ザ・グレート・展開予測ショー

皆本二尉VS兵部少佐物語ver.1 皆本誘拐事件発生B


投稿者名:峰野恵理花
投稿日時:(05/11/13)

「来たんはええけど、どこに皆本はんがおるんやろ。」
上陸からしばらく経って、島にあった建造物の中に入った後、立ち止まって葵がそう言った。
「そう言えば、そこまでは見えなかったし、わざわざイメージが残るほどここの島のことを思い浮かべるって言うのもおかしいわよね。…罠だったのかも。」
もうそこに来てしまっているのに紫穂はそんなことを口にする。
「どうすんだよ。もう入っちまってんだぜ?」
薫が怪訝な顔をする。
「毒を食らわば皿まで。…もう入っちゃったんだし、後戻りするわけにはいかないでしょ?」
紫穂はいつも通りの読めない表情のまま、再び歩き出した。葵や薫も慌てて紫穂の後に付いていった。

 皆本は、独房内でついに意識を失っていた。
 無理もない話である。紫穂が慎重にと言う葵の方針で、壁という壁をスキャンしていたので、上陸から軽く一時間は経っていたのだから。
(まさか女王がこんなに早くこの島に来るとは…誤算だったな。)
兵部は、力無く床に倒れている皆本を見下ろしながらそんなことを考えていた。
(しかし、皆本が案外早く意識を失ってくれたからな。…最初持ちこたえたときは、手こずるかと思っていたが、所詮はノーマルのお坊ちゃんか。)
兵部は、少し考え込むと、しゃがみ込んで意識のない皆本の襟首をつかみ、彼の上体を起こした。
(…結果オーライというのは好きじゃないが、これはラッキーだ。今のうちに暗示をかけさせてもらう。まあ、君の勇気と女王たちの君への信頼をたたえて、いたずら程度にはおさえるが。…恨むなら自分のひ弱さを恨むがいい、皆本。)
「それにまだ、そんな段階まで行ってないんでね。…とりあえず君には精彩を欠いてもらえれば十分だ。聞こえてないと思うが、また会おう。皆本君。」
兵部は皆本に暗示をかけると、そうつぶやいてから、チルドレンたちに見つかっては大変とばかりにどこかへ飛び去った。

「皆本!助けに来たぞ!」
しばらくすると、爆音とともにサイコキネシスでドアをぶち破り、薫たちが中に雪崩れ込んだ。
 皆本に意識がないらしいことを確認すると、紫穂は皆本の首筋に手を触れ、皆本の体の損傷具合をスキャンした。
「骨にヒビがいくつか入っているけど、折れてはいないみたい。…何か薬も飲まされていたみたいだけど、すぐに効果が切れるわ。意識もそんなに時間を待たずに戻ってくれそうよ。」
紫穂の報告を聞いて、一番安堵した顔を見せたのは、意外にも薫だった。
(心配させやがって、この野郎。)
サイコキネシスで骨の一本でも折ってやろうかとも思っていたが、せっかく無事だったのだからと薫は思いとどまった。
「ほな、本部まで皆本はんと一緒に超特急で帰るで!しっかりうちに掴まっときや!」
葵の号令に合わせ、紫穂と薫は、しっかりと葵の腕を掴んだ。皆本は、準備したリュックサックの中に入れていた紐で葵にくくりつけた。
「出発や!」
行きと打ってかわってうれしそうな葵の声を残して四人はその場から飛び去った。

 そして本部で手当を受け、病院に入院した次の日、皆本は意識を取り戻した。

「…二度は言わないからな。よく聞いておけよ。…いろんな意味を込めて。ありがとう。」
皆本が意識を取り戻したと聞いて、病室に飛び込んできたチルドレンに、皆本は照れくさそうにそう言った。
「皆本…なんだよ、いきなり。普段は『病院では静かにしろ!!』って怒鳴るのに…。頭殴られておかしくなったのかよ。」
薫はいきなりの感謝の言葉に、とまどっているのか、少し、照れくさそうだった。
「当たり前のことやんか、皆本はん。そんな感謝なんかされると、むずがゆいわあ。」
葵は、困ったような笑顔を浮かべる。
「確かに、皆本さんらしくないわね。何があったか覗かせてよ。」
紫穂は、いつもの笑顔のまま、心を覗こうと手を近づけた。
「お前らそんなに僕の感謝の言葉は珍しいかっ!!…ていうか僕は怒った顔しか印象にないのか薫!やたらと人の心を覗くな紫穂!」
病室にいつもの怒号が響く。
 怒鳴りながら皆本は思った。
(でも、これが日常ってものだな。本当にこいつらには世話になったし、あんなことはもうこりごりだ。…退院したらこいつらと一緒に映画でも行くか。)

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退院して一週間後、皆本は、寝不足により、げっそりとやつれていた。
(兵部め…次会ったときには絶対刑務所送りにしてやる…)
そう、彼の寝不足の理由は、兵部の暗示。毎日少しずつは違う内容になっているが、基本的には同じ内容の悪夢を見させられ、寝入る度にすぐ飛び起きねばならず、皆本の指示は彼の思惑通り精彩を欠き、ミス、ミス、ミスの連発で、始末書、報告書の山にも悩まされる羽目になったのである。
 しかし、兵部の思惑にただ唯一そぐわず、その暗示は永くは続かなかった。なぜなら、
「皆本はん、どないしたん。悪い夢でもみたんか?」
「大丈夫か?皆本。」
「ちょっと見てあげようか?皆本さん。」
等の言葉をかけてくれる、小さな奥様が、もといチルドレンがいたからである。


 

 若干つまらない終わり方になり、どうもすみません。物足りない方が多いと思います。
 次回からは、きちんとメリハリをつけて、納得のいく展開を予想したいと思いますので、どうかよろしくお願いします。


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