ザ・グレート・展開予測ショー

おかーさん


投稿者名:天馬
投稿日時:(05/11/29)


 「おかーさん!」

 突然の彼女からの一言に、私は途方に暮れてしまい、一言返すのが精一杯。

 「い、一体どうしたのパピリオ?」

 「この前ヨコシマの所に遊びいった時に絵本を買ってもらったんでちゅ」

 満面の笑顔で言う彼女。そう言えば何やら大事そうに持っている本がある。
 成る程これか。


 「それは良かったわね。それと私がお母さんと呼ばれることに何の関係が?」

 「その絵本は、『かぞくあい』に満ちあふれてるものなんでちゅよ。
 主人公は何かと言うとおかーさん、おかーさんってべったりなんでちゅ」

 「ふふふ。それで?」

 「それでパピも考えたんでちゅ。
 パピを作ったのがアシュ様だと考えると、アシュ様はパピのおとーさんでちゅ。
 そうなると、ルシオラちゃんとベスパちゃんはおねーさんでちゅ」

 其処には悲壮感はなかった。少なくとも、私にはそう見えた。
 だから私は一緒に笑いながら話を聞いている。


 「そんで今度は、色んな人で家族って考えたんでちゅ。
 ジークはおにーさん、ペスは…ペットでちゅね。老師のおじーちゃんは、おじーちゃんでちゅ」

 「横島さんや美神さんたちはどうかしら?」

 「美神たちはお友達、ヨコシマはパピのお婿さん候補でちゅ」

 「あらあら。横島さんも大変ですね。というかヒャクメが少し可哀想じゃないかしら?」


 ペットはペットなんでちゅ、と逆に切り返す彼女。
 ヒャクメには申し訳ないがその扱いはひどいながらも、ひどく私を笑わせてくれた。
 そして私はと言うと…。

 「それで私はどうしたのかしら?」

 「小竜姫が一番苦労したんでちゅよ〜。
 最初はパピをいじめる姑にでもしようと思ったんでちゅから」

 「なんですって?」

 「最初は、でちゅよ。怒ると皺が増えるでちゅよ?」

 いきなりの鬼姑発言に私は少しむっとした。
 しかし彼女はそれを冷や汗混じり、喜び混じり。更には皮肉を交えて返した。
 彼女は鈴のようにコロコロ笑って。笑顔が絶えない。


 「そんで気づいたんでちゅ。パピにはおかーさんがいなかったんでちゅね。
 手当たり次第に考えてみたんでちゅけどね、だーれも当てはまらないんでちゅよ。
 それでまー仕方なく。姑からランクアップして小竜姫がおかーさんになったわけでちゅ!」

 「それは光栄だわ。それじゃあ貴女は私の娘になるのね、パピリオ」


 やや苦笑気味に彼女がそう言って、私はにっこりと笑顔を彼女に向けて。

 よく見れば苦笑ではなく、彼女ははにかんでいた。
 顔を真っ赤にして、本当に嬉しそうに、少し恥ずかしそうに笑っていた。


 「小竜姫はパピに厳しいでちゅ。やれ掃除だ、やれ礼儀作法だ。いっつも五月蠅いでちゅ。
 でもきちんとしてると誉めてくれるでちゅ。一緒に喜んでくれるでちゅ。
 …それが、嬉しいんでちゅよ。本当のおかーさんみたいで、嬉しいんでちゅよ」

 「…」

 私をまさかそんな風に見ているとは思わなかった。
 見てくれているとは、思わなかった。
 そして瞬間感じた。この子は、母性に飢えているかも知れない、と。


 「ねぇ小竜姫」

 「なんです?」

 「………抱いてももらっていいでちゅか?おかーさんってどんなものだか知りたいんでちゅ」

 嫌なら構わないでちゅけどね、そう言う彼女。
 私に何の異論があろうか?

 「私は曲がりなりにも貴女のお母さんですよ?
 抱きしめてもらうのに、なにか許可が必要かしら?」

 「………!!!」


 腰を落とし、両手を広げ、私は彼女を迎えようとする。
 彼女は一瞬驚き、やがて躊躇いがちに私の胸の中に埋もれて…。

 「…小竜姫って思ったより胸がないでちゅね…」

 「余計なお世話です」


 余計な一言をくれました。
 軽く頭をこづこうとしたその時。


 「…………おかーさん…………」


 小さくか細い声で囁いた言葉を私は聞き逃さなかった。
 愛おしさが込み上げ、優しく強く、胸の中のこの子を抱きしめる。
 彼女は一蹴驚いたようにびくりとなり。
 彼女は私を強く抱き返した。


 彼女の肩が小さく震え、私の着物が少しずつ湿っていくのが分かった。

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