ザ・グレート・展開予測ショー

恐るべき敵! (絶対可憐チルドレン)


投稿者名:かいる
投稿日時:(05/11/12)







逃げる。後退する。離脱する。
何でもいいから、とにかくここから離れなきゃヤバイ。
あたしの、超度7のエスパーとしての・・・いや、数々の実践をくぐり抜けてきた、
特務エスパー“ザ・チルドレン”フォワードとしての勘が、そう告げていた。


“あれ”は、真っ向から挑んでいいモノじゃない。
勝負になるとかならないとか、それ以前の問題だ。
“あれ”はそんな次元に存在していない。
見つかれば・・・・・・・・・やられる。ただ、それだけが確信としてわかっていた。


鬱蒼とした森の中を飛ぶ。木々の間を縫って。速く。もっと速く。
“あいつ”に・・・・・・・・・そして、絶望に追いつかれないように。















                恐るべき敵! (絶対可憐チルドレン)



















私たちは今、とんでもない敵に襲われていた。
今までで―――――――――――間違いなく、最強の敵に。
既に紫穂、葵はやられ、(局長はいわずもがなだ)
残ったのは私ひとりだ。


おそらく、私がやられるのも、時間の問題だろう。
・・・冗談じゃない。だからといってみすみすやられるもんか。
そうじゃなければ、私を逃がすために散っていった、葵や紫穂が浮かばれない。



―――――――薫、ウチが足止めに行く。先に行っててや。
       なに、すぐに追いつくさかい。・・・・・・はよ行き!


―――――――薫ちゃん?あなたは逃げて。
       あなたさえいれば、まだ逆転の目は残っているわ。
       私たちの思いを・・・無駄にしないでね?お願い。



ふたりとも、結局戻ってはこなかった。
・・・歯を強く食いしばって、怒りを抑える。
冷静になれ、明石薫。怒りは発散させるのでなく、胸中に貯め、圧縮し、力にしろ。
ココロは熱く。アタマはクールに。


こんなのは本来あたしの性分じゃない。だが、今は背負っているモノが違うのだ。
そうすることであいつらの仇が取れるなら、何ほどのこともない。その為にも無駄死には許されない。
精神力を振り絞って飛ぶ。――――――――――速く速く速く!もっと速く!


しかし現実は無情だ。悔しいけれど、今のあたしじゃ“あいつ”に太刀打ちできない。
ちくしょう!あたしの力は、戦うための力だ。
だから、あたしは他の戦えないエスパーの分まで戦う使命を持っていると自負していた。
それが―――――――なんだこのザマは。




自分がこんなに無力だとは思っていなかった。













――――――――――――――っっっ!!

飛行をやめる。急停止!



眼前にそびえ立つ木々を見やる。
今はまだ昼前だが、この樹海では樹木が重なり合い、影が色濃い。
夜の部分と昼の部分にまだらに分かれたフィールドが形作られている。

あたしの正面の影。闇の中に――――――――いる。


目で捕捉したわけじゃない。音でわかったわけでもない。
そいつは――――――――圧倒的な存在感で、ただそこに、在った。


畜生!心の中で毒づく。いつの間に回り込まれた?あたしは全速力で飛び回っていた!
とてもじゃないが追いつける奴がいたとは思えない。
まさか、あたしの後退のルートが読まれていたとでも・・・?ありえなくはない。
そうであれば・・・あたしはだいぶ前から既に敵の掌中で愉快にダンスしていたことになる。


ナメやがって。


頭に血が上り、視界が紅く染まりかけるのを必死に抑える。ここで暴発すれば、万に一つも勝ち目はない。
躊躇する。逃げるか?いや、ここに入り込んだ時点であたしは敵の手の内。
逃げ道には既に何かしらの手配がされていると見ていい。
それになにより、ここで逃げたら、あたしの女がすたる。


腹を据えて、相手を迎撃するべく、腰を落とし、身構える。
さあ、どこからでも・・・・・・かかってこい!









そしてついに、相手は、姿を闇から現した・・・・・・っ!














