ザ・グレート・展開予測ショー

手をつないで!前編 (絶対可憐チルドレン)


投稿者名:とおり
投稿日時:(05/12/14)




各省庁が集まる東京霞ヶ関。
秋風が吹き始めた、都心のオフィスビル街。
吹き降ろすビル風が強く冷たく、街を行きかう人たちは身をかがめて寒さをしのぐ。
東京駅から程近い、飾り気の無いビルが整然と立ち並ぶこの区画に立つ、バベル本部ビル。
葉が色づいた並木道の前、他の省庁に比べれば歴史が浅いせいかつつましげなそのビルの、だが立派と言っていいだろう正面入り口から、任務を終えた皆本は帰着した。



「おかえりなさい、皆本主任」

「おかえりなさい」



バベル評判の受付嬢「ザ・ダブルフェイス」の声が響く。
常盤奈津子と野分ほたる。
二人は二十歳と若く美しく、かつ豊満なスタイルで、奈津子は華やかさから、ほたるはしとやかさから局員や外来の者にも人気がある。
彼女達は共にレベル5の能力者でそれぞれ透視能力、精神感応能力を持ち、普段はこの能力を生かし外来者を的確に案内、かつ不審客の確認をこなし、本部内の安全を守っている。



「ああ、ただいま。二人ともいつもご苦労様」



皆本は手を上げて返事をしながら、足早に自身の執務室に戻る。
今日も彼が指揮するエスパーチーム「ザ・チルドレン」の出動があった。
だが、薫・紫穂・葵、まだ10歳ほどの彼女達はいつも皆本の頭を悩ませる事件を起こす。
命令無視や独断行動での不始末、皆本は帰着するとげっそりとした表情をしている事が多い。
今日もこれから、いつものような始末書作りに追われるのだろう。
奈津子は皆本さんも大変よねとつぶやく。
が、いつもの様な返事が無い。
ほたるを見ると、彼女の視線がまだ皆本を追っている事に気付き驚く。
ほたるは奈津子の視線にも気付かず、皆本がエレベーターに乗り込み姿が見えなくなるまでじっと見つめ、ため息を付く。



<な・に・を・し・て・る・の・か・な・あ〜>



突然(少なくともほたるにはそう感じられた)頭の中に奈津子の思考が飛び込んできて、ほたるを混乱させる。
驚いて左を向けば、奈津子が口に手のひらを当て目元ににんまりとした笑みを浮かべている。



「ちょっとやだ、なにしてるの!ちゃんと言葉で言いなさいよ」

「ふっふ〜ん、おや〜。それじゃあ言葉で言いましょうかねえ〜」



奈津子は人の悪い口調で言い返すと、エレベーターを見やり言う。



「あのエレベーター、なにか異常でもあったのかなあ〜」



ふふんと鼻をならしてからかう奈津子に、ほたるは顔中真っ赤にして、目をぱちくりさせるとごまかす様にそそくさと席を立つ。



「あたし、もう休憩にいくからね!」

「え?あ、まだ30分もあるじゃない、こら勝手に席立つなー!」



奈津子の抗議もむなしく、ほたるはすたすたと足早に立ち去る。
これからしばらく来客の予定は入っていなかったし、急な応対があったとしても今日は週の中日だから、それほど立て込みはしないだろう。
仮に立て込んだとしても、奈津子にやらせてやればいい。
ほてった頬に右手を当てそのほてりを冷ましつつ、いたずらな顔でほたるは休憩室へと向かった。











−手をつないで!−










執務室と言うにはやや小さいが、書棚と専用の机が備えられた部屋で皆本は荷物を下ろし、上着をかけ、シャツ一枚になるとネクタイを緩め机にかじりついた。
任務後の恒例行事となった、机を埋め尽くす書類の山と格闘するからだ。
消防庁、総務省、警視庁、検察庁、国土交通省。
各部署からの苦情、請求書、報告書、さらには始末書。
今回もまた、ゆうに一晩は処理にかかりそうであった。



