ザ・グレート・展開予測ショー

オカG極楽大作戦〜闇に差す光〜


投稿者名:ふぉふぉ
投稿日時:(05/11/18)

都庁に隣接するオカルトGメン日本支部。都庁地下と一部を共有するものの、ほとんどは部外者の出入りが制限されている。そんな施設内において例外的に営業している店舗がある。

魔法料理「魔鈴」オカルトGメン支店。通称「Gショク」。

本店オーナーの魔鈴めぐみはオカルトGメンの非常勤隊員でもあるため営利目的での営業ではなく、職員の福利厚生施設の一つとして別経営で委託されており、そこで働く者達も厳重な身辺調査の上、嘱託扱いで雇用されている。
霊的疲労を伴うオカG職員の回復に一役かっているが、何よりその味と雰囲気でオカG職員に欠かせない憩いの場となっている。特に看板娘として花戸小鳩が採用されてからは。


「やっとメシの時間でござるよ。こりゃ急いで食べないと休む時間がなくなってしまうでござるな。」

「シロはいつだってがっついて食べてるでしょ。急いだからっていつもと変わらんないんじゃない。」

「なんじゃとタマモ!拙者これでもちゃんと味わって・・・」

「ほら、注文。後ろも並んでるんだから。小鳩さんも待ってるでしょ。」

「ぬ・・・えーと、拙者は・・・じゃーいつもの!」

「いらっしゃい、シロちゃん。はい、シロS一丁入りま〜す。タマモちゃんもいつもの?」

「こんにちは、小鳩さん。ええ、4枚で。」

「2枚で十分ですよ、タマモちゃん。」

「4枚で。」

(妖狐向けに2枚でちょうどよいようにハーブの配合してあるのに・・・ま、今日は疲れてるみたいだからいいかな)
本来ならば客の注文に店員が口出しするものではないのだが、扱う食材と客層の性質上、小鳩達店員には適量をアドバイスする裁量が与えられている。それでもあくまで客の要望の範囲内であるので無理にすすめることはしていない。なお、後ろの厨房で(お客さんわかってくださいよ〜)と心の中で突っ込んでたコックが居たのは内緒。

「はい、4枚ですね。キツネうどん、揚げ4枚で入りま〜す。それじゃごゆっくりどうぞ。」

残念ながらオカG支店では使い魔の使用が認められていないこともあり、カフェテリア形式での営業となっていてレギュラーメニュー数も本店ほど多くはない。シロS(スペシャル)はいつも3品以上まとめて注文するシロに対応した厨房内での符丁であったのだが現在ではすっかり定着し、胃袋に自信のある若手隊員達にも愛用されている。

カウンターでそれぞれの品を受け取った二人は空いてる席を探してあたりを見渡す。

「お、隊長の隣が空いてるでござるな。あそこにいたそう。」

シロが一文字を見つけて言うが早いかさっそく歩き出した。

「あ・・・」

タマモがシロに声をかけようとするがシロはお構いなしに進んでいってしまった。

「あの大きい後姿が誰だかわからないことはないでしょうに・・・これだからデリカシーのない犬は・・・」

やれやれ、といった表情でタマモも後をついてゆく。

「隊長ーっ!隣よろしいでしょうかっ!」

談笑していた一文字は近寄ってくるシロを視認して一瞬こわばったものの、即座にあきらめを完了し状況を受け入れた。

「ああ、いいよ。」

「では失礼するでござる。隊長、タイガーどの。」

シロは一文字と一文字の向かいに座っていたタイガーに一礼し、一文字の隣へ着席する。シロの後を追ってきたタマモもすまなそうにタイガーの隣に座った。

「ごめんなさいね、気が利かない犬のせいで。」

「いやー、ワッシは構わんケン。」

「それは拙者のことでござるか!タマモ、どういう・・・」

「まあまあ、いーからさ。食事は大勢のほうが楽しいって言うし。タイガーも二人の顔見るのは久しぶりなんじゃないか?」

「そーじゃノー、半年ぶりくらいかノー。ワッシはテロ対策課じゃケン、通常任務では一緒になることはないですからノー。」

タイガー寅吉、公安部テロ対策課所属。彼の特技である精神感応は、群集の中から殺意を持つ存在を感知したり、要人を幻覚に紛れて退避させたりと応用範囲が広く、オカG内での評価は高い。GS時代の上司である小笠原エミはオカG独立当初の民間からの引き抜き組であり、タイガーも在学中から準隊員として活動しており、上層部からの信頼も厚い。

