お別れ
投稿者名:天馬
投稿日時:(05/12/11)
僕はあの娘にフラれた。
やっぱり思ってた通り、あの娘が好きな人は、親友だった。
そして今日、僕は親友と離れる。
“お別れ”
SIDE 銀一
「後五分やのに、やっぱ、きぃひんな」
横っちの声はどこか切ない。
その事実がなぜか嬉しくて、そして少し切ない。
僕を友人――もしかしたら僕と同じように親友――と思ってくれてるが故の嬉しさ。
そして、そんな彼と離れること。そして好きな娘と彼が今後どうなるのかという憂いから来る切なさ。
そしてもうひとつ。あの娘から離れることに関する痛み。
僕の心は迷路の中のようにぐちゃぐちゃで。
僕がこれから行く道は、嫌になるほど明確。
自分がこんな嫌な人間になるとは思わなかった。
横っちのこれからを祝福できない自分が、自分のことしか考えられない自分が。
すごく嫌だった。
こんな時ですら僕は、あの娘が来てくれるのを、心のどこかで待っていた。
SIDE 忠夫
「俺ら、いっつも三人やったのにな」
銀ちゃんの声は切ない。あの娘は来ない。
俺の大好きなあの娘。きっと、好きな人と離れたくなくて。
それを嫌でも認識しなくちゃいけない見送りが、嫌なんだろう。
正直僕も今はあの娘に会いたくはない。
あの娘は銀ちゃんが好きだった。
きっと、銀ちゃんも好きだろう。
俺の心はがたがた。
親友との別れ、不本意な形での初恋の終わり。
いろんな意味でがたがた。
なぜか沈黙だけが俺らを支配した。
【【どうして僕らは離れちゃうんだろう】】
【【あの娘が好きなのは君なのに】】
【【言いたい事があるはずなのに、何もでない】】
【【何も出てくれないよ】】
―――――まもなく、列車が参ります。黄色の線まで、お下がりください
SIDE銀一
響くベルが最後を告げる。列車が来れば、そこはもう、別世界。
あの娘は、来ない。
「じゃあな横っち。あっちいっても、元気にするわ」
「巨人に乗り換えたら、敵やからな」
「わかっとるわ」
僕はうまく笑えたかな?
親友に、最後の男のプライド、見せ付けられたかな?
SIDE 忠夫
列車が到着した。開くドア。乗り込む君。
あの娘は、とうとう来なかった。
「あのさ銀ちゃん…」
「ん?」
「―――――あっちでも、元気でな」
俺は、言いたい事とは全然違うことしかいえなかった。
そしてドアがしまった。
ばたん
電車の中で僕は一人。
じっと手の平を見てみる。
そういえば昔、とっても手が冷えた時だっけ。
アイツと、好きな娘が手を繋いでくれたな。
どうしてこんなこと、今頃思い出すんだろう?
「ちくしょう……」
顔がぐしゃぐしゃになるくらい涙が出た。
声は出ない。
向こうにいって、好きな人とか親友ができるとは限らない。
涙と一緒に落ちた想いは
きっと失恋のせいばかりじゃないはずだ
駅のホームで自己嫌悪。いいたいことも言えなかった。
これからどうしていいのかも分からなかった。
涙がとめどなくあふれる。
悲しすぎると涙が出ないって、ありゃ嘘だ。
嘘に決まってる。
「ばっかやろう…」
夏子はどーすんだよ。
俺はどうすんだよ。
卑怯だよぅ。
でも、もしかしたら
一番卑怯なのは俺かもしれない。
僕らの道は分かれた。
僕らの気持ちは入れ違い、すれ違い。
今までの
コメント:
- 以前俺が投稿した「夕焼けの中で」、「帰り道」と繋がっていると考えても結構です。二人のお別れの日。
最近投稿ペースが速いですね俺。書かなくちゃいけないものは相変わらずかけないのに…_| ̄|○ (天馬)
- 苦く、切なく、若々しい痛みが伝わりますなあ。
悩め悩め少年どもよと、オッチャンなりに応援したくなる、良いお話でした。 (臥蘭堂)
- 思春期序盤ぐらいの少年らしい、瑞々しい感性が上手く表現されていて、ちょっと胸にチクッとくる感じが良いですね。
ひきかえ、ワタシはいつの間にこんなに鈍磨しちまったんだろう、とか思ってみたりしつつ、賛成! (APE_X)
- ここまで苦く別れたくせに、会ったとたんに呪いをかける横島って何者?