「えと…、これとこれは終わったから局長に回して…
 あ、これは決済が必要だから総務部に確認をして…
 ああもう、止めだ!休憩休憩」



気がつけば既に、零時をまわっていた。
主任という肩書きやこの部屋の大きさからは分不相応な大きい背もたれがついた椅子から飛び跳ねるように立ち上がると、タバコを吸わない皆本が休憩の時にいつも入れるコーヒーを取り出す。
本格的な物はメイカーがないので出来ないが、カップの上に紙枠をはめて簡易的にフィルターを通して入れるタイプの物が備えてあった。
簡易的とはいえそこそこの味が楽しめ、皆本はこれが好きだった。
カップを棚から取り出すと、取り付けてお湯をかける。
少しばかり間をおいて、蒸らしてから残りを入れるのがコツだ。
インスタントの様に手早く入れられるものではないが、皆本はこのいくばくかの時間と、湯気と一緒にコーヒーの香りが立つ瞬間が気に入っていた。
ひたすらに単調な事務処理仕事からほんの少しの間開放されることを象徴するこの香り、手を休めてゆっくりと淹れたてを楽しむことが出来るのもまた贅沢な時間であったから。



「それにしても…」



皆本はカップを口から離すとブラインドを指で下げ、夜の街の明かりに目を凝らし眺める。



「こうして夜の街を見ると、ノーマルだエスパーだ、そんな違いは分からないんだけどな…」



東京駅からは間断なく電車が滑り込む音が聞こえ、その遠くで車の行きかう音が響き、ライトの明かりが規則的に動いては止まり、その鼻先を様々な人達が歩いている。
街の明かりで薄ぼんやりと照らされた夜の空には、一等星が申し訳なさそうに光を発している。
この街で暮らす人たちの営みは、太陽に照らされた昼よりは自分達が作り出した文明の力で照らされる夜の方がよりあざやかに浮かび上がるのではないか。
皆本は漠然と、考えていた。



「今日も我任務を遂行せり…、か」



今日の任務は対エスパーテロ組織【普通の人々】の計画を事前に封じる為の作戦行動で、最強エスパーチーム「ザ・チルドレン」を投入し完遂した。



―――我々はどこにでもいるぞ―――



そう、テロリストはどこにでもいた。
ただ生まれ持った能力が人を恐れさせ、果てには命を狙われる。
同じ人間同士が、ただ能力を持っているかいないかで争い騒ぐ。
彼らに言わせればそれは区別。
無残と言っていいだろうこの悪循環を少しでも緩和するための作戦は、成功に終わった。
だが、皆本には作戦を成功させた高揚感よりも、いつまでこのような事を繰り返さなければいけないのかという徒労感がずっと強く、磨耗する。



「化け物どもを一掃する、か」



夜の支配すら抜け出す文明の力、それを作り上げた人間。
他の生命から畏敬すらされる存在であろうのに、同種の者達にこうまで恐れをなすのはなぜなのか。
本能的な恐怖なのかもしれない、人間が火を恐れたように。
未知なものへの畏怖かもしれない、人間が闇を崇めたように。
エスパーという存在、彼らには異種と思える者たちを克服するために、征服したいのだ。
人間と言う種が、これまでずっとそうしてきたように。
自分達にはわからない。
自分達とは違う。
だから安心して眠りにつくために、排除する。
もう夜はこんなにも明るくて賑やかなのに。
皆本は胸に落ちる様な寂しさを感じずにはいられない。
ブラインドを戻し、カップに口をつけて一息に飲み干す。
コーヒーはもうすっかりと冷めていた。