小笠原エミは現在公安部装備開発課の責任者である。外注ではまかないきれなくなった破魔札、対魔防御機能を備えたヘルメットや盾などにしこむ魔方陣の監修等をしている。一説には生物兵器ライフル弾頭の製造ノウハウの流出をおそれたオカG上層部が強引に引き込んだとも言われている。

「タイガーは最近本業以外の『特捕』も増えてきたから何かと忙しいしな。あたしとの約束も何度ドタキャンされたことか・・・」

そこで一文字はチラッとタイガーを見て

「なー。」

と何か言いたそうな表情をした。

「ま、魔理さん。何も人前でそういうことを言わんでも・・・ちゃんと謝っとりますし、それにプレゼントも毎回きっちり要求してるじゃないですかノー。ワッシだって魔理さんに会いたいのに・・・これも仕事なんですケン・・・」

「あらあら、ごちそうさま。」

「なんじゃ、タマモ。まだ食べてもおらんのに。要らぬのなら拙者が食うぞ。」

「・・・っとにデリカシーのない犬。」

「な!・・・」

と言いかけたシロの言葉を突然の館内警報が遮る。

──『13管区内に妖魔出現、待機中の対妖魔各隊は出動準備。繰り返す、13管区内に妖魔出現・・・』

館内放送を聞くやいなや一文字、シロ、タマモの3人はすっくと立ち上がる。

「タイガーごめんな、あたしらの出番だわ。帰ったら連絡するから、またね。」

「ああ!まだ食べてないのに・・・小鳩どのー!これ包んであとで届けてくだされー!」

と、ここで館内放送が中断され緊急チャネルが割り込んできた。

──『支局長の西条だ。』
──『13管区の妖魔の管轄は現時刻をもって特別捕獲任務へと移行する。』
──『特捕部隊は直ちに出動せよ。』
──『対妖魔各隊は指定ポイントからの民間人退避任務の援護を命ずる。』

緊急放送を聞き終えたタイガーはゆっくりと立ち上がった。

「ワッシも出番のようですノー。魔理さん、連絡はワッシのほうからしますケン。」



──────────────────

現場ではオカG隊員達により妖魔を緑地公園へと誘導しつつ、民間人の退避が進められていた。日はすでに暮れ始めており、人気のなくなった市街はオカG車両の回転灯以外は動きを潜めている。

「隊長!外周ヒト・フタ・マル方向の退避完了を確認したでござる!」

「外周ヒト・サン・マル方向、完了確認。」

「了解。これで任務対象エリア全方位の確保完了だな。あとは特捕部隊に引き継ぐ。特捕の結界が展開したら速やかに撤収する。」

(特捕の結界・・・妖魔を外に逃がさないだけでなく、何者の侵入をも拒む絶対障壁か・・・)

一文字はタイガーの(いるであろう)方角を見上げ、部隊間用通信機を手に取った。



──────────────────

特捕部隊は既に妖魔を眼前に捉え集結していた。

任務の性質上、無傷で捕獲することを最優先としているので直接攻撃はできない。隊員達は防御結界や威嚇により任務対象エリアの中心部へと妖魔を誘導していく。
現場指揮官の小笠原エミは指揮車内にて進行状況をながめていた。