作品は大賛成ですけどね(笑) (とおり)
- 子供にとって、転校ってどうにもならない大きな力ですよね。
なんかしみじみ。
こんなエピソードを積み重ねて、大人になるんだなー。 (ししぃ)
- 切ない……何気ない仕草や会話が、こういうワンシーンではグッとくるものです。
行間の空白がなんだかとても大切なもののように思えますね。
言いたくても言葉にできなかった声がそこに、たくさん詰まっているような気がするなぁと…。
うおお…お久しぶりのコメントで妙なことを書いてしまい申し訳ありませんでした。
とにもかくにも大賛成でございます。これからもぜひぜひ頑張ってください〜 (かぜあめ)
- 不器用で、やさしくて、でもそのやさしさが切なくて。
どうしようもなく、子供で。
三人が流した涙は、きっと自分のための涙じゃなくて。
悲しいけど、それがとってもいとおしい、そんなお話をありがとうです♪ (猫姫)
- 互いにすれ違って、大切な事が言えずに。
苦い思い出を胸にして、少年の道は分かれる。
でも、互いのために流した涙は本物で。
優しい少年達の物語、胸にきました。 (ちくわぶ)
- チャットでためし読みしてくださった皆様、ありがとうございました。コメントくださった皆様もありがとうございました(^^) では、コメント返しです
◇臥蘭堂さんへ
おじさん、いつもありがとうです。そしてコメントもらうの実は初めてですしね。やたらと面倒な人間関係な彼らだったからこそ、こんなにも痛かったり苦しかったりしたのかもしれないですね。最後に、…色んな意味でありがとうおじさん。
◇APE_Xさんへ
思春期はやたらと多感な時期です。それに加えて、前述しましたが、やたらと複雑な人間関係もその痛みに拍車をかけてるのでしょう。ちなみに思春期のボウズどもの感性をここまでかける俺はきっと精神年齢ボウズ並みかも…(涙)
◇とおりさんへ
それを言っちゃあおしまいよ(苦笑)? まぁ、この先の人間関係、情報教育がやたらと間違った方向(煩悩一直線)に向かってしまった結果ということで勘弁してください(爆笑)。しかし…本当にこんな子どもたちが(ほろり)
◇ししぃさんへ
ししぃねぇからのコメントも初めて! てか、おねぇをうならせるSS書けてこの愚弟感激(笑)。色々積み重なって大人になる。それは子どもの特権。これもきっと彼らの中で上手に消化していくでしょうね。がんばれボウズども(笑) (天馬)
- ◇かぜあめさんへ
たかが数分の出来事。その中にはきっと万感の想い。そんなのをこめて行間を意図的にかなり空けました。そこを読み取ってもらえて、さすがはかぜあめさん、そしてありがとうと思いました(笑)。ありがとうございます
◇猫姫さんへ
義姉さんのコメントはいつもこちらの読み取ってほしいことを言いつつも、さらに気づかなかったとこまで指摘してくれて。ほんっと、ありがたいです。ありがとうございますです。……コメント返しになってねぇ(汗)
◇ちくわぶさんへ
すれ違いを重ねて、苦いものを重ねて。人間は成長するものです。そこで流す涙が他人のためを想って流すものなら。こんなに素敵なことは無いですよね。優しい少年は、だからこそあぁなったと…想いたいなぁ(苦笑) (天馬)
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