「「おはようございまーす!」」



翌日。
ほたると奈津子がいつもの様に受付をこなしていた所に、任務に赴く「ザ・チルドレン」と皆本が通りがかった。



「おはよう、ほたるさん奈津子さん」

「「「行ってきまーす」」」


皆本とチルドレンも、二人に挨拶を返す。
先の「スパイ狩り」事件以来、なにかれとなく奈津子とほたるは皆本と話す機会が増え、またチルドレンとも仲良くなった。
たまにいやらしい顔をした薫がすげーすげえとほたるの胸に飛びついて顔を埋めるのは、勘弁してほしいと思っていたが、チルドレンはわいわいがやがやと賑やかで愛らしい。
肩の上から皆本を小突き回す威勢のいい薫、なんやねんなと二人に突っ込みを入れている葵、そしてテクテクとおとなしそうに皆本に寄り添う紫穂。



「いってらっしゃい」



彼らを見送って、ほたるは視線を手元のモニタに戻す。
だが奈津子は、別れ際ほたるの視線がどこにあったか見逃さなかった。
ほたるの目先は紫穂が皆本と手をつないだ、その手に注がれていた。
紫穂と手を繋ぐ、それがどんな事であるか、奈津子は理解できた。
サイコメトラーと手をつなぐ、一般人であれば、いやバベルの職員であっても決してしない者も多い。
なぜか。
接触感応者、しかもレベル7である彼女と手をつなぐという事は、自分の全てを覗き見られる可能性があるという事。
接触感応者はそれこそ現在の記憶だけでなく、その物自体に残っている記憶を過去に遡って見ることも可能で、未来以外は全てを感じる事が出来る。
もしも能力に長けたエスパーであるならそれを防ぐことも可能かもしれないが、大半の職員やエスパーにとっては透視プロテクターを使ったとしても、不可能に等しい。
ゆえに、ごく単純な防止策を皆が取る。
そう、彼女とは手をつながない。極力体を触れさせない、接触を避ける。
彼女がやらないとわかっていても。
そしてそれがどんなに彼女に辛い想いを強いているか、想像に難くない。
奈津子やほたるに限らず、このバベルにいるエスパーは紫穂と同じように多かれ少なかれ一般社会から敬遠された経験を持つ。
国家機関に所属する特務エスパーという肩書きからも分かるように、国全体を見渡しても数の少ない高レベルエスパーがほとんどで、それだけ周囲からの違和感も強かった。
ほたるもその内の一人だ。
いや、ほたるは特に、と言い換えた方が良いかもしれない。
ほたるは精神感応者であり、接触感応者ではない。
紫穂の様な接触感応者は触れなければその記憶や考えを読むことは出来ないが、ほたるはある程度の範囲内であれば人の思考は触れていなくても読むことが出来る。
ほたるの力は年と共に成長し、超度5という高レベルに達し満ちた。
学校や地域社会、果てには家庭の中でさえ、彼女は避けられた。
周りの者達は彼女がいる、というだけで不安になった。
自分の思考が読まれているのではないか。
後ろ暗い感情が、もれ聞こえているのではないか。
大切な感情がひそかに知られ、気付かないところで笑われているのではないか…。
だがその感情は、哀しいことに事実とあまり違わない面もあった。
力が強くなるに従い、ほたるに他人の感情を読むつもりなど全く無くとも、他人が強く思う事、感じている事は自然と頭の中に飛び込んで来るようになった。
それがどれほど自分自身を、周りを苦しめたか、ほたるは強く覚えている。
居場所を無くし、学校にもいられなくなった彼女はバベルから来たスカウトを受け、能力を制御する術を学び、また再び他人と交わる事の出来る生活を手に入れた。
しかしバベルに在籍していても、その中でさえ彼女を少し知ると透視プロテクターを身につける者が多く、彼女にはいつも仕方ないという諦めとも割りきりともつかない、冷えた寂しい感情が胸にしこりの様に残っていた。
そんなところに、皆本が現れた。
研究員という肩書きで入局した彼は局長の肝いりで、ザ・チルドレンの指揮官を努めているが、局員達が密かに驚かされた事があった。
彼はだれもが恐れる「感応者」に気兼ねなく手をつなぐ。
いつからかそれを見ていたほたるに、皆本と紫穂の関係がどれほど眩しく映ったことか。
紫穂にとって皆本の行為がどれほどの救いになっているか、恐らく皆本は知らないだろう。
でもだからこそ。
そんな皆本だからこそ、紫穂は手をつないでいるのだ。
遠慮なく、自然に。すうっと手をつないでくれる皆本だからこそ。
そしてほたるは、私もと。
いつか私もと、そう思う様になるまでにさほどの時間はかからなかった。



「お熱ねえ」

「えっ…?」



奈津子はまたからかうように、でもそっとほたるに声をかけた。
ほたるの白い肌はすぐに桜色に染まり、恥ずかしげに顔を伏せる彼女に、奈津子は目を細め、彼女とチームを組んだばかりの時を思い出し笑う。
―――あの時もこんな風に顔を伏せていた。
ほたるは昔、人と交わろうとはしなかった。
一歩引いた場所からおずおずと物を言う、控えめな、いや消極的な暗い女の子だった。
局長からこれから一緒にやっていくと紹介された時も、正直な話やっていけないとさえ思った。



「…よろしく」



足元を見て震えながら手を差し出してきた彼女を、奈津子はよく覚えている。
人が怖くて仕方ない、そして人を怖がらせる自分がもっと怖くて仕方ない。
能力にのまれて、自分自身すら消そうとしていた。
その彼女が。
あのほたるが、人を好きになったのだ。
奈津子には、驚きと嬉しさがこみ上げてきて、目頭が熱く潤む。
照れくさかったか、恥ずかしかったのか。
ほたるの背中をバンバンと叩く。



「いたっ!なにすんのよ、奈津子!」

「がんばんなさいよ、ほたる」



ほたるは更に真っ赤になって、耳も首筋も真っ赤かだ。
それが奈津子には嬉しい。
しばらく掛け合いを楽しみたかったが、来客の姿が目に入った。



「ほら、お客様来たわよ、前を向く!」

「え、あ。いらっしゃいませ。御用件はなんでしょうか?」



気付かれぬよう態勢を整えなおすと、手際よく来客を知らせ、流れをさばいていく。
「ザ・ダブルフェイス」、二人の息はぴったりと合っていた。



「皆本さん達、今頃はどのあたりかしら…」



手を動かしながら、ほたるは思う。
秋の高く澄み渡った空。
夏とは違った淡い水色が木々の淡い黄色と混じり、落ち着いた情景をかもし出す季節。
それはまるで、ほたるの心を切り取ったようになつかしい風景だった。












「あ、見てえな皆本はん。あの山、なんか岩がそのまま山になったみたいに上の方が四角くてごついで〜」

「ほんとだ、上に登ったり出来んのかな」

「葵ちゃんがいればつれってってくれるんじゃない?」



高速を東に進み、街ははるか眼下になって、前にはどこまでも広い空と見事に色づいた山が遠くにある。
チルドレンは、久しぶりの遠出での任務に、後部座席でお菓子をつまみながらはしゃぎいつにもましてかしましい。
この所都内での活動が多かったためか、見晴らしの良い風景に心が躍るのかもしれない。
皆本も普段は任務中の飲食や、だらけたりすることには口やかましいのだが、自身もつられて浮き立ち、彼女達の歓声を聞いていた。



「あれ、なあなあ。入道雲があるで!」



皆本はちらと左を向くと、確かに秋も深まった折には珍しい雲がにょきにょきと湧き立っている。



「へえ、この時期に珍しいなあ」



秋空に入道雲、アンバランスな取り合わせに思わず笑いがこぼれる。
今日はゆったりと出来そうだ。
だが皆本が思った瞬間、それは起こった。



「きゃあああ!」



一瞬の破裂音――そして、不自然に振動と衝撃が拡がる。
トレーラーの長大な車体が右に傾く。
バースト?!
信じられない現実に、皆本はサイドミラーを覗き込む。
そこに写るのは、防弾処理を施されたはずの後輪が弾けている姿。
恐らくは特殊弾で打ち抜かれたのだろう。
周囲には数台の黒塗りの車―― 護衛車でないことは明白だった。
緩んだ気持ちが敵の接近を許してしまったことに、皆本は歯噛みした。
横転だけはしないようにとスピードを緩めるが、前後に車が付き引き離す事がより困難となりミラーを見ても護衛隊の車影は無い。



