ザ・グレート・展開予測ショー

SLOW BURN!! [The first page,thrown into the fire]


投稿者名:東一華。
投稿日時:(05/12/23)

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!!!CAUTION!!!

この文章は、作者の都合上、又、文才の至らなさ故、説明文的に、尚かつ、くどくなってしまっている箇所、表現が、多々あります。
又、文中、登場人物の呼称を、意図して変化させたりしている点も、読みづらい一因となっております。
読後感が、疲弊以外、何も感じない、悪印象を残す、等の可能性も、十分考えられます。
このような文体、筆致が苦手な方は、ブラウザの「戻る」で、速やかにお戻りになった方が良いと思われます。
不快な要素が、上記程度なら、読んでやっても良い、という方は、そのままスクロールバーを下に持っていって下さい。
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何故、こんな事に‥‥?
何故、今回のようなことになってしまったのか‥‥?


そのように、美神令子は振り返る。
走馬燈のように、過去の出来事が次々と浮かんでくるのは、目の前に広がっている危機的な状況に、彼女自身の脳がが、もう駄目だ、と告げているからだろうか。
彼女の脳裏に浮かんでくるのは、日常となった、事務所の光景だった。横島はソファに深く腰掛けて眠っており、シロとタマモがいつもの様に喧嘩をしている。それを、仲裁するおキヌちゃん。姿が無いながらも、存在感のあった、人工幽霊の声。
そんな日常がずっと続く筈だったのに、と、そう思い、彼女は唇を噛みしめる。
周りの音は既に殆ど聞こえず、自分の心臓の音が、嫌になる程大きく聞こえてくるのを、美神令子は自覚していた。

そもそもの始まりは、彼女の所有物、事務所に、彼等が干渉してきたことだった。
彼女が考えていた者の中では、最も外から、否、彼女程の、今まで様々な関門を突破してきた頭脳を以てしても、考えの及びもしない「敵」だった。
一度、助けた存在だからといって、甘く見ていたのだろうか。やはり、あの時いやが上にも退治してしまわなければならなかったのではないか。そんな彼女の考えも、今となってはもう遅かった。
目の前に立っている男を見るも、強い光のせいか、その顔は良く見えなかった。口元が動いていることから、何か言っている様だが、その声も彼女の耳には入らない。





                                「S L O W  B U R N ! !」





彼等が始めに、美神除霊事務所の在る東京へと出て来たのは、彼等の住処である山が、再三再四のゴルフ場開発によって、住みづらくなったから、らしかった。
オカルトGメン(ICPO超常犯罪科)から、害の無い妖怪と認められると、彼等は交流の深かったGSである、横島忠夫の住むアパートの近くに引っ越して来ることになる。それらは全て、オカルトGメン日本支部の、西条輝彦が請け負ったものだった。美神美智恵が、育児の為、又、5年も実戦を離れていたことを理由に、顧問という名目上の地位に就き、休職してからは、実質的な、日本支部のトップに立った西条だったが、その余りの多忙故に疲れていたのか、あっさりと、それも大変積極的に、彼等‥‥その猫又の親子を横島の元へと「送った」のだった。

親子の内、子供の方は、元来横島忠夫に懐いていたこともあって、全ては上手く行くだろう、というのが西条の考えだったのだろうか。横島を抱える事務所の所長である美神も、以前助けた妖怪2匹が、自分の丁稚である横島の近所に越して来ようと、大したことでも無いと、それを軽く了承していた。
いきなり、妖怪2匹に押しかけられた、当の横島本人も、久々に遭うことができた猫又の子供相手に、まんざらでも無い様子だった。

しかしながら、事は上手く行き過ぎた。
上手く、行き過ぎたのだ。


「兄ちゃん!約束通り、また会えたんだね!」

「兄ちゃん、外に遊びに行こうよ!また、竹トンボ作って見せてよ!」


「兄ちゃん」
そのように横島を呼ぶ、猫又の子供は、直ぐに人間社会に溶け込んだ。横島が、遊びに連れて行った近所の公園では、横島が、そしてオカルトGメンが密かに様子を見る中で、彼は同年代である普通の人間の子供と、それこそあっという間に仲良くなったのだった。
東京へ出て来た直後は、少しばかり緊張し、人間を警戒していたその子供は、人間である「兄」の存在のおかげか、それも無くなっていたのだろう。


監視の目など、最早必要無い。
オカルトGメンがそのように、美神除霊事務所に通達してきたのは、彼等が越してきて、未だ1週間と経たない頃だった。


「何だか、おかしいわね‥‥。いくら何でも‥‥これじゃ、西条さんも、以前の事が教訓になってないとしか‥‥。」


そう呟いた美神令子は、Gメンから送られてきた書類を、もう一度眺める。
異様なまでに早い、監視の取り止め。
彼女が危惧していたのは、監視の取り止めに際して、監視の対象であった妖怪の親子の内、特に子供の方が何をしでかすか分からない、ということだった。
ここ数日で、特に彼等の日常生活で、何ら危険視すべきことが無かったとはいえ、相手は妖怪、それもまだ、見かけ人間の、小学生程度の子供なのだから。
美神は、嫌な予感がしていた。何者かの悪意が関わっているような気がして、ならなかった。
以前にも、このようなことが有ったのに。

魔神、アシュタロスによる、「核ジャック事件」の直後、アシュタロスによって生み出された魔族の姉妹を、横島の名の下、美神は、自身の事務所で預かっていたことがあった。その際、彼の西条は、逃げ出した妹の手にかかり、随分と酷い目に遭った筈だった。
それなのに。










