ザ・グレート・展開予測ショー

アキラしっかりしなさい!#2 (絶対可憐チルドレン)


投稿者名:かいる
投稿日時:(05/12/18)




騒がしい朝食を何とか終え、急いでカバンに教科書を詰める。
緊急連絡用に携帯電話を持つことも忘れない。
・・・校則禁止ではあるのだが、まあ学校側にも話は行ってる。
ずるいとは言っても任務のためには仕方ない。


「あきらー、はやくー!」


既に初音が準備を終えて玄関から声を張り上げる。
うう、食器洗いぐらい手伝っても良さそうなもんなのに・・・あのヤロー。

ボヤいても状況は改善されない。
乱暴にカバンの蓋を閉め、ドタバタと玄関に向かう。


「遅いよあきらー」

「うるせー!」

「ハイハイ、朝からケンカしないの。」


向かいのドアの前で初穂さんが笑いながら諫める。


「今日はあたし、夜勤だから夕飯はふたりで食べなさいね。
・・・学校、がんばっといで。」


そう言ってふたりともわしゃわしゃ頭を撫でくりまわされる。
すっかり子供扱いだけど、どこか気持ちいい朝の恒例行事だ。
そして、お決まりの台詞を言って、家を後にした。



      「「――――――――――いってきます!」」











                アキラしっかりしなさい!(絶対可憐チルドレン)
                     #2 通学路には危険がいっぱい













「遅刻遅刻〜チコクはマジヤバいって感じよね〜」

「・・・何言ってんだ?おまえ。」

「・・・本来ならオプションとしてトーストが欲しいところだわ。」

「・・・だから何言ってんだ?お前。」

「ねぇ、明日から朝ご飯、洋食にしてみない?」

「却下。だってパン食だと、お前の腹が昼まで持たねーんだもん」

「むっ。どういう意味よ。」

「文字通りの意味だろうが。自分でもわかってるだろ?」

「うっ・・・・・・確かに、学校で暴走するわけにはいかないわね・・・」

「ほれ見ろ。」

「じゃ、じゃあ、ご飯とパン、両方出すことにしない?」

「だから何でそこまでしてパンにこだわるんだお前は!?」

「うう・・・だって、演出上パンがないとしまらないんだもん・・・」

「??」

「もういいわよ! べー。あきらのけちー。りょうりふぇちー。」

「なっ!この、なんだその罵倒!てめえ待てコラ初音!」

「べろべろー」


器用にバック走で舌を出しつつ逃げる初音と、それを追いかける俺。
奴はフォワードというポジション故か、そのチカラ故か、異様に身体能力が高い。
・・・・・・言いたかないが、俺はインドア派なんで、体力はそう高くはない。


「ちきしょー!待ちやがれ!」

「ここまでおいでー。BABELの味っ子の名が泣くわよー。」

「徒競走と全然関係ねぇだろうが!つーか俺はそんな二つ名襲名した覚えはねえ!」




くう!わかっちゃいたが全く差が詰まらねー。
さりげなく悔しいぜ!

・・・っ!曲がり角に人影!


「―――――――初音!後ろ!止まれ!」

「そんな古い手にはひっかからないわよーだ。」

「馬鹿!よけろ!」

「えっ?」

くっ!激突する―――――――――!!













・・・・・・・・・ごちん、とも、どすん、とも衝撃音はしない。
初音がギリギリでかわしたのか?

そろそろと目を開けると、目を驚きに丸くした初音が宙に浮かされていた。


・・・いや比喩的な意味で、地に足がついてないというのもあるのだが。
物理的な意味でも地に足がついていなかった。

その後ろに、人影があった。おそらく能力の行使者であろう。
目に入ってきたのは、黒髪のロングヘアにトレードマークのベレー帽。
そんな出で立ちの女性はにっこりこちらに微笑みかけながら口を開いたのだった。



「朝から元気ね?明くん、初音ちゃん?」

「な、ナオミさん!」







梅枝(うめがえ)ナオミさん。
俺たちの特務エスパーでの先輩に当たるヒトだ。
任務達成率もトップクラスを誇っている。

コードネームは「ワイルドキャット」。
なんでも最近コードが変わったそうだが・・・詳しいことはわからない。
まあ、ともかく、登下校の道が一緒なので(中高一貫校だからな)
よく俺たちと一緒に登校したり、帰ったりするのだ。





「いや、スミマセン。うちのケモノが失礼を働いて。」

くすっと笑って返すナオミさん。

「気にしないで。それにしてもホント仲がいいのね。」

「いや、そんな・・・躾は飼い主の責任ですか・・・・・・らっ!?」

「――――――――誰が誰の飼い主ですって?」

「ゲフッ・・・・・・お、おま・・・・・・ひ、肘は無いだろ肘は・・・」


そんなやりとりの最中もナオミさんはこちらを見ながらクスクス笑っている。
   


そういえば、コードネームが変わってからのナオミさんはどこか明るい。
というよりは、以前から感じていた張りつめた感じが無くなった気がする。
よく笑うようになったし。
何があったにせよ、いい方に働いているようで良かった良かった。




「フフフ・・・どう?特務の仕事は?慣れてきた?」

「ええ。おかげさまで。」

痛む脇腹を撫でながら返答する。

「任務の難度はさすがに高いっすけど・・・ようやく慣れてきたところです。」

「・・・・・・」

「そう。頑張ってね。わからないことがあったら何でも聞いてね?」

「うす。ありがとうございます。」 

「・・・・・・」

「じゃ、私日直だから。お先に失礼するわね。」






微笑みを残して、ぱたぱたと音が聞こえるように駆けていくナオミさん。
うーむ。清楚というか何というか。おしとやかだよなぁ。
物腰も大人びててカッコイイし。さすがに単独で特務張ってるだけある。


まったく、こいつにも少しぐらい見習って欲しいもんだ――――――いでっ!?


「―――――――――――あら、悪かったわね。・・・・・・お・し・と・や・かじゃなくて。」

「い!痛いっ!あし、足どけろっ!ワザとやってんなお前っ!」

足先にゆっくりと力が込められていく。
ご丁寧にグリグリとひねりの力まで加えられて、非常に痛い。
泣いてしまいそうだ。


「は、早くどけろってば!いいいいい!痛い痛い痛い!」

「あら、ごめんなさい――――――――――――ねっ!」

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!」



声も出ないとはこういうことを言うのだろうか。
というよりも、声にならない。

視界が一瞬白く染まった。
・・・・・・小指は反則だろ。思いっきり踵でねじりやがった・・・・・・
あの野郎・・・




うずくまりながら痛みの波が引くのをじっと耐える。

―――――――ナオミさんとの会話は、聞いて為になることも多い。
任務達成率もトップクラス、少人数チームの任務のこなし方、などだ。
しかし、何故かナオミさんとの会話の後、初音の機嫌が著しく悪くなることが多い。
・・・口数自体も少なくなるしな。

―――――――ひょっとして、仲、悪いんだろうか。
ナオミさん自体は好意的なような気もするんだが。う〜む、わからん。





「ふん、あきらのばか。」



呟かれた台詞に、涙でゆがむ視界を前に向けるとさっさと進んでいく背中が見えた。
こりゃ相当怒ってるな。

面倒だけど、怒らせたままってわけにもいかねえしな・・・やれやれ。


朝からこれじゃ、先が思いやられるな・・・
そんなことを考えながら、追いつくために足を速めた。




今日の運勢は最良、とはいかないようだ。

















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