・・・へ?」

 目の前で黒髪の少女がこちらを心配そうに見ている。

 「なんでござるか?おキヌどの?」


 「大丈夫?今日はなんだか朝から元気ないし・・・ごはんもいつもの半分くらいしか食べなかったじゃない。」

 「大丈夫でござるよ。心配せんでくだされ。」

 「そう?ならいいんだけど・・・それにしても今日は横島さん遅いね。遅刻したことなんて卒業してから無かったのに」

 ぴくり、と横島という言葉に反応したシロに気づかずキヌはだんだんヒートアップしていく。

 「美神さんは隊長さんの所に行っちゃったし・・・・・(え?じゃあ私が今から横島さんを起こしにいっちゃおうかしら?そしてそのまま・・・・・・・・)」


 (ふふふふふふふふふふふふふふふふ)

 「シロちゃん、私、用事ができたから・・・・」

 だめです、よ、よこしまさんまだ明るいのに・・・・で、でもよこしまさんがのぞむなら・・・・などとぶつぶついいながら
 自分の部屋に下着を替えに行くおキヌをよそに、シロも思考回路がいい感じでオーバーヒートしようとしていた。


 「(あれはゆめ!ゆめでござる!でももしせんせぇがすきっていってくれるなら・・・・・)」


 わんわんわんわんっ (ぶんぶんぶんぶんっ)


 ・・・・・・・・・シロよ、しっぽの風圧でしょるいがまってるぞ。


 そのとき人狼の鋭い嗅覚が愛しいひとの匂いを捉えた。



 顔を上げた彼女の目に最初に飛び込んできたもの、それは―――――――――


 4-おおかみのこい


 「・・・・・・・・シロ?」

 美神がいないことに安堵しながらも、いつものように飛びついてこない弟子を不審に思いつつ、横島は声をかけた。

 しかし、シロは反応しない


 「おーい、しろー」


 シロ、無反応


 「シロ!」

 シロ、無はんの


 「あいしてるでござる―――!!!!!!」 



 5そのご


 ・・・・・・まったくおまえもひとが、いや、霊がわるいなー。

 ・・・・・・え?話を最後まで聞かないあなたが悪い?私はちゃんと

 「今、オカルトGメンのビルからでてきたところです。」っていった?

 ・・・う、にしてもタイミング悪すぎやんか、美神さんもおキヌちゃんもタマモもどうじに玄関にくるなんて・・・・・・・・・
 それはわたしのせいじゃない?・・・・・おれのせいでもないよな・・・・・

 ならなんで・・・・・・・・・ここまでぼこぼこにされにゃーならんのや・・・

  タイミングが悪かった。それしか言いようが無い

 シロの大胆告白を、母親から小言をさんざんもらいイライラしていた美神
 これから始まる自分に都合のよい妄想にワクワクしていたキヌ
 そして、目が覚めて横島をさがしていたタマモ

 3人が固まっている前で横島は、軽い感じで

 「おれも、あいしてるぞ。」

 なんて言ったのだ。たとえ二人の間での「愛」にloveとlikeの認識の違いがあったとしても
 


 あとは、おしてしるべし


 こころ、ここにあらずといった感じで空を見るシロ・・ただし、しっぽはちぎれんばかりに、ぶん、ぶか、と振られている。

 

 そんなシロを見て、横島はちょっとドキドキしてしまうのだった。


 血まみれの横島もいつものように復活し事務所のなかにはいって行く。


 
 今日も日常が始まる。



 「――――――とりあえず、この血の痕を消さなければ、人工幽霊、頼むぞ」

 『はい、横島さん。』

 

 



 〔血痕は結婚にあらず〕




 おわり

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa