ザ・グレート・展開予測ショー

期待


投稿者名:NEWTYPE[改]
投稿日時:(00/ 6/23)

事態は変わった。
小竜姫はMK-Uの一号機に搭乗するや、急速に横島の二号機に接触した。
その時、雪之丞のザックが、横島の二号機に接触しようとしていた。
しかし、状況のわからない雪之丞は、カプセルの破片をつかんだまま動かない二号機に不信を抱き、容易に動けなかった。
「小竜姫・・・・・!」
小竜姫の一号機が二号機に接触するのを見て、雪之丞はようやく安心した。
「なにが起こったんだ!?」
「人質です!」
雪之丞にはわからない話だ。
「横島君!」
小竜姫は、接触回線を開いたが、横島の応答はなかった。
「・・・・・・・?」
小竜姫は耳を澄ませレシーバーを最大にあげてもみた。
微かに横島の嗚咽に近い息遣いを聞いた。
「・・・・・・・」
小竜姫は絶句し二号機の腕を取った。雪之丞もその一号機にならってもう一方の腕をとり、二機のテール・ノズルが閃光を発した。
母艦、アレキサンドリャ―に帰還するのである。


西条は、各機をアーギャマに戻し自分も帰投した。
アーギャマのハンガーは、二重になっている。
カタパルトと隣接するデッキは、いっさいの気密処理をされていないオープン・デッキであり、戦闘時の補給等の緊急手当てをするデッキである。
その下部には、気密デッキがあり、そこには六機までのMSを収容するスペースがある。
大規模なメンテナンスに利用されると同時に、戦闘前後の乗り組みなどが行われる場所である。さらに、そのデッキの前後のブロックには、個々のパース補修のための空間が確保されていた。
しかし、現段階では気密ブロックにMSを運びこむわけにはいかない。
西条はディアスのハッチから飛び降りるとブリッジ下部のハッチにとりついた。
そこからエア・ロックを潜り抜けて、ブリッジへ通じるエレベーターに乗る。


「どうなると読むのかね?」
准将は、唐巣艦長と共に作戦室に西条を招いた。
「小竜姫。あれはカオス教ではありません。」
「なぜ分かるんだ?」
「横島君とは違うのですが、彼と同じような何かを感じるのです。」
「ニュータイプでもない君がか?」
唐巣の言葉に西条は、ヘルメットをテーブルに置いて、壁に設置されている自動コーヒー器からコーヒー・ポットを引き抜いた。
戦闘局面を経験した直後はまず誰といわず喉が渇く。
「ええ、ニュータイプは自分にとっても他人事ではないと判断しています。スペースノイドは、誰しも宇宙という新しい環境に適応してゆくなかで、長距離の空間を埋めようとする意志の働きとか、広い宇宙に適応する洞察力というものを身に付け始めていると思いますから・・・・。自分だって一年戦争による刺激は、自分の感性を拡大してくれたと信じております。」
「君のニュータイプ論はいい。今に話は、一般論として我々も是認している話だ。」
「申し訳ありません。自分は小竜姫に自分と似たものを感じたということです。それを信じるのです。」
「カオス教のスタッフはすべて地球生まれだ。スペースノイドは一人もいない。それが、カオス教のやり方だ。なぜだかわかるか?ニュータイプの発生を阻止するための手立てなんだ。」
「承知しておりますが、人類が宇宙で生活を始めて何年でしょう?地球しか知らない固体の中からも学習によってニュータイプが生まれる素地はあります。現にピエトロ・ド・ブラドーの存在を一時は地球連邦政府も認めて報道していた時期があるのです。それを途中で引っ込めても、一度まいた種の芽を摘み取ることは不可能です。」
「学生だな。西条大尉。」
「・・・・・・・」
西条は黙った。
しかし、腹をたてるようなことでもなかった。
「しかし期待はしよう。西条大尉がディアスに乗っていて感じた小竜姫の波動・・・波動でよいのだな?それを信じよう。」
准将は言った。
「しかし、横島君がニュータイプという話は自分にはわからないな。」
「それは、彼の実績だけを見てのことです。自分だってわかりません。自分が横島君に期待したいという願望が思わせていることでしょう。しかし、彼の言動は一年戦争時代のピエトロ・ド・ブラドーとそっくりだということを思い出していたものですから・・・・」
「詳しいのだな?大尉。」
「もちろんです。地球圏に戻る間に地球の放送は必死で受信したものです。食べる物がなければ、情報というのは栄養になります。漂流中の情報はよく覚えております。」
「艦長、コースはrr22。偏差は、コンマ54か?」
「はい・・・・・」
唐巣もモニターを見、「このポイントに石っころがあるはずです。この辺で時間稼ぎをして、小竜姫の動きを待ちますか?」
「もしそうなったならば、敵の部隊を振り切るためにだいぶ痛い目にあうぞ?」
「その時はMK-Uが我が方の戦力になっていましょう。」
その西条の言葉に、「そう願いたいものだ・・・・・」と、准将は言った。

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