ザ・グレート・展開予測ショー

雪 山 遭 難


投稿者名:Kureidoru
投稿日時:(05/11/17)






あたり一面銀世界。

そんな表現が、男の頭に過ぎった。





右を見ても、左を見ても、あるのは雪・雪・雪…。

幾ら見回しても街灯はおろか、民家らしき姿など見当たらない。


もう…何キロ歩いたんだ?


後ろの自分が今まで歩んで来た足跡を見て、うんざり気味に思う。


まさか一生このままなんてこと…。


自分が地球の果てにでもいるような感覚に襲われ、ぶるりと寒気がする。

……いや、実際に寒い。

防寒具を着ているとはいえ、この寒さは尋常では無い。

吐く息は白く、足は悴んで感覚が無くなりかけ、さらには吹き止みそうにないこの吹雪…。

はぁ、と溜息をつくも、その溜息さえ白い。


なんで…こんな事になったんやろなぁ…。


事の顛末を考えようにも、その思考を寒さと吹雪に邪魔をされて遮られる。

そして、思考の邪魔をした後、今度は吹雪は男を眠りへと導こうとする。

その誘いは心地よく、寒さなど簡単に忘れられる甘美なものであり、また男の体を死へと繋げる罠でもあった。


………クソッ!こんな所で死んでたまるかッ!!


眠さを堪えて、男は再び奮い立つ。


あいつに…あいつに会う日まで、この命は俺だけの物じゃねぇんだッ!!







きっかけはホンのささいな事だった。

除霊に行く途中、あんな事さえなければ今頃暖かい鍋の一つでもつついていたかもしれない。

男の純粋さと、そして誰もが認めるその真っ直ぐな心が災いしたとしか言いようが無い事であった。

少なくとも、男が身を挺して行った行為は、誰もが成し遂げられないような自殺行為であったのは間違い無い。

実際、今は遭難しているながらも、体に傷一つ負っていないのは奇跡としか言いようが無い。

……この事態が幸運と言えるか不幸だったと言うべきかは難しい所だが。

何より生きている。

この事実が男に希望を与えていた。

もとより死んでしまっては御仕舞いなのだ。

生きていればいずれは何とかなる物である。

それに、男には体力の自信も少しばかりあった。

悪運の強い自分の事だ。歩いていればいずれ助かるであろう、と強く考えていた。

……しかし。







もう…もう歩けん……!


そう思いながら男は、まずガクガクになった足の膝が折れ、次に手を突き、最後には地面に突っ伏す形で倒れた。

あれから2時間。

男は気力を振り絞って前進していたが、流石に限界が近づいたようだ。

不思議と顔に当たる雪が冷たいと感じない。

それどころか心地よささえ感じる。


俺…こんな所で死ぬのか…?


目の端から涙が出てくる。

死ぬは死ぬでも、こんな訳の分からない場所で死ぬとは夢にも思っていなかった。

こんな仕事をしている分、いつ死んでもおかしくは無いのは知ってはいたが、やはり死ぬのは怖い。

そんな時、ある少女の言葉が頭の中でリフレインした。



『大丈夫!死んでも生きられますから!』



こんな時、あの少女ならそう言うのだろうか?

そう思うとふふっ、と笑みがこぼれてしまう。

そんな状況でも無いのにも関わらず。


俺が死んだら、皆なんて思うんだろうなぁ…。


そんな事を考えると、知人達の顔が次々と思い浮かぶ。

親しい友人、事務所の同僚、同業者達や敵対した者達……。

懐かしい顔ぶれから親しい顔ぶれまで、思えば思うほど出てくる。

そして、その中にはかつて愛した女性の顔もあった。


……すまねぇな。俺、もう駄目みたいだ…。


かつて守ろうとして、逆に守られて命を落してしまった女性に心からそう思う。

そして、疲れきった体を休めるため、男は静かに目を閉じた…。





















      私の分まで生きて……









頭の中で、そう響いた気がした。


そうだ…こんな所で死ねない……死ぬわけにはいかないんだ!


そう思いながら男は立ち上がる。

顔にはほんの少しだが、生気が戻っている。

…勿論、現にその女性が男に呼びかけた訳では無い。

もしかしたら、ただの幻聴だったのかもしれない。

しかし、この男はこの声で目を覚ました事実は確かである。

夢だろうがなんであろうが、それは揺るぎない確かな事なのだ。


なんか、また助けられちまったみたいだな…。


申し訳なさそうに男は空を見上げる。

少し眠っていた間に吹雪は止み、夕刻に差し掛かった山は綺麗な茜色に染まっている。

その空をまぶしそうに見ながら男は一人ごちた。


生きて生きて生き延びて、いつかお前と再会してやるさ。
…今度は娘としてだけど、そん時には今までの分のお礼をいっぱい返してやんなきゃな……。


眩く光る太陽に向かいながら、男はそう固く決意したのであった…。










 <おわり?>










 〜つづき〜





さて、これからどうしよう…;


別段決意をしたところでこの状況を抜け出せる訳も無く。

相変わらず周りには民家はおろか、生き物の姿さえ見当たらない。

…というか、前よりなんだか奥地に来ている気がしていたりする。


うう…。なんで俺ばっかりこんな目に…;


泣きながらポケットを探ってみるもプロペラの付いた黄色い道具などあるわけもない。

これはまんがが違うのだ。





…とりあえず、言っておくか。


そう思いながら、男はすでに無駄だと分かっていながらも、思いっきり大きな声で叫んだ。


















「美神さはぁぁんっ!もう運転中にセクハラなんてしないから助けてぇぇぇっ!!」



……セクハラされた女性に車から蹴り落された男が、
自分の叫びによって大規模な雪崩を引き起してしまう事を知るのは、この数秒後の事であった。








 <ホントのおわり>












 〜あとがき〜

 おひさしぶりです、Kureidoruです。試験勉強中に何を作っているんだ…;
横島って遭難している時にどんな事を考えてるんだろーか?を文章にしてみました。
無駄にこじづけっぽいストーリーは文章力が無かったからです…すみません。
 なぜ雪山なの?てのは、越してきた先の初雪ん時(てか昨日)、エライ寒かったからです…。
越した先が沖縄なら彼にはもう少し暖かい思いをさせられたのに…(違う)。

 であ、感想よろしくお願いします〜。

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