ザ・グレート・展開予測ショー

敵艦の中


投稿者名:NEWTYPE[改]
投稿日時:(00/ 6/26)

横島が気づいた時は、二号機は左右から二機のMSによってガッチリと腕を押さえられていた。
どう考えても勝ちめはなかった。
「・・・・・・・」
横島は左半分が死んだままのモニターを見ながら、二号機をつかんでいるザックを見て、こいつがおふくろのカプセルを狙撃したのだろうと想像した。
それは許しがたいことだが確かめようがなかった。左右のパイロットは、接触会話を聞かずにアレキサンドリャ―に接近していたからだ。
「敵艦か・・・・」
アレキサンドリャ―の特異な艦影が太陽の光を受けてその輪郭を現し始めた。
そのままの形で、横島はアレキサンドリャ―のMSデッキに収容された。
強制的にハッチを開けさせられるのはいやであった。
だから、横島は自分からハッチを開いた。
もちろん、母の死を目撃した後で流したわずかな涙の跡は完全に消したつもりだった。
銃を構えた将兵たちの姿が、横島の目に飛びこんできた。
横島は手をあげてハッチの外に出た。タラップの前後、二号機の頭にまで兵がいた。
横島はそれを見渡して、事態はより深刻になったと思った。
もう、なるようにしかならない。
カオス教のスタッフにチャリをぶつけたことなど、あっという間に昔話になってしまったのだ。
「横島忠夫かっ!」
正面の中尉が怒鳴った。
「そう・・・」
だ、の声がでなかった。それでは女々しく映るだろう、と思ったができなかった。
「さっ、こっちに来いっ!!」
「・・・・・・・」
横島は、無言のまま兵に連れられ近くの個室に閉じ込められた。