ぺったらぺったら




その身は、闇よりもなお黒い、漆黒の羽に覆われている。
その悪逆な性根を映し出したような闇の色。




ぺったらぺったら




そのくせ腹部の羽毛は、極寒の地の雪を落とし込んだような純白。
首に近い部分には黄色がかった斑紋。まがまがしい入れ墨のようにも見える。




ぺったらぺったら




でっぷりと肥え太り、丸々とした身体。丸く出たおなかで、足が隠れてしまっている。
そこから両端に黒いヒレ(フリッパーというらしい)がひょろりと出ている。




ぺったらぺったら




数々の尊い命を屠ってきただろう、すらりとのびた長く黒いくちばし。
黒目がちな眼は、感情を乗せることなく冷ややかに輝いている。




ぺったらぺた・・・・・・・・・・・・・・・・・・







見れば見るほど、なんと凶悪なフォルムだろうか。見ているだけでこちらの精神が掻き乱れる。
そう、ここまであたし達を追いつめた張本人、そのにっくき名とは、











―――――――――――コウテイペンギン。

皇帝の名を冠する、ペンギンの中のペンギン。









奴が足を止める。
そう、ここはもう、奴の間合いなのだ。
ここから先は、うかつな動きが即、敗北につながる。
慎重に、相手を観察する。・・・妙な動きをしたら、すぐさま、仕掛けるっ!

そのとき奴が、奴のくちばしが、ピクッと動いた!
来るかっ!!







「・・・・・・・・・・・・きゅっ?(首をかしげてつぶらな瞳で)」
















・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぐはっ!



ぺんぎんのこうげき!かおるに92のだめーじ!




・・・・・・・・・・・・・・・ぐううっ、予想以上の破壊力だ・・・・・・!
受け身じゃやられる!攻めろ!力の限り攻め続けろ!

かおるのたーん!

「いくぜっ!サイキック―――――――!」





「きゅっ!?」

怯えた声をあげ、こちらを凝視するペンギン。

―――――――――――ぶつの?ぶつの?わたしをぶつの?(うるうる)



「ぐっ・・・・・・うっ・・・・・・・・・」

こんな表情されたら、あたし完璧ワルモノじゃんか・・・・・・



かおるはからだがすくんでうごけない!

ぺんぎんのたーん!



「きゅっきゅっきゅ〜〜〜〜〜〜〜」



ぺんぎんはふしぎなおどりをおどった!
両方のフリッパーをふりふりしながらみつめてくる!(威嚇行動です)


かおるはこんらんした!


「うっきゃ〜〜〜!カワイイ!もうしんぼうたまらん!さわらせてえっ!」


かおるのルパンダイブ!





きゅぴーん! ペンギンの目が怪しく光る!
いけないっ!と思ったときにはもう遅かった。ルパンダイブ中で身動き取れないし。

すっぱああああああ―――――――んっ!!
小気味いい音とともに、痛撃を浴びせられる。

吹っ飛ばされた後、空中でやっとヒレで殴り飛ばされたことがわかった。



どしゃあっ!

地面に突っ伏す。いい感じに脳を揺さぶられたらしく、意識が暗くなってくる。
フッ・・・・・・あたしの負け、か。
どうやら奴の方が一枚上手だったらしい。だが、良い勝負だった。




ぺたっ、ぺたっ・・・・・・・・・・・・・・・



奴がすぐそこまで近づいてきた。・・・・・・・・ならば、せめて最後に、一太刀・・・!
全身の力を振り絞る。あたしの身体よ!どうかもうすこしだけ・・・がんばって!
腕をのばすっ!届けっ!届いてっ!








ぷにっ。







ペンギンはおなかをつつかれ、キョトンとしている。

―――――――――フッ。

「我が生涯にっ・・・・・・・・・・・・一片の悔い無しっ・・・・・・・・・!」

そう言い終わると、すうっとあたしの意識は消えていった。がくり。

















そして、戦い終わって日が暮れて。





「やり直しを要求する―――――――っっ!ずっこいぞ皆本―――っ!」

「確かにあれはないと思うんや。」

「超能力戦っていえるのかしら。あれ。」



顔におそろいの紅いヒレの跡を残した三人娘が敵組織指揮官に直訴をかましていた。
もちろん主な直訴内容は、今回の模擬戦についてなのだが・・・



「ルールには抵触してないぞ?カワイイ動物に変身しちゃダメ、なんてルールないし。」

「まさか初音の力にあんな使い方があるなんて・・・。俺は位置把握だけだから楽できましたけど。」

「あのザ・チルドレンをこうも簡単に捕らえるなんて・・・ちょっとズルい気もするケド。
・・・・・・ねえ、皆本主任、これからもあたし達の指揮官、やってくれませんか?」


「「「だああ――――――――――めえええ―――――――――!!!」」」



それとはまた別に、一悶着あったとかなかったとか。








(了)









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