「どうする…」



皆本は状況を整理しようと努めていた。
高速の山深い場所での仕掛け。
手際の良さは、チルドレンが出動することが事前に漏れていた事を裏付ける。
昨日の作戦の直後というタイミング、また護衛隊を撒けるだけの実力を持つ相手。
防弾処理をしてあるタイヤを簡単に打ち抜く銃弾。
間違いない、【普通の人々】だ。
いまさらながらに皆本はうかつさを恥じていた。
先日の作戦のあまりの成功ぶり、あれは陽動ではなかったのか。
今思えば、現場の端端での彼らの行動に不審点が浮かび上がる。
そう、うまく事が運びすぎた。
厳しいと思われた作戦を成功させた後での、日を置かずしての今日の出動。
油断した。
以前エスパー同士の喧嘩で出動した時の様に、彼らの罠にはめられたのだ。



「三人とも、後のカーゴに入っておけ!そこなら銃弾や熱線も防げる!」

「なに言ってんだよ皆本、タイヤをやられて早く走れもしないんだろ!?
 だったら、葵のテレポートでさっさと…」

「そんなことは敵も織り込み済みだ!
 ECMを装備しているか、出来たとしても転移した所を取り囲まれるのが関の山さ」

「…だったらどないしたら」

「この車でいけるところまで行く。こちらは重量があるから、簡単にはじき飛ばされはしない。
 時間を稼いで、救助を待つ。いいね、カーゴの中でおとなしくしてるんだ!」










「ん?なにか騒がしいわね」

「そうねえ…」



奈津子とほたるは急速に本部の空気が変わっていくのを感じていた。
緊急警報が鳴り、予知部隊の人員や護衛隊が慌しく出入りし、各所に人員が配置され屋上にはヘリまでが準備されている事を手元のモニタが示している。



「どうしたのかしら…」

「なにかあったのは間違いないだろうけど」



怪訝に二人が顔をつき合わせていると、ついこの前特務エスパーに採用された「ザ・ハウンド」の二人 −明と初音− が正面玄関から飛び込んで来て、朧はどこかと奈津子に問う。



「朧さんなら局長室に詰めていると思うけれど…」

「一体何があったの?」



ほたるが明に問い返す。
すると切迫した顔つきで初音が答えた。



「チルドレンのチームが【普通の人々】とか言う奴らに襲われてるらしいの!」

「定時連絡もなく、護衛車からは緊急伝が発進されてます。
 それで追跡の為に俺達の複合能力が必要になったらしいんですけど…」

「なんですって!」



声が正面ホール全体に響き渡る。
同じように本部の動きを怪訝に感じていた来客たちの目が集まる。
だがそんな事にはかまっていられない。
奈津子が明を見つめ返すと、明はあからさまに焦れていた。
早く朧の所に案内しろ、と強く訴えている。
気付けばほたるが蒼白になり、震える手で口元を押さえていたが、今は一刻を争う。
ほんの少し肩に手を置いて、落ち着いてと声をかけるくらいしか出来ない。



「わかった、こっちよ!
 ほたる、アンタはお客様を所定の場所に案内して!」



奈津子はすばやく席を立つと、二人を局長室へと誘導する。
ほたるは、血の気の引いた手や足からじくじくとした痛みが伝わってくる事を感じながら混乱する頭で、ただひたすらに皆本達の無事を念じた。
だがテロが発生した今、自分にはやるべき事がある。
迷いを振り切るように立ち上がると、ホール全体に通る声で告げる。


「…お客様に申し上げます。
 ただいまより一時的にバベル本部内での外来者の移動が不可となります。
 控え室に御案内いたしますので、こちらにお集まりください…」




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