『こちら退避任務の一文字、対象エリア内及び外周全方位の退避完了です。オーバー。』

「特捕、了解。では現時刻をもって指揮権はウチで預かるってことで。以後、通信管制よろしく。アウト。」

通信機を置くとエミは結界展開部隊への確認連絡を始めた。

「そっちはどうなってる?」

『ブラボー・リーダー、準備完了です。』

『デルタ・リーダー、たった今完了しました。』

「じゃ、さっそく始めるわよ。」

そう言うとエミは車外へ出て結界の起動呪文の詠唱を始めた。
この結界はエミのオリジナルで、地面の6個所を基点としたヘキサグラム(六芒星)の頂点に接する円を球状に覆う絶対不可侵結界である。霊力、電磁波、水分子以上の体積を持つ物体の行き来を拒む性質を持っている。妖魔を逃がさないためでもあるが、外部からの侵入や干渉を防ぐ要素を重要視して設定された。

「・・・この盟約をもちて一時(いっとき)我が領土となすもの為り。如何なるものも我が許し無く押し通ることまかりならず!」

詠唱の終了と同時に結界は発動しドーム状の光に覆われた。と同時に電力の供給を絶たれた結界内の明かりは全て途絶え、部隊の車のサーチライトに照らされた妖魔の姿を一際目立たせる。

結界の正常動作を確認したエミはタイガーに声をかける。

「で、どうよタイガー。ヤツをおとなしくするには。」

エミは立てた親指で妖魔を指した。

全長は10mほどだろうか。土管から象のような足が4本でているようなその風貌どおり動きは鈍重だが、中々じっとしてくれるものでもない。多少の障害物も見かけ以上の体重でもって意に介さず踏み越えてしまう。呪縛ロープごときではそのまま引きずられてしまう。両端に口があるだけで目も耳もないのでは目くらましも通用しない。体表はヌルヌルとした粘膜質の層が幾重にもあり、単純な物理攻撃は威力を吸収され霊波攻撃も表面で屈折・分散してしまう。高出力の攻撃を仕掛けても、その大きな口から吸い込み片方の口から吐き出す始末。
自ら攻撃はしてこないものの、歩きまわられるだけで十分迷惑な存在だ。

この妖魔が出現したのはこれで2度目。
前回は対妖魔の攻撃部隊が対処にあたったが、その時は飛行・跳躍能力を持たないことを利用して落とし穴に誘い込み、身動きを封じた上で法儀礼済銀製105mm榴弾を3方から同時に撃ち込んで倒した。倒したといっても足掛け2日がかりで周りへの被害も決して少なくはなかった。

今回はなんとか早めに絶対不可侵結界へと閉じ込めたものの、特捕隊員達は妖魔を足止めすることに苦戦を強いられていた。

「正攻法では通用しないようですケン、ワッシが引き受けます。移動は早くないんで援護はいらんと思います。」

「つまり、いつもどおりってワケ。」

エミは軽く微笑みを浮かべるとCD大の円盤を取り出した。円盤にはヘプタグラム(七芒星)を基調とした魔方陣が刻まれ、その頂点の一つには精霊石が埋められている。この円盤は特捕部隊内ではフリーズディスクと呼称されているものだ。

「15秒いけそう?」

「まかせてつかーさい。あの妖魔の霊圧からみた感じだと充分いけます。」

「んじゃ、準備ヨロシク。」

タイガーは隊員達に妖魔から離れ後方へ下がらるよう指示を出す。

「エミさん、いつでもいけますケン。」

「オッケー、さっそく始めるワケ。」

エミに促されタイガーは妖魔の近くまで歩み寄る。
妖魔の側面、約25mほどの位置で立ち止まると、足を開き腰を落として空手の騎馬立のような体勢で念を込め始めた。

「ウウウ・・・フンガァーーー!!」

掛け声と共に両手を突き出すと、まるで見えない空気の塊が飛び出してぶつかったかのように妖魔は一瞬ガクン!と小さく揺れ、そのまま静止してしまった。正確には静止したのではなくて目視では判別できないほど動きが遅くなったのである。