横島は、ベッドに腰を下ろして、天井を見上げながら一人物思いにふけっていた。
(おふくろはなんで死んだんだ?俺の所為か。俺がICPOに参加したからおふくろは死んだのか・・・。でも・・・・俺は間違った事はやってないよな・・・。うん、おふくろもそう言ってたハズだ。じゃあ、おふくろは死ぬのが目的だったのか。そうなのか。分からんな・・・・・何も分からん・・・・)
横島は、何気なく虚ろな目を壁に向けると、画鋲で留められた若い男女の写った一枚の写真に気がついた。
軍服姿の男が女の肩に手を回し、二人とも満面の笑みを浮かべている。恋人同士なのだろうか・・・・・。
その時、横島は本能的におキヌの事を思い出していた。
(・・・・・そういえば、おキヌちゃん今ごろどうしてるんだろうな・・・・。小竜姫様の話じゃ、カオス教があのコロニーを完全な軍事基地にする予定だって言ってたし。無事だといいんだが・・・・。)
横島は何だか無性におキヌに逢いたくなった。母親という一応の心の支えを失った今、一番自分にとって身近な存在なのが彼女だったからかも知れない。
横島は黙って唇を噛んだまま俯いた。
どのくらい経っただろうか?
「横島君!」
ドアの向こうで低く横島を呼ぶ女性の声があった。
「・・・!?・・・」
「横島君・・・・」
「小竜姫様ですか?」
横島が答えた瞬間にドアが開いた。
後ろ向きのパイロット用のノーマル・スーツの背中が、一人の兵士を押しこんできた。
その手際は鮮やかであったが、重力があったらそう簡単にはいかなかったろう。
そして、そのパイロット用のノーマル・スーツが振り向いた。
「横島君、この艦から脱出するわ!ついてくる気はある?」
「え・・・・・・で、でも小竜姫様は脱出してどうするつもりなんスか?」
「私もICPOに参加するわ。人質作戦をとるような部隊にはついていけないもの。」
「本当ですか!一緒に戦ってくれるんスね!俺、嬉しいです!」
「フフ・・・・大げさね。」
横島は元から小竜姫のことが好きだった。彼女と初めて会った時から敵のような気が全然しなかったのだ。それに彼女にはどことなく母親に似た面影があった。そう・・・・おキヌとは、また違った安心感を自分に与えてくれる――――そんな存在だった。
「でも小竜姫様、どうやってこの艦から脱出するつもりなんスか?クルーだっていっぱいいるだろうし・・・・・」
「それなら大丈夫よ。私は、アーギャマ追討戦を仕掛ける命令を受けているの。その出撃の時にパイロットの代わりを君にやってほしいのよ。」
「分かりました。やってみます。」
横島は、答えながら部屋を出ると、冷静を装った小竜姫の後に続いた。
すれ違う兵士もいる。しかし、彼らはカオス教のスタッフに一目置いている。小竜姫の後につく横島は、カオス教の都合で移動しているものと信じて疑わなかった。
それは、アレキサンドリャーの将校でも同じだった。
「警備兵は?」
そう声を掛ける下士官もいた。
「民間人にそんなものが必要なのですか?」
小竜姫は色っぽく言ったものだった。それで、その下士官も横島の背後をすり抜けていった。
小竜姫は、先にノーマル・スーツ・ルームに入った。
「遅かったですノー?」
すでに支度を終えているタイガーが言った。
「雪之丞は?」
「第一波はワシらでと命令されました。雪之丞サンは第二波ですノー」
「横島君!」
小竜姫は、低く横島の名前を呼んだ。そして、小竜姫の言葉と同時に横島の体が、タイガーに向かって弾け飛び、さらに小竜姫が、タイガーの首筋に手刀を入れていた。だが、それでもタイガーは倒れはしない。横島は尚もタイガーの背後からケリをかまし、これでようやくタイガーは気を失ってくれた。
「横島君!」
横島は、小竜姫にうながされてパイロット用のノーマル・スーツに着替えた。
「サンバイザーを下ろして。パイロットらしく!」
二人は、ノーマル・スーツ・ルームからMSデッキへと出た。
二機のMK-Uが出撃準備を完了していた。
「小竜姫中尉!タイガー中尉!搭乗急げ!」
「第二波要員!ブリーフィングルームで待機っ!」
「小竜姫中尉っ!第一波戦闘隊長、何をしている!」
「了解!急がせないで!初心者なのよ!」
「カオス教のスタッフにその言葉は聞こえないな!地上でのシミュレーションで完璧に実行をしていたはずだ!」
横島のノーマル・スーツのレシーバーにもその管制官の声が飛びこんできた。
「タイガー中尉っ!」
正面にメカニック・クルーが立っていた。手で、このタラップを行けという合図をする。
「行けるのか・・・・・」
横島は、全身に汗が吹き出て、ノーマル・スーツの下で音を立てているように感じた。
タラップを昇り、MK-Uの二号機のコックピットが目の前に迫った。
「よう!タイガー!」
横島は、コックピットに飛びこみながらも、壁のデッキにノーマル・スーツがいるのを見た。
カオス教のスタッフのひとりがノーマル・スーツを着こんだ格好で立っていた。
横島は無言でハッチを閉じた。
「外界とは遮断できた」
モニターを全開する。左右前後のノーマル・スーツ・デッキの光景がドッと押し寄せ、すべてのノーマル・スーツのヘルメットの視線が自分に向けられているように思えた。
「確認!」
出撃チェックだ。
「急ぐ!遅れている!」
小竜姫の声が必要以上にヒステリックに聞こえた。
「中尉っ!どうした!発進手順を無視するのかっ!」
管制官の怒鳴り声が聞こえる。
「敵が来ていたらそんな暇はない!二号機、続け!」
ドゥッと一号機のテール・ノズルが噴き、MSデッキを噴煙が満たした。
「冗談はやめろっ!」
管制官の悲鳴が聞こえた。
「よし・・・・・!」
横島の二号機も一号機にならってカタパルトを無視して発進した。
(おふくろ・・・・・必ず仇とってやるからなっ!!)
横島は心の中でそう呟いた。





キャラクター〜〜〜〜〜〜〜〜
カクリ〇ン・・・・・タイガー(あまり登場機会もないので・・・(笑))

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