ザ・グレート・展開予測ショー

皆本二尉VS兵部少佐物語ver.1 皆本誘拐事件発生A


投稿者名:峰野恵理花
投稿日時:(05/11/12)

 皆本が牢屋の中で途方に暮れていたころ、B.A.B.E.L内では、昨日から皆本が自宅に帰っていないことがチルドレンからの連絡で判明していた。
「それは本当かね?葵くん。」
電話口で局長と応対をしていたのは、瞬間移動能力者―テレポーターの野上葵だった。
「こんな事でウソなんかつかれへんわ。まじめに皆本はん帰ってきてへんで?オフィスに電話もしたけどでえへんのや。局長さん、確かめといて!!・・・なんや、いやな予感がするわ。早くな!」
葵は珍しくすごく不安そうに早口で局長をまくしあげた。虫の知らせとでも言うのだろうか、葵にはすごくいやな感じがしていた。
(お願いやから無事でいてや、皆本はん。)
 
そんな葵の期待を裏切り、皆本のオフィスを確認した局長からかかった来た電話が伝えてきた内容は、皆本が施設内にいないという報告だった。
「葵くん、君の予感が当たってしまったヨ。皆本クンのオフィスには誰もいなかった。食堂やら何やらにも確認をとったが、皆本クンはいなかった。守衛にも問い合わせたが、皆本クンはここから出かけてはいないらしい。・・・、言いたくはないが、皆本クンのオフィスには何者かと争った形跡と、何かが引きずられた後があったヨ。・・・誘拐の可能性が高い。しかも超能力者によるものだ。」
息を切らせた局長の声。彼がウソはついていないことは分かっていた。
「ウソや。そんなのウソや。」
それでもウソだと思わずにはいられなかった。葵の手から受話器が滑り落ちた。
 受話器が床に落ちた音を聞きつけて薫と紫穂がこちらに駆け寄ってきた。
「どうしたの?葵ちゃん。今の局長さんからの電話だったんでしょう?・・・まさか皆本さんに何かあったの?教えて、葵ちゃん。」
紫穂が心配そうな顔をして尋ねた。薫も、葵のただならぬ様子を見て、神妙な顔つきになって、葵のことを見つめた。葵は、泣きそうな声で、紫穂の問いかけに答えた。
「皆本はん、施設内のどこにもいてないて。・・・オフィスに、乱闘の跡があって・・・誘拐じゃないかって、局長はんが言うてはった。・・・実はな、夜から何や胸騒ぎがしてたんや。でも、思い過ごしだと思て、気にしてなかったんよ。・・・そしたらこの騒ぎやろ、どないしたらええねん、うち。分からなくなってしもた。」
葵は、そこまで話すと、声を抑えて泣き出した。
 紫穂は、彼女に気にしなくてもいいのよ、と言うと、受話器を拾って、
「葵ちゃんから替わりました。今からそっちに向かいます。待っていてください。」
とだけ言った。そして、葵に
「葵ちゃんの出番じゃない。早く局長のところへ行きましょう。もしもさらわれたのなら、助けにいけるのは私たちだけでしょ?違う?」
と告げた。葵は、涙をぬぐうと、静かにうなずき、着替えを取りに部屋へ向かった。薫と紫穂も、急いで葵の後を追っていった。
 その頃、皆本は兵部と独房内で対峙していた。もっとも、対峙とは名ばかりで、兵部が彼を無理やり立たせているだけなのだが。
「ふふ、皆本くん。助けは当分来ないと思うよ。きっと、誰も君が家に帰っていないことなど気にも留めていないさ。くだらない望みは捨てたほうがいい。」
わずかな希望をも否定され、皆本は絶望に打ちのめされていた。
 しかし、兵部の発言とは裏腹にバベルではザ・チルドレンによる救出作戦が計画されていた。
「皆本はんがどこへ行ったのかが分からんと、どうしようもないわ。・・・紫穂、分からへん?」
皆本のオフィスでは、紫穂のサイコメトリーによる現場検証が行われていた。しかし、何かは分からないが障害があり、思うように読み取ることができない。
「うまく読めないわ。何かもやみたいなものがかかっているような感じ。・・・さらわれたのはどうにか分かるけど。ごめん、もうしばらく待って。」
紫穂がそう言ってから、2・3分が経った頃、いきなり紫穂が、
「やっと見えた!」
と叫んだ。葵がすかさず、
「どこ?どこやった?」
と紫穂をせっついた。紫穂は葵を御すると、落ち着いて話し始めた。
「絶海の孤島ね。場所は、多分北西沖500キロ位かしら。船とか、飛行機の航路からは外れているわ。うまい具合に見つかりにくい場所よ。多分、大きさは地図には載らないくらいの規模のはずよ。」
 紫穂が読んだ情報から、島の位置が特定された。
 薫は目だてなかった鬱憤を晴らすべく、張り切っていた。理由は違うが、紫穂と葵も同様だった。
 準備が整い、出発の時間がきた。
「くれぐれも気をつけるんだヨ。君たちは国の宝なんだから、必ず無事に帰ってくるんだからね!」
局長の暑いエールに見送られ、薫たちはテレポートで皆本が監禁されている島を目指し、出かけていった。

