ザ・グレート・展開予測ショー

そうていのはんいない


投稿者名:MAGIふぁ
投稿日時:(05/12/15)


 厄珍堂。

 それは時代の古今、洋の東西を問わず、あらゆるオカルトアイテムの集う場所であり、現代のエクソシスト、GS達の武器屋であり、防具屋であり、道具屋である。

 そしてその主厄珍には、一つ悪い癖があった。

 海のものとも山のものともつかない、怪しげな品を客で試すという悪い癖が。

 その一端を、ここに紹介しよう――



 アシスタントYの場合



「で、今度は何を試させよーってんだ?」

「ヒッヒ。そう警戒せんでもいいヨ、ボーズ。今度のは絶対に大丈夫!安全確実アル」


 明らかに腰が引けているデニムにジーンズの若者に、胡散臭さでいっぱいの笑みを浮かべて、棚をあさる厄珍。その姿は、明らかに自分の言葉から説得力という物を奪い去っていた。

 若者が逃げ出そうとする前に、お目当ての品を見つけてしまった厄珍が嬉しそうに説明を始める。


「これは凄いヨ!一説によると異世界から、それも文明の進んだ未来から流れ着いたとも言われる逸品!なんと飲むだけで因果律に影響を及ぼし、スリル満点の体験を味わえるという優れモノアル!!」

「スリル満点?」


 その言葉をどう解釈したのか、どんな連想をしたのか、スケベそうな笑顔で問う若者に、厄珍も笑顔で返した。


「スリル満点アル」

「安全は保障されてるんだったよな?」

「それは保障するアル。なにせ、この『アドベン茶』はアレがらみの品アルからなー」


 厄珍の言う、アレと言えば、その……アレだ。

 青くて丸くて2頭身で、最近ようやく中の人が定着してきた…


「ああ、あのドラ…」

「シャラップ!危険よ!それ以上、言う良くないネ!!」


 同じS学館系でも、版権などが厳しい為に決して口に出来ないアレを言いかけた横島を、厄珍が厳しく言い咎めた。


「あ、ああ……じゃ、もらってくぜ」

「それじゃ、またね。あとで効果はどうだったのか、レポート寄越すアル。バイト代くらいは払うヨ」


 怯んだ若者が、そそくさと出て行こうとするのを見送って、厄珍は店の定位置につき、テレビをつけた。

 これから毎週楽しみにしている、『昼下り高校人妻女教師』が始まるのだ。今週こそ、あの根性なしの生徒が教師を押し倒せるのか、気になって仕方がない彼に、見逃せるわけがなかった。

 おそらくは、いつも通りに「やっぱりな」といった結果になるのは解っていたが、それでも期待してしまうのが人の性(さが)と言うものだ。

 そう。いつだって波乱万丈な人生を送っているアシスタントYに、いつも通りの人生とさほど変わらないのだろうな、と思いつつもアドベン茶を飲ませたのと同じだ。

 人生、なかなか思った通りにはならない。だからこそ面白いのだ。


「こわがることないのよ、タカシくん。スカートのホックをはずしてちょうだい」
「せ、先生……僕は…僕は…………………………やっぱり、できませんっ!!」
「タカシくんっ!?」


「ナメとんのかコラーー!!」


 こんな事もあろうかと手近に置いておいた金属バットで、テレビにやるせなさと怒りを叩きつけながら、厄珍は何故か『なんとなくだがYもこのテレビのようになっているんだろうな』と確信したという。

 なお、同様にアシスタントTに石ころ帽子を試させたところ、やはり予想通りの展開になった時……厄珍は何故だか、涙があふれて止まらなかったらしい。



 <続かない>

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