『サイコ・プレッシャー』そう呼ばれるタイガーの技が妖魔を捕らえたのだ。

横島や雪之丞らが斉天大聖と行った修行時に、魂の繋がった状態で加速状態にあった話を聞いたタイガーは、自分の精神感応のバリエーションを増やすヒントにならないかとずっと考えていた。

もともとタフさを買われてGSの世界に入った自分には、突出した攻撃力があるわけでもなく特定の信仰も持たない。そんな自分ができることは精神感応とそれを応用した支援。ならば攻撃する仲間の援護を極めることが自分を活かす最大の方法ではないのか?
そして、その一つの結論がこの技であった。

精神感応とは一部だけが相手の魂に繋がった状態だが、その繋がった部分が知覚部分であることを利用し、魂及び脳内の情報伝達経路に逆向きの霊圧をかけて伝達速度を減速させるのだ。通常の妖魔クラスであれば50分の1の状態まで減速させることができ、約20秒間持続させることができる。
20秒は決して長くない時間だが、それだけあれば仲間が大技を繰り出したり安全に避難するための必要最低限の時間稼ぎができる。
この技の減速の度合いや持続時間は対象の霊圧に反比例する。よって、上級魔族レベルが相手ではせいぜい1秒あるかないかだろうが、それでも使い方によっては十分な効力を発揮するだろう。

「エミさん、いまジャー!」

タイガーの合図と共にエミは呪文の詠唱を開始した。

「アーシー アナロイ アセテー サモアイ・・・・」

呪文の詠唱が進むにつれ、フリーズディスクが輝きを増してゆく。

「魔物なるもこの世で生まれしもの、契約の主(あるじ)を持たぬもの、自らの真名(まな)を持たぬもの、主たるものの命(めい)を受け名を授かるまで、我が呪にて封ずるものなり!」

ヘプタグラムが一際まぶしく輝きだしたとき、エミはそのフリーズディスクを妖魔の頭上へと放り投げた。

「妖魔封呪陣!」

呪文の起動の宣言と同時にフリーズディスクのヘプタグラムから放たれた光が妖魔を取り囲む。

「縛!」

エミの合図とともに光は妖魔もろともフリーズディスクへと吸い込まれていく。

妖魔を、包み込んだ光ごと完全に飲み込むとフリーズディスクはエミのもとへと舞い戻ってきた。

「ヒトナナヨンナナ、捕縛終了。特務のため詳細内容は通常記録より削除。ってワケで結界消去後直ちに撤収よ。」

「今回は比較的楽でしたノー。」

撤収命令を受け、遠巻きに見ていた隊員達が集結し始めた。

「凄い・・・秒殺なんて・・・しかも今回は楽だったとか・・・」

「なんだ?貴様はこの任務は初めてか?」

「はい!初召集です。」

「そうか。俺はタイガー隊長と同じテロ対で特捕任務も初出動から参加しているが、タイガー隊長とエミ指揮官が同時に作戦行動をとった時はいつもこんなもんだ。妖魔を結界で封じた時点で俺らの任務は終わったようなもんさ。」

「すごい方達ですね・・・自分は本作戦のマル対の初出現時に攻撃隊として参加しておりましたが、その時は2日がかりでした・・・それをあんなあっさりと・・・。タイガー隊長との作戦行動は今回が初めてで、エミ指揮官も内勤でのお姿しか見かけたことがありませんでしたので、ただただ驚くばかりです。」

「なら無理もないか。覚えておくといい、この任務はあのお二人がいるからこそ初めて可能なのだということを。一流のGSと共に作戦行動できることを光栄に思い任務に励めよ。」

「はい!頑張ります!」

ふと、周りに明かりが灯り始めた。結界が消えたのだ。

「おーい、撤収命令はもうでとるんじゃケン、ぼーっとしとると置いてくぞー。」

「「申し訳ありません、隊長!」」

駆け足で戻っていく二人の隊員の頭上には星空が戻っていた。



──────────────────

エミは作業報告のためにオカG日本支局内の最下階にある特別捕獲管理室へと向かっていた。
最下階は日本支局の直轄であり、オカG上層部であっても日本支局以外の人間の立入は制限されている。日本支局のものであってもごく限られた人間しか立入を許されていない。