その日、事務所の上空は、厚い雲に覆われていた。


「ヨコシマも大変ね。それこそ義理と人情との板挟みってヤツかしらね。」


事務所のソファ、いつもの定位置に腰掛けたタマモは、そう呟いた。しかしその声量は、シロに聞かれても困る為、殆ど口に出さないのと同じ程、小さくはあったが。
この数日、件の猫又親子の処へ、横島は毎日必ず足を運び、それが事務所の女性数人が、不機嫌になっている理由だった。

見た目、一番それが顕著だったのは、彼の一番弟子を名乗る、犬塚シロだった。
先生、と仰ぐ横島が、ここ数日は、彼女の望む「散歩」に連れて行ってくれなくなった、というのが、一番大きな理由だろう。
実の処、横島をして、キツいと言わしめるハイペースなフルマラソン、いや、今となっては時折、距離がやたら長いトライアスロンまで発展している、シロとの「散歩」は、横島にとっては、是非とも御免被りたい年中行事であった訳で、あの2人が来てくれたことで、それを回避できる口実が出来たことは、幸運の至りだった。


「先生も先生でござるよっ。拙者という弟子がおりながら、かような猫などにうつつを抜かして‥‥。先生の馬鹿っ!」


窓際に立ったシロは、腹立たしげにそう言った、丁度その時、盆に人数分のお茶を淹れて、氷室キヌが戻って来る。
おキヌが盆をテーブルの上に載せると、タマモは、ソファから軽く身を起こして、湯飲みを手に取り、茶を啜ると、横目で彼女の顔色を伺う。
昨日今日になって、彼女の表情も、悪い方向に向かっていた。
何時も、何時でも仲間内では笑っているおキヌが、今は少しばかり悲しそうに、目を伏せている。
今、事務所の中で、精神的に一番やられているのは、彼女だった。
その様を見ると、タマモはなるべく、何時も通りの声をもって、シロに対して言葉を返した。


「‥‥アンタみたいなうざったい犬よりは、忠実な猫の方が良い、ってことじゃないの?」

「犬じゃないもんっ!」


その、シロの声に、彼女が苦笑した様を見ると、タマモも少しばかり安心する。
タマモ自身は、あのようなスケベで、煩悩の塊みたいな男はどうでも良いと思っていたものの、周りの人間達、美神が、おキヌちゃんが、そしてシロが暗いというのは、どうにも耐え難かった。どうにも空気そのものが重く、居づらいのだ。
だから、これでいい、と、そう思う。
シロには悪いが、シロを茶化すことで、おキヌちゃんを少しでも元気づけられるなら、これでいいのだろう、と。

一方、憤慨したシロは、テーブルに載った盆から、「拙者の」と書かれた湯飲みを勢いよく拾い上げ、茶を一気に喉に流し込んだ。
刹那。


「ア‥‥あっつい〜〜!!?」


喉を両手で押さえて床を転げ回るシロを見て、タマモは軽く嘆息した。


「やっぱりあんたも猫なんじゃないの?」

「猫舌だけど、猫じゃないもんっ!」


そこから始まる、いつものやりとりに、キヌはまたも苦笑した。
しかし、何時ものように、2人のやりとりを止めるだけの余裕が、今の彼女には無かった。

横島の近くに、例の、猫又の親子が移り住むと聞いた当初、おキヌは何とも感じなかった。
しかし、ここ数日、彼等と、横島とが接している様を見て、気付いてしまったのだ。
彼等が、まるで、本当の家族みたいだ、と。
横島の腕にぶら下がっているケイと、それを笑ってみている母のミイ、3人の姿が、頭に浮かんでくる。
どう見ても、誰が見ても、横島はケイの、兄というよりはむしろ‥‥限りなく父に近い位置に居た。
その時、自身の心の中に、小さな火が灯ったのに、彼女は気付いたのだった。
小さいながらも、盛んに燃えるその火は、綺麗な赤い色をしていた。それこそ、夕日のように、真っ赤な色を。

彼女は、自身の気持ちを、未だ量りかねていた。
幽霊であった当時は、確かに誰よりも、彼のことが好きだ、という確信があった。
生き返ってからも、その気持ちはしばらく、消えることは無かったというのに。
何時から、こんな風に、変わってしまったのだろう?
彼の事を決して、嫌いになった訳では無いのに。
あの時、消えてしまった、心の中の大きな炎は、今の今まで、灰のままだったのに。

過去にも、今と似たような状況になったことがあった。
その際、美神さんをけしかけようとしたのに、自分では何一つ行動しなかった。
嫉妬ばかりしてしまう、自分の心を、諫めるのが精一杯だったのに。
これが、横島さんに対する、自分の気持ちの限界なのかも知れない。
好きではあるけれど、その気持ちが、恋愛のそれかどうかと訊かれると、答えられない。
それこそ彼のことを、兄のように考えているのでは無いか。
自分は、彼を、ただ兄のように慕っているだけなのかも知れない。


「横島さん‥‥。」


彼女の視線は、遠く窓の外、彼の家の方へと向いていた。





〜続く〜



作者の残した何か

私が懐に抱えっぱなしとなっている作品の、世界構成の為の前提となるのが、この「SLOW BURN!!」となります。
あらかた筋が決まっているので、書きやすいことは書きやすいのですが、今後の展開が、これを読まれた皆様の期待に応えられるものになるかと訊かれたら、正直難しいと答えざるを得ません。
理由は、今後を読んで頂ければ分かるとも思うのですが‥‥これ以上話すというのも野暮ですし、先を楽しみにして下さる方は、続編をその目で見てみて下さい。
とはいえ、それの投稿は、不定期とならざるを得ないので、極端につまらない、ハリーポッターを読んでいるつもりで、期待はせずに、お待ち下さい。

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