「皆本のいない任務なんて初めてだよなー。それで、まさかそれが皆本救出任務だなんてな。思いもしなかったぜ。」
道中薫がそんなことを口にした。葵と紫穂はうん、と生返事をしたっきり、着くまで何もしゃべらなかった。

 チルドレンが皆本救出に向かっていることなど微塵も知らない兵部は、皆本を追い詰め続けていた。
「くくっ・・・。君はいくらでも替えは効くんだ、だれも困りはしないさ。」
皆本が思っていることを読み取り、その中の希望を一つ一つ否定した。
 皆本を自分に屈させ、暗示をかけて、操り人形に仕立てるために。今回の誘拐の目的はそこにあった。
 皆本を無力感、絶望感とともに屈服させるのには、チルドレンの存在がネックになっていた。つまり、自分に対するマイナスイメージをチルドレンに印象付けずに皆本にそれを味あわせるには、誘拐し、密室で追い詰めるのが一番だったのである。
(くっ、僕はこいつに屈するしかないのか・・・っ!)
そう思い始めてきた皆本の耳に、聞きなれた声がよみがえる。
『ありがとうよ、皆本。』『ほんまにありがとう、皆本はん』『ありがとう。皆本さん』
それは、チルドレンたちのなんてことはない、日常的な感謝の言葉の数々だった。
(本当にあいつらは・・・。僕は諦めさせてもらうこともできないのか・・・。)
皆本は、それを期に兵部に反論した。
「兵部、確かに僕は替えの効く消耗品かもしれない。でもな、あいつらの僕に対する信頼は裏切ることができない。それに、僕もあいつらを信頼している。そして、その信頼が裏切られることは決してないんだ!」
皆本がそう言い切ると、兵部は今までは弱く拘束していただけだったサイコキネシスを一気に強め、語気を荒げた。
「何の根拠があってそんなことが言える!・・・信頼?そんなものがいったい何になるというんだ!いい加減僕に屈しろ!逆らっても、僕はお前の体を砕くだけだ!・・・もう一度だけ言う、僕に屈しろ!!」
皆本は、全身を襲う激痛に耐えながら、強い拘束に逆らい、全身の力を振り絞り答えた。
「答えはNoだ!あいつらは、必ずここに来る!」
兵部は、世にも恐ろしい形相でさらに力を強めた。
「か・・・はっ・・・!」
皆本は意識を失いかけたが、何とか持ちこたえていた。・・・ただ一つ、チルドレンが到着することを信じて。

 一方チルドレンは、島に上陸し、皆本救出に向けて一つ一つだが、確実に駒を進めていった。

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