特別捕獲管理室の前までくるとエミは立ち止まった。

「小笠原エミ、任務報告に参りました。」

『入りたまえ。』

ドア越しの西条の声に促され、エミはセキュリティーパスをした後、入室する。
そのまま奥の別室へと進み、西条へさきほど任務で妖魔を封じたフリーズディスクを手渡す。

「ディスクばかりが随分とたまってきちゃったわね。」

「まあ、そういうな。これでも研究は着実に進んでいるんだから。」

西条は背後で作業をしているオペレータの方を向く。

「なあ、須狩くん。」

「ええ、支局長。制御関連はほぼ完成の域に達しています。主(あるじ)の認識の個別化とインプリンティング対象者の限定化は残念ながらまだまだですが。できれば関連資料を増やしていただきたいのですが・・・」

「我々も努力はしている。だが捕縛後の妖魔の完全制御は日本支局独自の極秘プロジェクトなのだ、なんとかある範囲でやってくれたまえ。必要があれば私やエミ君に助言を求めるように。それに君の特赦は南武グループでのノウハウだけでなく君自身の能力も含めた対価であることを忘れないでいて欲しい。作業を続けてくれ。」

「・・・了解しました。」

(日本支局のじゃなくて「おたく独自の」でしょ)
エミは心の中で独りつぶやく。

西条は顎をクイとドアの方へと向け、エミを促して前室へと移動する。

「フリーズディスクは安定しているようだな。霊魂用の吸印護符では通用せず、かといって退魔護符では魔界生まれでない妖魔では単に地上のどこかに飛ばしてしまうだけだったからな。よく実用化してくれた。あとは解除後の完全なる使役の定着だが・・・」

「やっぱり冥子んところの式神のノウハウが欲しいワケ。」

「それはそうだが、六道家からの情報は先生、いや美神本部長に筒抜けになると考えるべきだ。ああ見えて六道家は怖いところだからね、危険は冒せんよ。」

「あと参考になりそうなのは魔鈴のところの古代魔法と使い魔あたりかしら?」

「それもある。だがやはり君のさらなる協力を期待したい。なにしろ現存するGSで、悪魔との契約を満了し、なおかつ生きているのは君だけなのだから。妖魔を使役するヒントになりそうなら思いついたものは何でも案として提出してくれたまえ。それに・・・隠すことなどしない方が君のためでもあるのだから。」

「言われるまでも。昔のこととはいえ裏のことが公になるのは私としてもありがたくないワケ。」

「うむ、よろしく頼む。今日はもう下がってよろしい。」



──────────────────

エミは上り続けるエレベータの中で思いをめぐらしていた。

(フリーズディスクをヘキサグラムじゃなくてヘプタグラムにした本当の理由も見抜けないような連中を騙すくらい、なんてことないワケ)

(呪術に関して、私以上の能力を持つ人間なんてこの世にはいないワケ。その私を自分の下に置いて管理しようなんて本気でできると思ってるなんてね)

(おたくは否定するかもしれないけど私から見たら「格下と思っていた者達に抜かれていくコンプレックス」や「公的機関たるオカGを担うプレッシャー」、何より自分自身の「正義」におたくは潰されかけてるワケ)

(おたくが私を利用してるんじゃなくて、私がおたくを利用してるんだってことがわかる日がいつかくるわよ、西条さん)

エレベータはいつしか駐車場のある地下1Fへと着いた。
エミは自分の車へと乗り込み、もはや漆黒ではなくなった都会の夜の中へと走り出した。

人の創りし光が夜の闇の裾野をうっすらと照らしている。
しかしそれはあくまでも闇の中でこそ価値を持つ光であって、夜明けの兆しではないのである。

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